火拳のエース
『もうそんな時間なんだ…。
じゃあ、全部終わらせたら行っていい?』
「好きにしろぃ」
『うん!好きにする!』
ララは嬉しそうにはにかんで笑った。
それにマルコは目を細め、優しげな表情をする。
彼女は意外にも愛読家だった。
手が空いた時にいつもマルコの部屋で静かに本を読む。
二人の間に会話はなく、一緒の空間にいるだけ。
ただそれだけだったが、マルコはその時間がとてつもなく好きだった。
穏やかに過ぎる二人だけの時間。
少なからず、ララもその時間を好きでいてくれているのだろう、と彼は踏んでいた。
でなければこんな風に嬉しそうな笑顔は浮かべない。
「……飯、食い行くかねぃ」
『うん!』
二人は部屋から出て、他愛ない話を交わしながら食堂へ向かう。
その姿は想いが通じ合った恋人同士にしか見えない。
周りからしたら早くくっつけばいい、というのが本音だろう。
「あ、マルコ隊長」
二人で楽しく会話をしていた所へ一人の少女が声をかけてきた。
齡、十五歳くらいだろうか。
黒髪のショートヘアーの活発そうな女の子だ。
あまり白ひげ海賊団にはいないタイプの素朴な子。
名をレティという。
数ヶ月前、とある島が海賊によって滅ぼされた。
彼女はその島の生き残りだった。
偶然そこに居合わせた白ひげ海賊団は成り行き上、レティを助けた。
決して乗船させる気は一切なく、安全な縄張りの島で降ろす為の緊急避難のつもりだった。
だが、それにララは意を唱える。
レティの境遇は彼女の過去を思い出させたのだろう。
白ひげにモビー・ディック号に置いてくれるよう、懇願した。
激愛するララの頼みだ。
白ひげが断るはずもない。
一番隊で面倒を見るという条件付きでレティはこの船に乗船した。
彼女はララに感謝してもしきれない恩がある。
「なんだよぃ」
「これからご飯ですか?」
「ああ」
「ご一緒しても…」
「悪いねぃ。こいつと仕事の話がある」
「あ…」
「行くよぃ、ララ」
『へ…?
ぁ、うん…』
ララをいない者としてマルコと会話をするレティ。
それはいつもの光景だった。
彼と仲がいいララを妬むような視線。
少なからずマルコに対して好意を抱いているのだろう。
彼女を迎え入れたのはララだが、実際レティを助け出したのは彼だった。
その恩がいつからか愛情に移り変わる。
だからだろう。
レティがララに妬むような視線を送るのは。
マルコは食事の誘いをやんわりと断り、その場を離れる。
ララを引き連れて。
彼女はその二人の背中を悲しげな表情で見送った。
『ねぇ、仕事の話ってなに?』
「馬鹿、嘘だよぃ。
あいつがいると色々面倒なんだ」
『?』
マルコは気づいていた。
レティの自分に対する気持ちに。
だからあまり期待を持たせぬよう、必要最低限の接点しか持たないようにしていた。
ララはそれを理解していないようだが。
.
じゃあ、全部終わらせたら行っていい?』
「好きにしろぃ」
『うん!好きにする!』
ララは嬉しそうにはにかんで笑った。
それにマルコは目を細め、優しげな表情をする。
彼女は意外にも愛読家だった。
手が空いた時にいつもマルコの部屋で静かに本を読む。
二人の間に会話はなく、一緒の空間にいるだけ。
ただそれだけだったが、マルコはその時間がとてつもなく好きだった。
穏やかに過ぎる二人だけの時間。
少なからず、ララもその時間を好きでいてくれているのだろう、と彼は踏んでいた。
でなければこんな風に嬉しそうな笑顔は浮かべない。
「……飯、食い行くかねぃ」
『うん!』
二人は部屋から出て、他愛ない話を交わしながら食堂へ向かう。
その姿は想いが通じ合った恋人同士にしか見えない。
周りからしたら早くくっつけばいい、というのが本音だろう。
「あ、マルコ隊長」
二人で楽しく会話をしていた所へ一人の少女が声をかけてきた。
齡、十五歳くらいだろうか。
黒髪のショートヘアーの活発そうな女の子だ。
あまり白ひげ海賊団にはいないタイプの素朴な子。
名をレティという。
数ヶ月前、とある島が海賊によって滅ぼされた。
彼女はその島の生き残りだった。
偶然そこに居合わせた白ひげ海賊団は成り行き上、レティを助けた。
決して乗船させる気は一切なく、安全な縄張りの島で降ろす為の緊急避難のつもりだった。
だが、それにララは意を唱える。
レティの境遇は彼女の過去を思い出させたのだろう。
白ひげにモビー・ディック号に置いてくれるよう、懇願した。
激愛するララの頼みだ。
白ひげが断るはずもない。
一番隊で面倒を見るという条件付きでレティはこの船に乗船した。
彼女はララに感謝してもしきれない恩がある。
「なんだよぃ」
「これからご飯ですか?」
「ああ」
「ご一緒しても…」
「悪いねぃ。こいつと仕事の話がある」
「あ…」
「行くよぃ、ララ」
『へ…?
ぁ、うん…』
ララをいない者としてマルコと会話をするレティ。
それはいつもの光景だった。
彼と仲がいいララを妬むような視線。
少なからずマルコに対して好意を抱いているのだろう。
彼女を迎え入れたのはララだが、実際レティを助け出したのは彼だった。
その恩がいつからか愛情に移り変わる。
だからだろう。
レティがララに妬むような視線を送るのは。
マルコは食事の誘いをやんわりと断り、その場を離れる。
ララを引き連れて。
彼女はその二人の背中を悲しげな表情で見送った。
『ねぇ、仕事の話ってなに?』
「馬鹿、嘘だよぃ。
あいつがいると色々面倒なんだ」
『?』
マルコは気づいていた。
レティの自分に対する気持ちに。
だからあまり期待を持たせぬよう、必要最低限の接点しか持たないようにしていた。
ララはそれを理解していないようだが。
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