覚醒
『ふぅ…
こんなもんかな』
その日の夜中。
ララは一人、稽古場にいた。
昼寝をしたせいで眠れなくなったので剣の鍛錬を数時間していた。
普段は一人で稽古をすることなど滅多にないのだが、眠れない日はこうして汗を流して身体を疲れさせる。
それがララなりの快眠方法。
「なんだ、ララ。まだ起きてたのか」
『あれ…ビスタ』
殆どのクルー達が寝静まっている筈の中、ビスタが稽古場に入ってきた。
目を見開いてお互いに意外そうにしている。
「こんな時間に稽古か?珍しいな」
『なんか眠れなくて…
ビスタは?』
「俺ァ不寝番だ」
『そっか…。
ビスタ、ごめんね?今日稽古する約束したのに出来なくて…』
「ん?ああ…
たまにはいいさ。休養も必要だ」
ララは申し訳なさそうにしてビスタに謝罪するが、彼は気にした様子もない。
元々、ビスタの時間がある時にしていた稽古。
一応口約束はするが、当日になって守らない日もお互いに何度かある。
だから彼が稽古を出来なかったことに対して、腹を立てることはない。
そもそも彼女が稽古に来れなくなったわけをマルコから聞いている。
ララが謝る必要はどこにもない。
ビスタは彼女を安心させるようにわしゃわしゃ、と少し乱暴に大きなその手でララの頭を撫でた。
『わっ…
な…なに……』
「明日からまたしごいてやるから覚悟しとけ」
『はーい…』
明日からまた稽古の日々が待っている。
それに加えマルコの書類仕事をララは少し手伝わせて貰えることとなった。
もう何も出来ない子ではない。
彼女は彼女の仕事がある。
それが何よりララは嬉しかった。
白ひげやマルコの役に立ててような、そんな気がして。
『そろそろ寝よっかな。身体動かして疲れたし』
「そうか」
『ビスタは稽古場になんか用があったの?』
「いや…人の気配があったからな。念の為の確認だ」
『ふーん…。
頑張ってね、不寝番』
「ああ」
そこで二人は別れた。
ビスタは不寝番の為に甲板へ、ララは就寝する為に自室へと。
道中、マルコの部屋を通り過ぎようとした時。
彼の部屋のドアの隙間から淡いランプの光が漏れているのに彼女は気づいた。
昨夜同様、書類仕事でもしているのだろう。
『マルコ…?入っていい?』
昼間の件があったばかりなので、ララは部屋のドアをノックして、許可が降りるまで部屋の前で待った。
普段はそんなこと絶対しない。
ノックさえせずに入ってくることだってある。
それなのに今は主人を待つ忠犬のようにじっとしていた。
「ララ?
何で入ってこねェんだよぃ?」
『だって……』
「安心しろい。誰もいねェよ。
ほら」
いくら待てども部屋に入ってこないララに痺れを切らしたマルコは彼女を部屋の前まで迎え出た。
不安そうに部屋の奥を盗み見るララを安心させるように彼はドアを大きく開けて、部屋の全貌を彼女に見せる。
そこには誰もおらず、書類の山がデスクに積まれているだけの簡素な部屋だった。
いつもの見慣れた光景にララはほっと胸を撫で下ろす。
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こんなもんかな』
その日の夜中。
ララは一人、稽古場にいた。
昼寝をしたせいで眠れなくなったので剣の鍛錬を数時間していた。
普段は一人で稽古をすることなど滅多にないのだが、眠れない日はこうして汗を流して身体を疲れさせる。
それがララなりの快眠方法。
「なんだ、ララ。まだ起きてたのか」
『あれ…ビスタ』
殆どのクルー達が寝静まっている筈の中、ビスタが稽古場に入ってきた。
目を見開いてお互いに意外そうにしている。
「こんな時間に稽古か?珍しいな」
『なんか眠れなくて…
ビスタは?』
「俺ァ不寝番だ」
『そっか…。
ビスタ、ごめんね?今日稽古する約束したのに出来なくて…』
「ん?ああ…
たまにはいいさ。休養も必要だ」
ララは申し訳なさそうにしてビスタに謝罪するが、彼は気にした様子もない。
元々、ビスタの時間がある時にしていた稽古。
一応口約束はするが、当日になって守らない日もお互いに何度かある。
だから彼が稽古を出来なかったことに対して、腹を立てることはない。
そもそも彼女が稽古に来れなくなったわけをマルコから聞いている。
ララが謝る必要はどこにもない。
ビスタは彼女を安心させるようにわしゃわしゃ、と少し乱暴に大きなその手でララの頭を撫でた。
『わっ…
な…なに……』
「明日からまたしごいてやるから覚悟しとけ」
『はーい…』
明日からまた稽古の日々が待っている。
それに加えマルコの書類仕事をララは少し手伝わせて貰えることとなった。
もう何も出来ない子ではない。
彼女は彼女の仕事がある。
それが何よりララは嬉しかった。
白ひげやマルコの役に立ててような、そんな気がして。
『そろそろ寝よっかな。身体動かして疲れたし』
「そうか」
『ビスタは稽古場になんか用があったの?』
「いや…人の気配があったからな。念の為の確認だ」
『ふーん…。
頑張ってね、不寝番』
「ああ」
そこで二人は別れた。
ビスタは不寝番の為に甲板へ、ララは就寝する為に自室へと。
道中、マルコの部屋を通り過ぎようとした時。
彼の部屋のドアの隙間から淡いランプの光が漏れているのに彼女は気づいた。
昨夜同様、書類仕事でもしているのだろう。
『マルコ…?入っていい?』
昼間の件があったばかりなので、ララは部屋のドアをノックして、許可が降りるまで部屋の前で待った。
普段はそんなこと絶対しない。
ノックさえせずに入ってくることだってある。
それなのに今は主人を待つ忠犬のようにじっとしていた。
「ララ?
何で入ってこねェんだよぃ?」
『だって……』
「安心しろい。誰もいねェよ。
ほら」
いくら待てども部屋に入ってこないララに痺れを切らしたマルコは彼女を部屋の前まで迎え出た。
不安そうに部屋の奥を盗み見るララを安心させるように彼はドアを大きく開けて、部屋の全貌を彼女に見せる。
そこには誰もおらず、書類の山がデスクに積まれているだけの簡素な部屋だった。
いつもの見慣れた光景にララはほっと胸を撫で下ろす。
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