火拳のエース
「終いだよぃ。部屋行って寝ろ」
『まだ読みたい…』
「朝まで読む気かぃ。また明日な」
『むぅ……』
マルコは栞を挟んでパタン、とララの読んでいた本を閉じた。
おもちゃを取り上げられた子供のように彼女は頬を膨らませ、拗ねてしまう。
愛らしい姿ではあるが、年齢にあまり似つかわしくない。
「早く寝ろぃ」
『ここで寝ていい?』
「は?」
眠たい目を擦りながらララはマルコにそう言った。
その言葉の意味など理解している筈もない。
思わず彼は間抜けな声を漏らした。
「なに馬鹿なこと言ってんだよぃ…」
『だって面倒くさいだもん。部屋戻るの。
いいじゃん、前は一緒に寝てたでしょ?』
「いつの話してんだよぃ。ガキの頃だろ」
『だめ?』
「ダメだ。さっさと部屋行けよぃ」
『けち』
大抵の我儘は文句を言いつつもマルコは許すが、これだけは許すことは出来ない。
好意を寄せるララと一夜を同じ部屋で共に過ごして手を出さずにいられる程、彼は出来た人間ではなかった。
彼女を傷つけるやもしれない。
それだけはマルコは避けたかった。
どうララが足掻こうと、彼が縦に頷くことはない。
彼女はマルコの意思が固いとわかると、むくれながらも渋々と部屋を出ようととした。
「ララ」
『ん?』
だが、マルコの声がララを呼び止めた。
彼女は動きを止めて振り返る。
『わっ…!
な…なに…』
「俺と寝たきゃ女になる覚悟を決めて来るんだよぃ」
『女…?』
「……わらねェかぃ?」
『え…?』
振り返るとマルコはララの側まで寄っており、彼女の身体をドアの壁に押しつけた。
二人の距離は目と鼻の先。
こんな風に彼がララに至近距離で近づくことは初めてのことだった。
マルコは男らしく、妖艶などこか人を試すような視線を彼女に向ける。
言葉の意味がわかったのだろう。
ララは頬を赤らめ、視線を泳がせた。
いくら彼女が純粋であろうと、男ばかりの環境で育ったララはそれなりにそちらの知識はある。
経験のない彼女からしたら未知の世界のものではあるのだが。
『わ…わたし……
そんなつもり…』
「男と女が寝るってのはそういう意味なんだよぃ。
…わかったか?」
『ぅ、うん…。ごめんなさい』
ララは下を向いてマルコを見ようとしなかった。
耳まで真っ赤にしている姿は愛らしく、彼は笑みを溢す。
恥ずかしさでマルコを直視出来ないのだろう。
「まあ、お前が誘ってるつーなら俺は大歓迎だがねぃ」
『!
さそっ……!』
マルコのその一言にララはさらに顔を真っ赤にさせて、彼を見上げた。
言葉を詰まらせながら。
『〜〜〜!
わ…私、もう寝る!!』
「一緒に寝なくていいのかぃ?」
『い、いい!!一人で寝る!』
この空間の雰囲気に耐えられなくなったララは部屋から勢いよく出ていった。
顔を赤く染めたまま。
その姿をマルコは喉を鳴らせて笑いながら後ろ姿を見送る。
「俺も腹を決めるかねぃ…」
という言葉を残して。
マルコはここ数年、ずっと自分の気持ちを伝えようともしなかった。
年の差が彼にストップをかけていた。
だが、彼女の愛らしい反応を見てしまうと欲が出てしまう。
自分のものにしたい、という欲望が。
覚悟を決めて腹を括るしかない。
ララに苦労をかけてしまうかもしれないそれに。
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『まだ読みたい…』
「朝まで読む気かぃ。また明日な」
『むぅ……』
マルコは栞を挟んでパタン、とララの読んでいた本を閉じた。
おもちゃを取り上げられた子供のように彼女は頬を膨らませ、拗ねてしまう。
愛らしい姿ではあるが、年齢にあまり似つかわしくない。
「早く寝ろぃ」
『ここで寝ていい?』
「は?」
眠たい目を擦りながらララはマルコにそう言った。
その言葉の意味など理解している筈もない。
思わず彼は間抜けな声を漏らした。
「なに馬鹿なこと言ってんだよぃ…」
『だって面倒くさいだもん。部屋戻るの。
いいじゃん、前は一緒に寝てたでしょ?』
「いつの話してんだよぃ。ガキの頃だろ」
『だめ?』
「ダメだ。さっさと部屋行けよぃ」
『けち』
大抵の我儘は文句を言いつつもマルコは許すが、これだけは許すことは出来ない。
好意を寄せるララと一夜を同じ部屋で共に過ごして手を出さずにいられる程、彼は出来た人間ではなかった。
彼女を傷つけるやもしれない。
それだけはマルコは避けたかった。
どうララが足掻こうと、彼が縦に頷くことはない。
彼女はマルコの意思が固いとわかると、むくれながらも渋々と部屋を出ようととした。
「ララ」
『ん?』
だが、マルコの声がララを呼び止めた。
彼女は動きを止めて振り返る。
『わっ…!
な…なに…』
「俺と寝たきゃ女になる覚悟を決めて来るんだよぃ」
『女…?』
「……わらねェかぃ?」
『え…?』
振り返るとマルコはララの側まで寄っており、彼女の身体をドアの壁に押しつけた。
二人の距離は目と鼻の先。
こんな風に彼がララに至近距離で近づくことは初めてのことだった。
マルコは男らしく、妖艶などこか人を試すような視線を彼女に向ける。
言葉の意味がわかったのだろう。
ララは頬を赤らめ、視線を泳がせた。
いくら彼女が純粋であろうと、男ばかりの環境で育ったララはそれなりにそちらの知識はある。
経験のない彼女からしたら未知の世界のものではあるのだが。
『わ…わたし……
そんなつもり…』
「男と女が寝るってのはそういう意味なんだよぃ。
…わかったか?」
『ぅ、うん…。ごめんなさい』
ララは下を向いてマルコを見ようとしなかった。
耳まで真っ赤にしている姿は愛らしく、彼は笑みを溢す。
恥ずかしさでマルコを直視出来ないのだろう。
「まあ、お前が誘ってるつーなら俺は大歓迎だがねぃ」
『!
さそっ……!』
マルコのその一言にララはさらに顔を真っ赤にさせて、彼を見上げた。
言葉を詰まらせながら。
『〜〜〜!
わ…私、もう寝る!!』
「一緒に寝なくていいのかぃ?」
『い、いい!!一人で寝る!』
この空間の雰囲気に耐えられなくなったララは部屋から勢いよく出ていった。
顔を赤く染めたまま。
その姿をマルコは喉を鳴らせて笑いながら後ろ姿を見送る。
「俺も腹を決めるかねぃ…」
という言葉を残して。
マルコはここ数年、ずっと自分の気持ちを伝えようともしなかった。
年の差が彼にストップをかけていた。
だが、彼女の愛らしい反応を見てしまうと欲が出てしまう。
自分のものにしたい、という欲望が。
覚悟を決めて腹を括るしかない。
ララに苦労をかけてしまうかもしれないそれに。
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