想い

「ララ、マルコ」
『あ、サッチ』

そこへ二人分の食事を手に持ったサッチがやってきた。

ララとマルコの分を持って来たのだろう。

香ばしい香りが漂うエビピラフが皿に盛り付けられている。

「ほら、メシだ」
『ありがと』
「さっさと食えよぃ。遅くなっちまう」
『はーい』
「?
どっか行くのか?」
『夜のお散歩!』
「ほぉ…。
そりゃ、よかったな。楽しんでこいよ」
『うん!!』

ララは無邪気な子供のような笑顔でサッチの言葉に頷いた。

この船に乗船して間もないエースは初めて見る笑顔だった。

可憐で愛らしいその笑顔に彼は目が離せない。

熱い視線が彼女に寄せられる。

『?
エース?食べないの?』
「!
ぁ…ああ。食う」
『?』
「………」

ララに促され、ようやくエースは再び手を動かして食を進める。

自分のことにはとことん鈍い彼女が彼の視線の真意に気づくはずもない。

きょとん、と首を傾げてエースを見つめる。

ただ、人の感情に敏感なマルコだけは彼の感情の変化にすぐ気づいた。

黙っていれば綺麗で大人びた美貌をしてるララの無邪気な笑顔を見て、気を引かれるのはエースだけではない。

今まで何人も見てきた。

特段、驚いた表情は見せなかったが面倒なことになりそうだ、とマルコは小さくため息を漏らす。

「……(こいつらは見てて飽きねェな)

ララ」
『ん?』
「がんばれよ」
『へ?
なにが?』

サッチに唐突に励ましの言葉をかけられたララは瞬きをして、彼を擬視する。

だが、サッチは彼女の問いに答えずにその場から去った。

ララの頭をひと撫でしてから。

『??』
「ララ。
ぼーっとしてねェでさっさと食えよぃ」
『あ、うん…』

ララはようやくサッチお手製のピラフを口に運ぶ。

彼女とマルコが雑談を交わしながら笑顔を浮かべている様子をエースはチラチラ、と盗み見ていた。

それにララは気づく様子もない。

「なんでお前らの飯、俺と違うんだ?」
『え?
ああ…』
「サッチが毎回作ってんだよぃ。ララのために」
「なんで?」
「可愛い妹の食いもんだからな。作ってやりたいんだと。俺はそのおこぼれを貰ってるだけだよぃ」
「ふーん…」

自分の手元にある料理と明らかに違う二人の食事にエースは疑問を浮かべて尋ねた。

特別扱いされているララに対して、特に不満そうにする様子もない。

ただ単純に気になっただけなのだろう。

「食いたきゃ、ララと一緒にメシ食うんだな」
「そしたら同じもん食えんのか?」
「さぁな…。あいつ次第だよぃ」
「ちぇっ…」
『私がお願いしてあげるよ。サッチに』
「ほんとか!?」
『うん。一緒に食べるならね』
「約束な!」

エースはニカッと白い歯を見せて、太陽のような眩しい笑顔を浮かべた。

釣られてララも目を細めて笑う。


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