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覚醒

「……いいか、ララ。
この先お前ェがどんなにバケモンみてェに強くなろうと、俺らはララを守らなきゃいけねェ」
『……どうして?』
「妹だからだよぃ。妹を守るのは兄貴の役目だ」

マルコは腕の中に収めていたララの身体を離し、彼女の両肩を掴んで目線を合わせた。

そしてララに言い聞かせる。

まるで幼子に話すように優しく。

『………』
「可笑しな奴だねぃ。そんなに俺の仕事を手伝いたいか」
『だって……』
「………簡単な書類仕事からやってみるかぃ?
話はそっからだ」
『!
やる!!』

結局、折れたのはマルコだった。

彼の言葉にララの表情はぱああぁ、と華やぐ。

「参ったよぃ」
『?
マルコ?』

ララの無邪気なその表情にマルコは困ったような笑みを浮かべる。

彼女のその顔に彼はとことん、弱かった。

惚れた弱味、というやつだろう。 

「いや……さっさっと帰るよぃ」
『はーい!』

こうして数十分の島の滞在を少し名残惜しげに、二人は空へとまた飛び立った。

道中、マルコはララの他愛無い話に耳を傾けながらモビー・ディック号へ帰還する。

穏やかな潮風が二人の頬を撫でた。



その日の夜。

マルコとララは書類と格闘しながら彼の部屋で一夜を過ごした。

彼女がマルコの部屋を出たのは朝方のこと。

その瞬間をクルーに見られているとも知らずに。

勘違いするだろう。

それを見た彼は。

マルコとララが一夜を共にする間柄になった、と。

二人がその事に気づくのは仮眠をとって目を覚ました昼過ぎの話。


—————
—————

『ねぇ、マルコ』
「ん?」
『なんか皆んなこっち見てない…?』

翌日。

食堂でいつものように向かい合って食事をしていると、二人を遠巻きにニヤニヤと見ているクルー達にララは気づいた。

いくら鈍い彼女でもこれだけの視線を浴びせられれば、流石に気づくようだ。

とても食べづらそうに、身を縮こませている。

「ああ……。
まぁ、気にすんなよぃ」
『……なんか知ってるの?』
「……お前ェ、朝方俺の部屋出ただろぃ?」
『うん…?
眠かったから…』
「その瞬間を見た奴がいたみてェでよぃ、勘違いしたまま噂が広まっちまったらしい」
『噂?』
「俺とお前ェが付き合ってるって噂だよぃ」
『え……なんでそうなるの?ただ部屋から出たの見ただけで』
「時間が悪かったねぃ」
『?』
「朝方男の部屋から出るのなんてそういう関係になったって言ってるようなもんだよぃ」

ララはマルコの話にいまいちピンと来てないようで首を傾げている。

朝方、女が男の部屋から出てくるというのはそういう行為をしたということ。

裸の付き合いを。

そう勘違いされたのだろう。

まぁ、実際は違うのだが。

純粋な彼女がその意味を知るにはまだ数年はかかるだろうな、とマルコは笑みをこぼした。


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