覚醒
『………』
マルコの部屋から逃げてきたララは甲板も通り過ぎ、海に出た。
海面にしゃがみ込み、気を落ち着かせる。
何かあるといつも彼女はこうして海に出ることが多い。
不思議と気持ちが落ちつくよう。
「……ララ、どうかしたのか?」
『あ、シャル…
ついて来てたんだ』
「当たり前だろう。どうやって戻る気だ」
『あはは…
ごめん』
ララが海に出たのを船首にいたシャルは見ていた。
毎度ながら後先考えないその単純思考に呆れながらシャルは彼女の後を追ってきた。
「で?」
『ん?』
「なにかあったんだろう?」
『………うん。でも平気』
「……そうか」
『ありがと、心配してくれて』
「ふん」
シャルは深く追求しなかった。
優しく微笑むララに照れ臭そうにそっぽを向くだけで。
普段一緒にいることは少ないが、元気のない彼女になんだかんだ心配なのだろう。
「……ヲ……ベ…」
『ぁ……また…』
「………」
『あなたは誰なの?私にどうして欲しいの?』
また微かに聞こえてくる声。
海の中に声の主がいると思ったのだろう。
ララは海中を覗き込みながらその声に問いかけた。
「…ワレヲ…ヨベ…」
『?
名前を呼んだらいいの?でもあなたの名前わからないよ…』
「………」
どうやら声の主の名前は自分で導きださねばいけないようだ。
だが、ララには検討もつかない。
眉を顰めてどうしたものか、と思案していた。
「ララ!!」
『あ……
マルコ……』
その時だ。
船首の方からマルコがいつものごとく、ララを呼び寄せる声がした。
さっきの一件があってか、少し気まずそうな表情をしている。
「……行くのか?」
『うん。お願い』
いつまでも海面にいるわけにはいかない。
ララは声の主の存在が気になりはしたが、神獣化したシャルの背中に乗ってマルコの元に舞い戻った。
いつもなら眉間に皺を寄せてご立腹なのだが、今回は少し複雑げな表情をしている。
『えっと…』
「……悪かったねぃ」
『え?』
「変なもん見せてよぃ…」
『邪魔してごめんなさい…』
「お前ェが邪魔なんて、誰も言ってねぇだろぃ?」
『でも…』
「誤解のねぇように言っとくが、あれは不可抗力だよぃ」
『?
ふか…?』
「俺から仕掛けたもんじゃねェってことだよぃ」
『………そう…なんだ…?』
「ああ。だからもう不貞腐れるなよぃ」
『別に不貞腐れてなんか…』
「じゃあなんで海に出てるんだよぃ?」
『そ…それは……』
マルコは決してナースの誘いに乗ったわけではなかった。
半端強引に言い寄られ、困惑していた所にララが部屋に来てしまったというだけ。
あの後すぐ彼女は追い返している。
「機嫌、直してくれるかぃ?」
『うん』
「そんなに嫌かよぃ?俺が他の女といるのは」
『……よくわかんない。でもモヤモヤする』
「ほぅ…
(多少は意識してるってことかねぃ)」
ララはマルコとナースの二人がいる現場を見た瞬間、強くショックを受けていた。
それが兄に対する独占欲からなのか、まだ自覚もしていない新たな未知の感情からなのかはわからない。
だが、少なくとも彼に対して他のクルー達とは違う特別な感情を持っていることは確かなようだ。
マルコはそれに少しほくそ笑む。
ようやく少し前進したのだな、と。
.
マルコの部屋から逃げてきたララは甲板も通り過ぎ、海に出た。
海面にしゃがみ込み、気を落ち着かせる。
何かあるといつも彼女はこうして海に出ることが多い。
不思議と気持ちが落ちつくよう。
「……ララ、どうかしたのか?」
『あ、シャル…
ついて来てたんだ』
「当たり前だろう。どうやって戻る気だ」
『あはは…
ごめん』
ララが海に出たのを船首にいたシャルは見ていた。
毎度ながら後先考えないその単純思考に呆れながらシャルは彼女の後を追ってきた。
「で?」
『ん?』
「なにかあったんだろう?」
『………うん。でも平気』
「……そうか」
『ありがと、心配してくれて』
「ふん」
シャルは深く追求しなかった。
優しく微笑むララに照れ臭そうにそっぽを向くだけで。
普段一緒にいることは少ないが、元気のない彼女になんだかんだ心配なのだろう。
「……ヲ……ベ…」
『ぁ……また…』
「………」
『あなたは誰なの?私にどうして欲しいの?』
また微かに聞こえてくる声。
海の中に声の主がいると思ったのだろう。
ララは海中を覗き込みながらその声に問いかけた。
「…ワレヲ…ヨベ…」
『?
名前を呼んだらいいの?でもあなたの名前わからないよ…』
「………」
どうやら声の主の名前は自分で導きださねばいけないようだ。
だが、ララには検討もつかない。
眉を顰めてどうしたものか、と思案していた。
「ララ!!」
『あ……
マルコ……』
その時だ。
船首の方からマルコがいつものごとく、ララを呼び寄せる声がした。
さっきの一件があってか、少し気まずそうな表情をしている。
「……行くのか?」
『うん。お願い』
いつまでも海面にいるわけにはいかない。
ララは声の主の存在が気になりはしたが、神獣化したシャルの背中に乗ってマルコの元に舞い戻った。
いつもなら眉間に皺を寄せてご立腹なのだが、今回は少し複雑げな表情をしている。
『えっと…』
「……悪かったねぃ」
『え?』
「変なもん見せてよぃ…」
『邪魔してごめんなさい…』
「お前ェが邪魔なんて、誰も言ってねぇだろぃ?」
『でも…』
「誤解のねぇように言っとくが、あれは不可抗力だよぃ」
『?
ふか…?』
「俺から仕掛けたもんじゃねェってことだよぃ」
『………そう…なんだ…?』
「ああ。だからもう不貞腐れるなよぃ」
『別に不貞腐れてなんか…』
「じゃあなんで海に出てるんだよぃ?」
『そ…それは……』
マルコは決してナースの誘いに乗ったわけではなかった。
半端強引に言い寄られ、困惑していた所にララが部屋に来てしまったというだけ。
あの後すぐ彼女は追い返している。
「機嫌、直してくれるかぃ?」
『うん』
「そんなに嫌かよぃ?俺が他の女といるのは」
『……よくわかんない。でもモヤモヤする』
「ほぅ…
(多少は意識してるってことかねぃ)」
ララはマルコとナースの二人がいる現場を見た瞬間、強くショックを受けていた。
それが兄に対する独占欲からなのか、まだ自覚もしていない新たな未知の感情からなのかはわからない。
だが、少なくとも彼に対して他のクルー達とは違う特別な感情を持っていることは確かなようだ。
マルコはそれに少しほくそ笑む。
ようやく少し前進したのだな、と。
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