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覚醒

「お前ェはもうちょい、色恋に興味持った方がいいよぃ」
『色恋…?恋愛ってこと?
興味ない』
「………」
『だって、よくわかんないだもん。皆んな大好きじゃ駄目なの?』
「……ガキだねぃ」
『む…』
(……こりゃ、大事に育て過ぎたかねぃ)

ララから男避けしてきた弊害がここで発生した。

彼女はあまりにも未知過ぎる。

マルコは困ったような笑みを浮かべた。

ここまで鈍いと将来悪い男に騙されやしないか心配になるが、そこは彼が側にいれば大丈夫だろう。

マルコより強い男などそうそういないのだから。

『マルコだってそういう人、いたとこ見たことないけど』
「俺はいいんだよぃ。女に飢えちゃいねェんだ」
『ふーん…?』

マルコはどちらかと言うとモテる方ではあるが、特定の女性と交際することはあまりない。

長年、一緒に過ごしてきたララでさえ彼が特定の人と一緒にいる姿を見たことがなかった。

マルコにとって一番は白ひげだ。

特定の女性を作ることでその存在がいずれ、足枷になる。

彼はそれを最も嫌った。

だが、ララの存在は少し違う。

醜い独占欲がマルコを支配し、我がものにしたい欲望が日を増すごとに強まる。

例えそれが足枷になる存在だとしても。

「そろそろ帰るかねぃ」
『えー…もう?』
「仕事がまだ溜まってんだよぃ」
『………。
………手伝ったら…だめ…?』

ララはマルコのシャツの裾をクイッと控えめに掴んで、か細い声で言った。

まるで捨てられた子犬のように。

彼はその愛らしい姿に目を細めた。

「助かるが、出来ねェだろぃ。お前ェは。
気持ちだけ受け取っておくよぃ」
『………。
………私が……何も出来ない子、だから?』
「は?」
『私はいらない?』
「何言って…」
『だってマルコ、私に何もさせてくれないじゃん!いらない子なんでしょ?』
「ララ…」
『私だってマルコの、パパの役に立ちたいよ…』

ララは少し声を荒げた。

エメラルドグリーンの綺麗な瞳が潤んで、今にも涙が溢れ出しそう。

彼女の中でいつまでも子供扱いするマルコに爆発したようだ。

自分もクルー達と同じように対等に、仕事を与えて欲しいと。

彼は小さな身体でマルコに訴えかけるララに目を見開き、ふわり、とその身体を優しく腕の中に収めた。

潮の香りが鼻腔を擽り、目の前に彼の分厚い胸板が映る。

白ひげの刺青が入ったその逞しい胸板が。

『…マ……ルコ…?』
「悪かったよぃ。
大事にしすぎてたみてェだな…」
『……私、マルコとパパに感謝してるの。身寄りのいない私とシャルを拾ってくれて、育ててくれて』
「別に感謝されたくて助けたんじゃねェよぃ」
『わかってる。それでも感謝しきれないよ。だから、役に立ちたいの。マルコとパパには…』
「………役には立ってるよぃ。お前ェの風詠みの力のおかげで野郎共が何回も助けられた」
『でもそれと同じくらい、マルコとビスタに私は守られたよ。
弱いから…』
「………」

確かにマルコとビスタと比べればまだまだ弱い。

だが、ララはまだ十代だ。

弱いのは当たり前だろう。

経験値が違う。


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