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覚醒

マルコの部屋のバスルームでシャワーを浴びたララは彼のクローゼットから身丈の合っていない、シャツを身に纏った。

小柄な彼女が身に着けるとワンピースのようで服に着られている感が強い。

マルコはまだ厨房から帰ってきていないかった。

クルー達と雑談でもしているのかもしれない。

デスクにはやりかけの書類仕事がたんまり、と残っている。

いつもの光景だ。

彼は書類仕事に常に追われている。

ララは誰もいないマルコの部屋を後にして甲板へと赴いた。


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甲板には日中と比べるとクルー達が少なく、夕飯前だからだろうか。

忙しなく働いている者も少ない。

日没前で綺麗な夕日がララの瞳に映った。

船首にはシャルが神獣化して目的もなく、海の彼方を見つめている。

『シャル』
「…ララか」
『パパは?』
「部屋だ」
『ふーん…。
私、ちょっと海行ってくるね!』
「こら、待て」
『ん?』
「どうやって戻る気だ」
『あ…』
「俺も行く」
『ありがと』

シャルは神獣化した姿から小さな黒猫の姿になって、ララの肩に飛び乗る。

彼女は肩に小さな重みを感じながら、船首から広大な海へと身を投げた。

本来ならばその身は海に沈むはず。

悪魔の実を食べている者ならば自殺行為にまでなる。

だが、ララの身が沈むことはない。

ふわり、と身につけたマルコのシャツが舞って海面に足をつけた。

首から下げた青く、丸い宝石のような輝きを持ったネックレスが淡く光っているように見える。

病で亡くなった母親が幼き彼女に持たせた物だ。

ララにとっては形見のようなもの。

「……ヲ……ベ……」
『?
やっぱり。なんか聞こえる…』
「………」

ララがこうして海面に立つことは初めてではない。

何度もある。

神子の力なのかはたまた、ネックレスの力なのかはわからない。

だが、いつも海面に立つとどこからともなく声が聞こえてくる。

微かな小さな声で。

その声の主が彼女は気になってしょうがなかった。

だから時折、時間が空いた時に海面に立ってその主を探す。

いつも心配したマルコに呼び戻されてしまうのだが。

「ララ!!」
『あ、マルコー!!』

噂をすればなんとやら。

船首から顔を覗かせてマルコが心配そうな表情で見下ろしている。

それに対してララは呑気に笑顔で彼に手を振った。

「戻って来いよぃ!」
『はーい!

——シャル』
「ああ」

素直にララはマルコの言葉に頷いた。

肩に乗っていたシャルは神獣化し、彼女はその背中に身を預けて船に降り立つ。

眉間に皺を寄せ、少し不機嫌そうな彼の元へと。

「無闇に海に出るなつっただろぃ」
『あだっ…!
いたい…』
「海に出られちゃ俺が助けれねェんだよぃ」
『平気だよ。シャルだっているし』

戻ってきたララにマルコは軽いゲンコツを彼女に食らわせる。

彼は常日頃から不用意に海へ出るな、と彼女に言い聞かせてきた。

ララの能力の詳細が不明な今、安易に海へ出ることにマルコは目くじらをたてていた。

何かあってからでは遅い、と。

能力者の彼には助けることもできない。

それを危惧していた。

海賊にとって最大の敵は海だ。

特にこのグランドラインでは。

彼女の能力が安全、という保証はない。


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