新たな家族

「お前、命拾いしてこんな事まだ続ける気かよぃ。そろそろ決断しろ」
「………」
「今のお前じゃ、オヤジの首は取れねェ。この船降りて出直すか、ここに残って…
〝白ひげ〟のマークを背負うか……!!」

バサリ、と海賊旗が風に靡いた音がした。

ララはエースの言葉を待つが、彼はその場で答えを出さなかった。

その数日後にエースは正式に家族へと加わることとなる。

手のかかる家族がまた一人、増えた。


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—————

「ララー!!」

エースが家族となって数日。

彼は本来の人柄なのだろう。

人懐っこい笑顔でララによく構ってくる。

一番年が近いせいもあるかもしれない。

『エース…?』
「なあ、釣りしようぜ!釣り!」

大量の洗濯物を丁寧に陽の光を浴びながら干しているララの元にエースが笑顔で駆けてきた。

だが、彼女は手を止める事はしない。

彼に背を向けて洗濯物を干し続ける。

『今忙しいの。一人でしてなよ』
「なんだよ、付き合い悪りぃな」
『副隊長なのに洗濯物干すのか?雑用の仕事だろ』

基本的に雑用はレティの仕事だ。

それが彼女のこの船での存在意義でもある。

だからだろうか。

誰もレティの仕事を手伝おうとしない。

マルコでさえも。

冷たく聞こえるかもしれないが、そうではない。

手伝えば彼女の仕事を奪うことになる。

手持ち無沙汰にさせないための気遣いでもあった。

それでもレティがいつも忙しそうにしているのをララは知っている。

副隊長業もあるので毎回ではないが、今日のように手が空いた日は仕事を奪わない程度に手伝うようにしている。

少しでも手助けになれば、と。

彼女らしい優しい気遣いだ。

「あれ…副隊長……とエースさん…?」

そこへレティが目を見開いて二人の元に姿を現した。

空の洗濯カゴを手に持って。

乾いた洗濯物を取りに来たのだろう。

「よぉ、レティ」
「あ、どうも…」
『レティ。こっちは大丈夫だから、他の仕事していいよ』
「え…でも洗濯物…」
『乾いたのは畳んで皆の部屋に届けてあるから。あとは干すだけで終わり』
「……ありがとう…ございます…」

乾いた洗濯物を綺麗に畳んで、皆の部屋に届けるのがレティの仕事だった。

1600人以上の洗濯物だ。

かなりの時間を要する。

だが、ララはそれをたった数時間でこなしてしまった。

レティは驚きを隠せない様子で彼女を擬視する。

改めて自分とララの実力差を見せつけられたような気がしてならない。

それもその筈。

マルコに仕事を与えて貰えるようになった数年前のあの日から、ララは雑務もこなしていた。

だからレティより仕事が早いのは当然なのだ。

数ヶ月前に乗船した彼女とは経験値が違う。


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