覚醒
「さっさと朝飯、食ってこいよぃ」
『マルコは?』
「もう食ったよぃ」
『む…
待ってくれてもいいのに…』
「生憎、俺ァそんな暇じゃねェんだよぃ」
『けち』
「あ?」
『なんでもなーい!
着替えるから出てってよ!』
「よぃよぃ…」
ララはベッドからのそのそ、と起きながらもマルコの背中を強引に押して部屋から追い出した。
一応、彼女にも恥じらいはあるらしい。
彼を追い出したララはクローゼットから服を一枚、選んでそれに着替える。
動き易さ重視のTシャツとショートパンツに。
ララのいつものスタイルだ。
洗面所で顔を洗い、寝癖で乱れた髪を整えてから部屋を出る。
—————
—————
『あ!
パパ!!』
甲板に行くと白ひげがいつものように、シャルを膝に乗せてクルー達が働く姿を酒を呑みながら眺めていた。
その姿を瞳に移すとララの表情がぱぁああ、と華やぐ。
幼子のような笑顔で彼に駆け寄る。
白ひげにだけ見せる無邪気な笑顔だった。
「グララララ
やっと起きたなチビスケ」
『えへへ…』
チビスケ。
それが白ひげのララに対する愛称だった。
彼女はその愛称に嫌な顔することなく、嬉しそうにニコニコしている。
『あ…』
「ん?
どうしたァ?」
ふと、ララは太陽の光を浴びてキラキラ輝く海面を視線に映した。
昨日の声の主との出来事を思い出したのだろう。
『………。
ごめん、パパ。
ちょっと海、見に行って来ていい?』
「好きにしろ」
『マルコには内緒、だよ?』
「グララララ
そりゃ無理なこと言いやがる」
『む…
なんで?』
「目撃者が何人いると思ってやがるんだ」
『あ…』
甲板にはクルー達が何人もいる。
たとえ、白ひげが黙っていたとしても誰かがマルコに話すだろう。
その考えがララの頭にはなかったよう。
なんとも間抜けな子だ。
「グララララ
マルコが来ねェうちにさっさと行けェ!」
『!
うん!ありがとう、パパ!!』
白ひげはララにとことん甘かった。
クルー達には酒も奢らないというに彼女には服や装飾品を買い与える。
それはもう、大量に。
着飾ることに関心がないララは持て余してばかりなのだが。
だから彼女が海に一人で出ることを咎めたことは一度もない。
愛らしい愛娘にお願いされるとつい許してしまう父親の心情だろう。
いざとなれば頼もしい兄達やシャルが助ける、とわかっているからこそララの我儘を許してしまうのかもれないが。
彼女は白ひげの側を急ぎ足で離れ、船首から海面へと身軽に飛び降りた。
いつもならシャルがその後を追うのだが、今回シャルは船首でララの姿を神妙な面持ちで見下ろすだけだった。
まるでこれから何かが起こる、と予測しているように。
「………」
白ひげはシャルの異変にすぐ気づいた。
流石は1600人を束ねる海賊船の船長だ。
些細な変化に反応する。
白ひげは微動だにせず、ただじっとシャルの背中を見つめた。
険しい視線を送りながら。
.
『マルコは?』
「もう食ったよぃ」
『む…
待ってくれてもいいのに…』
「生憎、俺ァそんな暇じゃねェんだよぃ」
『けち』
「あ?」
『なんでもなーい!
着替えるから出てってよ!』
「よぃよぃ…」
ララはベッドからのそのそ、と起きながらもマルコの背中を強引に押して部屋から追い出した。
一応、彼女にも恥じらいはあるらしい。
彼を追い出したララはクローゼットから服を一枚、選んでそれに着替える。
動き易さ重視のTシャツとショートパンツに。
ララのいつものスタイルだ。
洗面所で顔を洗い、寝癖で乱れた髪を整えてから部屋を出る。
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『あ!
パパ!!』
甲板に行くと白ひげがいつものように、シャルを膝に乗せてクルー達が働く姿を酒を呑みながら眺めていた。
その姿を瞳に移すとララの表情がぱぁああ、と華やぐ。
幼子のような笑顔で彼に駆け寄る。
白ひげにだけ見せる無邪気な笑顔だった。
「グララララ
やっと起きたなチビスケ」
『えへへ…』
チビスケ。
それが白ひげのララに対する愛称だった。
彼女はその愛称に嫌な顔することなく、嬉しそうにニコニコしている。
『あ…』
「ん?
どうしたァ?」
ふと、ララは太陽の光を浴びてキラキラ輝く海面を視線に映した。
昨日の声の主との出来事を思い出したのだろう。
『………。
ごめん、パパ。
ちょっと海、見に行って来ていい?』
「好きにしろ」
『マルコには内緒、だよ?』
「グララララ
そりゃ無理なこと言いやがる」
『む…
なんで?』
「目撃者が何人いると思ってやがるんだ」
『あ…』
甲板にはクルー達が何人もいる。
たとえ、白ひげが黙っていたとしても誰かがマルコに話すだろう。
その考えがララの頭にはなかったよう。
なんとも間抜けな子だ。
「グララララ
マルコが来ねェうちにさっさと行けェ!」
『!
うん!ありがとう、パパ!!』
白ひげはララにとことん甘かった。
クルー達には酒も奢らないというに彼女には服や装飾品を買い与える。
それはもう、大量に。
着飾ることに関心がないララは持て余してばかりなのだが。
だから彼女が海に一人で出ることを咎めたことは一度もない。
愛らしい愛娘にお願いされるとつい許してしまう父親の心情だろう。
いざとなれば頼もしい兄達やシャルが助ける、とわかっているからこそララの我儘を許してしまうのかもれないが。
彼女は白ひげの側を急ぎ足で離れ、船首から海面へと身軽に飛び降りた。
いつもならシャルがその後を追うのだが、今回シャルは船首でララの姿を神妙な面持ちで見下ろすだけだった。
まるでこれから何かが起こる、と予測しているように。
「………」
白ひげはシャルの異変にすぐ気づいた。
流石は1600人を束ねる海賊船の船長だ。
些細な変化に反応する。
白ひげは微動だにせず、ただじっとシャルの背中を見つめた。
険しい視線を送りながら。
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