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覚醒

『じゃあ、私ビスタと稽古してくる!
マルコはお仕事あるんでしょ?』
「ああ。しっかり鍛えられてこいよぃ」
『はーい』

ララは十歳の頃から護身用にと五番隊隊長、ビスタから剣術を教わっている。

花剣のビスタと異名を持つ彼から。

飲み込みの早い彼女は全て吸収し、自分のものにした。

それはマルコやビスタが目を見張るほどに。

成長過程ではあるが、このままいけばきっと隊長クラスにまで強くなるだろう。

マルコはそれを確信していた。

強くなることは大変喜ばしいことだが、あまりララに危険なことをやらせたくない、というのが彼の心情だった。

敵襲を前にしても彼女は逃げ惑うことなく、自ら前線に繰り出す。

内心マルコは気が気じゃない。

出来ることならば戦いに参戦して欲しくない、というのが本音だ。

だが、言ったところでララは素直に従う子ではない。

ならば全力で守るしかないだろう。

それが彼の役目。

『じゃ、あとでね』
「ああ」

ララの部屋を出てマルコの部屋の扉の前で別れた二人。

彼女の足は甲板に向かっていた。

この時間であればいるであろう、ビスタの元へと。


—————
—————

甲板には賑やかにクルー達が騒いでいた。

見張り番の者、真っ昼間から呑んだくれている者、様々だ。

その中にビスタもいた。

いつもの指定席に白ひげがおり、その膝の上には黒猫の姿をしたシャルが身体を丸めて眠っている。

『ビスター!!』

黒いシルクハットを被り、黒いマントを身に着けた大柄な男。

ララは小柄な身体で怯むことなく、彼の身体に抱きついた。

「ララ。随分ご機嫌だな」
『えへへ…
マルコがね、夜のお散歩に連れてってくれるの!!』
「ほぉ…そりゃ、よかったな」
『うん!!
それより、ビスタ。また稽古つけて!』
「……今か?」
『だめ?』
「構わねェが、少しはこっちの都合も考えてくれると助かるんだかなァ。
俺もいつも暇じゃねェんだ」
『だっていつもビスタこの時間暇そうにしてるじゃん』
「……よく見てやがる」
『?
早く稽古場いこ?』

ビスタは昼食を食べ終えて食休みと称した小休憩を毎日、甲板でしている。

なにをするわけでもなく、のんびりとした時間を過ごして。

ララはそれを知っていた。

能天気そうに見えて彼女は賢く、よく周りを観察している。

自分のこととなると、途端に鈍くなるのがたまに傷だが。

ビスタはララに連れられて稽古場に赴いた。

そこはなにもない簡素な部屋。

ただ人が武力を鍛える場所だった。

必要なものはその身ひとつだけ。

「始めるか」
——風剣

二人は一定の距離を保ち、それぞれの武器を取り出す。

ビスタは二本のサーベル。

ララはステリア族の力、風詠みの力を凝固させて生み出した実体のない剣。

扱えるのは彼女一人だけ。


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