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襲撃

「………」
「話してはくれねェかぃ?力になれるかもしれねェ」
「………」
「悪いようにはしねェよぃ」
「………。
この島のことはどこまで知ってる」
「なんも知らねェよぃ。たまたま立ち寄っただけだ」

シャルはこの目の前に立つ男にアーテリア島の内情を話していいものか悩んだ。

縁もゆかりもない人間を巻き込むわけにはいかない、と。

だが、もう一族はララ一人しか生きていない。

誰かに頼らなければならないということはシャルも理解している。

島の偵察に来たと男は言っていた。

偵察を任されるくらいなのだから、それなりに信頼できる人間なのだろう。

でなければあの白ひげが偵察に出すはずがない、とシャルは思い、男に語り出した。

「この島はアーテリア島というんだが、風神…風を司る神様に護られてきた」
「?
守られているようには見えねェがねぃ…」
「神子がおらんからな」
「神子?」
「数十年に一度、一族の中から風神によって神子が選定される。

——それがたった五歳の女の子だった」

そう。

ララは神子だった。

彼女はまだ知らない。

「!
五歳!?」
「ああ。族長と相談してゆっくり神子の使命を教えていくつもりだったが…」
「?
そんなに大事なのかぃ?その神子つーのは…
子供にやらせる事ァねェだろぃ」
「この島と一族を護るのが神子の使命だ。だがもう一族はララ一人しかいない。必要性は薄いな」
「政府はなぜこの島を狙う?なにかあるのかぃ?」
「これは推測に過ぎないが、報復だろうな…」
「報復?」
「以前からずっと政府や海軍から海賊撲滅の協力を要請されてきた。だが、我々はずっと拒んできた。

——戦いはあまり好まんのだ」
「その報復がこれかぃ?」
「それが奴等のやり方だ」
「……よく知ってるよぃ」

シャルと男はこの惨状を再び見渡した。

戦いを好まない一族には戦い慣れした彼等を相手にするにはかなり辛かっただろう。

それがシャルにはわかり、表情を歪める。

「そのララだっけかぃ?今どこに…」
『シャルーー!!』

男がシャルにララの居場所を問いただしたその時。

幼い女の子の大きな声がした。

ララだ。

「あの馬鹿…っ!!
(外へ出るなと言っただろうが…!)」
「誰だぃ?」
「ララだ」

集落の奥に森の入り口がある。

そこから人の気配と駆けてくる音が聞こえた。

すぐそこまでララは来ているようだ。

この集落の状態を彼女に見せるわけにはいかない。

シャルは森の入り口へ急いだ。

男もゆっくりとした足どりでその後に続く。

『シャ……え……
みん…な……?』

だが、遅かった。

血だらけになった一族の亡骸がララの瞳に一瞬、映る。

彼女の大きな瞳がさらに見開かれた。

「見るんじゃねェよぃ」

男は目に止まらぬ速さでララの元にしゃがみ込み、彼女の目を大きなその手で覆った。

この惨状を子供に見せるのはあまりに惨すぎる。

シャルは少し安心したような表情を見せてララの前に立ちはだかった。

大きな二つの影が彼女の前に立ちはだかり、ララからは集落の様子が見えなくなる。


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