覚醒
『弁解しなくていいの?』
「一人一人、違うって言い回れってかよぃ?
そこまで俺は暇じゃねェ」
『だってこのままじゃ居心地悪いよー…』
「しばらくすれば収まるだろうよぃ」
『しばらくって…?』
「さぁねぃ…?」
マルコは食事の手を止めずにララの話に耳を傾けた。
一方の彼女は手を止めてチラチラ、と視線を向けているクルー達を盗み見ている。
気になって仕方ないのだろう。
「さっさと食べろぃ。冷めちまうだろ」
『あ……うん』
「お前ェ、この後もうちょい寝ていいよぃ。
まだ眠いだろ」
『でもビスタと稽古…』
「今日くらい、いいだろぃ。ビスタには俺から言っとく」
『昼夜逆転するからいいよ。ビスタに今日もするって昨日、言っちゃったし…』
「……そうかぃ。だったら今日は早く寝るんだな」
『…ん、そうする』
ララは眠そうに目を擦りながらマルコの言葉に頷いた。
恐らく、このままだと必ずどこかで限界が来るだろう。
人間そう長いこと寝ずに活動なんて出来るはずがない。
彼は内心、そう思っていた。
だからあえて、マルコは彼女に文句を言ったりすることはしない。
「俺は仕事に戻るよぃ」
『ふあぁぁ…
私も稽古してく…』
「——っと…」
昼食を食べ終えた二人は大した食休みもせず、早々に食堂を出た。
あの居心地の悪い空間から抜け出したくて。
甲板でマルコは自室へ、ララはビスタのいる稽古場に向かおうと足を踏み出そうとした。
だが、それは叶わない。
睡魔に襲われた彼女の足元がふらつき、転びそうになる。
当然それはマルコによって、その身を受け止められた。
『あ…』
「平気かよぃ?」
『ごめん…』
「今日は稽古、やめとけよぃ。んな状態じゃ、ろくな稽古出来ねェだろ」
『…ん…』
「………一人で部屋行けるかぃ?」
『へい……き…』
空腹が満たされてさらに睡魔に襲われたのだろう。
今にも目が閉じそうな程とろん、とした目をしている。
「そうは見えねェよぃ」
そう言ってマルコはため息混じりにララの身体を横抱きにして、抱き上げた。
彼女の膝裏と背中に腕を回して。
所謂、お姫様抱っこというやつだ。
クルー達の揶揄う野次の声を他所に彼は甲板を後にする。
その場には白ひげもおり、二人の姿を嬉しそうに目を細めていた。
『ありがと…』
「悪かったねぃ。無理、させちまったみてェで…」
『いいの。嬉しいかったから。
マルコのお手伝い出来て…』
『そうかぃ』
ふにゃり、とマルコの腕の中で気の抜けた笑みをララは浮かべた。
彼は昨夜、彼女に簡単な仕事だけを任せるつもりだった。
だが、マルコの側でその仕事ぶりを幼い頃から見てきたララは軽く教えただけで全てを理解してしまう。
普段の彼女を見ていると忘れるが、彼はララが賢い子だというのをその時思い出した。
頭を使う書類仕事を苦手とする隊長格の男達より器用に仕事をこなしてくれた。
だからだろう。
つい、ララに仕事を任せてしまった。
朝方になるまでずっと。
腕の中で身を預けるララを見るとマルコはそれを後悔した。
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「一人一人、違うって言い回れってかよぃ?
そこまで俺は暇じゃねェ」
『だってこのままじゃ居心地悪いよー…』
「しばらくすれば収まるだろうよぃ」
『しばらくって…?』
「さぁねぃ…?」
マルコは食事の手を止めずにララの話に耳を傾けた。
一方の彼女は手を止めてチラチラ、と視線を向けているクルー達を盗み見ている。
気になって仕方ないのだろう。
「さっさと食べろぃ。冷めちまうだろ」
『あ……うん』
「お前ェ、この後もうちょい寝ていいよぃ。
まだ眠いだろ」
『でもビスタと稽古…』
「今日くらい、いいだろぃ。ビスタには俺から言っとく」
『昼夜逆転するからいいよ。ビスタに今日もするって昨日、言っちゃったし…』
「……そうかぃ。だったら今日は早く寝るんだな」
『…ん、そうする』
ララは眠そうに目を擦りながらマルコの言葉に頷いた。
恐らく、このままだと必ずどこかで限界が来るだろう。
人間そう長いこと寝ずに活動なんて出来るはずがない。
彼は内心、そう思っていた。
だからあえて、マルコは彼女に文句を言ったりすることはしない。
「俺は仕事に戻るよぃ」
『ふあぁぁ…
私も稽古してく…』
「——っと…」
昼食を食べ終えた二人は大した食休みもせず、早々に食堂を出た。
あの居心地の悪い空間から抜け出したくて。
甲板でマルコは自室へ、ララはビスタのいる稽古場に向かおうと足を踏み出そうとした。
だが、それは叶わない。
睡魔に襲われた彼女の足元がふらつき、転びそうになる。
当然それはマルコによって、その身を受け止められた。
『あ…』
「平気かよぃ?」
『ごめん…』
「今日は稽古、やめとけよぃ。んな状態じゃ、ろくな稽古出来ねェだろ」
『…ん…』
「………一人で部屋行けるかぃ?」
『へい……き…』
空腹が満たされてさらに睡魔に襲われたのだろう。
今にも目が閉じそうな程とろん、とした目をしている。
「そうは見えねェよぃ」
そう言ってマルコはため息混じりにララの身体を横抱きにして、抱き上げた。
彼女の膝裏と背中に腕を回して。
所謂、お姫様抱っこというやつだ。
クルー達の揶揄う野次の声を他所に彼は甲板を後にする。
その場には白ひげもおり、二人の姿を嬉しそうに目を細めていた。
『ありがと…』
「悪かったねぃ。無理、させちまったみてェで…」
『いいの。嬉しいかったから。
マルコのお手伝い出来て…』
『そうかぃ』
ふにゃり、とマルコの腕の中で気の抜けた笑みをララは浮かべた。
彼は昨夜、彼女に簡単な仕事だけを任せるつもりだった。
だが、マルコの側でその仕事ぶりを幼い頃から見てきたララは軽く教えただけで全てを理解してしまう。
普段の彼女を見ていると忘れるが、彼はララが賢い子だというのをその時思い出した。
頭を使う書類仕事を苦手とする隊長格の男達より器用に仕事をこなしてくれた。
だからだろう。
つい、ララに仕事を任せてしまった。
朝方になるまでずっと。
腕の中で身を預けるララを見るとマルコはそれを後悔した。
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