火拳のエース
『………』
マルコの部屋から逃げたララは食堂には行かず、甲板にいた。
生温い潮風が彼女の頬を撫で、火照った顔を冷ます。
今、食堂に行ってもララは何も口にすることはできないだろう。
ぐるぐる、と色んな考えが駆け巡って。
マルコが自分に口付けたしたのは気まぐれなんかではない。
それは理解している。
彼はそんな男ではない。
ではなぜ二人の関係が崩れる行為をしたのか。
ふと、彼女は昼間レティに言われた言葉を思い出した。
自分がマルコを好いているというその言葉を。
『…わかんないよ』
「なにがだ?」
『!
…イゾウ』
ボソリ、と小さな声で呟いた言葉。
夕飯時のこの時間に聞いてる者などいないと思っていたのだろう。
ララは身体を跳ね上げ、声のした方へと振り返る。
「しけた面してんなァ」
『………』
「飯は?」
『まだだけど…』
「一緒に食うかぃ?」
『……いい』
「そうか」
表情からしてララに何かあったのは一目瞭然だった。
だが、イゾウは彼女に問いただすことはしない。
何を思ったのか彼はララの側を一旦離れて、その足で酒蔵へと歩いて行った。
きょとん、と彼女は首を傾げてその背中を見送る。
『イゾウ…?』
「酒なら飲めるだろ?」
『え……うん』
酒蔵から戻ってきたイゾウは二つの酒瓶を手に戻ってきた。
純米酒とウイスキーを。
ドカッと彼はその場に胡座をかいて座り、ララもそれに倣う。
海賊に育てられた彼女は酒には滅法、強かった。
特にウイスキーは相性がいいのか、水のように呑む。
グラスはなく、イゾウは豪快に酒瓶に口をつけて喉を潤した。
『……グラスは?』
「…しょうがねェなァ」
ララにも恥じらいはあるらしい。
彼女はイゾウにグラスを求めた。
甘えたような眼差しで。
可愛い妹のそんな視線を向けられたら、断れるわけがない。
彼は立ち上がって、また酒蔵に足を運んだ。
「ほら、グラス」
『ありがと』
一分もしないうちにイゾウは戻ってきた。
グラスをララに手渡すとまた胡座をかいて座り、モビー•ディック号を照らす満月を見上げる。
満天の星空に満月。
いい月見日和だった。
「マルコと喧嘩でもしたか?」
『……してないよ。ただ…』
「?」
ララはグラスに酒を注ぎながら口篭った。
イゾウに話していいものかと。
自分でもまだ混乱しているというのに。
『………。
イゾウは…好きな人、いる?』
「は?なんだ急に」
イゾウはララの口から色恋話を問われるとは思っていなかったのだろう。
彼は大きく目を見開く。
だが彼女のその言葉で理解したよう。
マルコがララに対して何かしたのだろう、と。
でなければ、彼女がこんな話をするわけがない。
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マルコの部屋から逃げたララは食堂には行かず、甲板にいた。
生温い潮風が彼女の頬を撫で、火照った顔を冷ます。
今、食堂に行ってもララは何も口にすることはできないだろう。
ぐるぐる、と色んな考えが駆け巡って。
マルコが自分に口付けたしたのは気まぐれなんかではない。
それは理解している。
彼はそんな男ではない。
ではなぜ二人の関係が崩れる行為をしたのか。
ふと、彼女は昼間レティに言われた言葉を思い出した。
自分がマルコを好いているというその言葉を。
『…わかんないよ』
「なにがだ?」
『!
…イゾウ』
ボソリ、と小さな声で呟いた言葉。
夕飯時のこの時間に聞いてる者などいないと思っていたのだろう。
ララは身体を跳ね上げ、声のした方へと振り返る。
「しけた面してんなァ」
『………』
「飯は?」
『まだだけど…』
「一緒に食うかぃ?」
『……いい』
「そうか」
表情からしてララに何かあったのは一目瞭然だった。
だが、イゾウは彼女に問いただすことはしない。
何を思ったのか彼はララの側を一旦離れて、その足で酒蔵へと歩いて行った。
きょとん、と彼女は首を傾げてその背中を見送る。
『イゾウ…?』
「酒なら飲めるだろ?」
『え……うん』
酒蔵から戻ってきたイゾウは二つの酒瓶を手に戻ってきた。
純米酒とウイスキーを。
ドカッと彼はその場に胡座をかいて座り、ララもそれに倣う。
海賊に育てられた彼女は酒には滅法、強かった。
特にウイスキーは相性がいいのか、水のように呑む。
グラスはなく、イゾウは豪快に酒瓶に口をつけて喉を潤した。
『……グラスは?』
「…しょうがねェなァ」
ララにも恥じらいはあるらしい。
彼女はイゾウにグラスを求めた。
甘えたような眼差しで。
可愛い妹のそんな視線を向けられたら、断れるわけがない。
彼は立ち上がって、また酒蔵に足を運んだ。
「ほら、グラス」
『ありがと』
一分もしないうちにイゾウは戻ってきた。
グラスをララに手渡すとまた胡座をかいて座り、モビー•ディック号を照らす満月を見上げる。
満天の星空に満月。
いい月見日和だった。
「マルコと喧嘩でもしたか?」
『……してないよ。ただ…』
「?」
ララはグラスに酒を注ぎながら口篭った。
イゾウに話していいものかと。
自分でもまだ混乱しているというのに。
『………。
イゾウは…好きな人、いる?』
「は?なんだ急に」
イゾウはララの口から色恋話を問われるとは思っていなかったのだろう。
彼は大きく目を見開く。
だが彼女のその言葉で理解したよう。
マルコがララに対して何かしたのだろう、と。
でなければ、彼女がこんな話をするわけがない。
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