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覚醒

『ねぇ』
「ん?」
『さっき何の話してたの?
よくわかんなかったんだけど…』
「お前ェにはまだ早ェよぃ」
『なにそれ』
「いいから気にすんな」
『……なんか、ズルい』
「ズルいってなんだよぃ」
『だって…』

食堂の席に着いて食事を待っている間、ララは向かい側に座るマルコに尋ねた。

だが、彼はその疑問を濁す。

言ったとこで理解するかどうかは怪しいが。

ララは不満そうに不貞腐れる。

「お前ェはまだガキなんだよぃ」
『むぅ…』

マルコはララに自分の気持ちを伝える気はさらさらなかった。

彼女は彼によく懐いてはいるが、それは愛情ではない。

ただ兄貴として好いているだけだろう。

今伝えた所で困らせるだけだ、と。

他の男にやる気はさらさらないが、まだその時ではない。

いずれララが自分に好意を示すその時までは。

「おら、待たせたな。
サッチ様特製オムライスだ。味わって食えよ」

席に着いて数十分後。

二人の元に差し出されたデミグラスソースがかかったオムライス。

それはララが初めてこの船に乗船した時にサッチが彼女に与えたものだった。

ララにとってそれは思い出の料理。

目の前に差し出されると、彼女はみるみるうち表情が華やぐ。

どんなに身体は成長してもこの表情はあの頃から変わらない。

『わっ…!
オムライス!』
「ガキだねぃ」
『む…』
「くっくっく……
いい顔するなァ」
『ありがとう、サッチ!』
「たまには媚び売っとかねェとな」

そう言ってサッチはララの頭を撫でてからその場を去っていく。

基本的にクルー達の食事は大皿にてんこ盛りに盛られた数種類もの料理を各自、好きなだけ皿に盛りつけるというバイキング形式だ。

だが、ララの食事に関してはいつもサッチがわざわざ作っている。

可愛い可愛い妹の笑顔の為に。

いつもマルコを引き連れて食堂へ訪れるので彼はその恩恵にあやかっていた。

二人はサッチの作ったオムライスを味わいながら食事を笑顔で楽しんだ。

その間、二人に近寄る者は誰一人いない。

イゾウやビスタでさえも。

彼に気を遣っているのだろう。

ララにだけ向ける優しげな表情はマルコの気持ちを知るには充分すぎる情報だ。

知らないのは彼女本人だけ。

折角の二人の時間を邪魔しないでおこう、というクルー達の配慮だった。


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—————

『マルコ!』

食事を終え、甲板でララを待つマルコ。

日没した夜の海は真っ暗で月明かりがうっすら、と彼を照らしていた。

「準備できたかよぃ」
『うん!ばっちり!』
「じゃ、行くかねぃ」

約束通り、二人は夜の散歩に赴く。

ララはマルコのブカブカなシャツからスエット生地のパーカーとショートパンツのラフな格好に着替えてきた。

寝る直前のいつもの格好だった。

彼女はマルコの背中に容赦なく、飛び乗る。

背中に重みを感じると彼は不死鳥化し、空へと飛び立った。

満点の星空の上空。

青い再生の炎と彼女の銀髪がよく映えた。

ララは潮風を肌に感じ、気持ち良さげに目を細めている。


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