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覚醒

「飲めよぃ」
『……いや!』

ぷい、と子供のようにそっぽを向くララ。

彼女とマルコが出会ってから十年経つが、あまり仕草に変化がない。

コロコロと感情をそのまま表現する。

素直で愛らしいが、同世代の少女と比べると少し子供っぽい。

それがララらしいといえば、それまでなのだが。

「……強情だねぃ。そんなに嫌か、この薬が」
『だって美味しくないもん…』
「ガキ」
『ガキでいいもん』
「そんなに嫌なら飲まなくていいよぃ。薬は」
『え…ほんと!?』

マルコはララに薬は飲まないていい、と告げた。

不審がりもせず、彼女はぱあぁ、と明るい笑顔を浮かべる。

単純な子だ。

「ただし」
『?』
「今後一切、俺の部屋に入り浸るんじゃねェよぃ?」
『なっ…!なにそれ…!!
ズルい!!』

マルコはララに薬を飲まない為の条件を提示してきた。

それは彼女にとって死の宣告のようなものだった。

幼い頃からマルコの側で寄り添って生きてきたララは暇さえあれば、彼の部屋に入り浸っている。

なにをするわけでもなく、ただ雑談するだけのために。

マルコはそれを邪魔だとも迷惑だとも、思ったことは一度もない。

だが、こう言えば彼女は嫌でも薬を飲むだろう。

彼はそれを予測してわざとそう言ったのだ。

『〜〜〜!!
マルコの意地悪!!』
「なんとでも言えよぃ」
『………』

ゴクリ、と生唾を飲む音がララからした。

こんな風に覚悟を決めて薬を飲もうとする人間は珍しい。

彼女は目をぎゅっ、と瞑って粉末の薬を口に含み、それを水で流し込んだ。

これをさせるために、随分と時間がかかった。

マルコの苦労が報われる。

『…おぇっ…』
「くっくっく…
そんなに不味かったかぃ?頑張ったねぃ」
『…むぅ…
そんなに笑わなくても…」
「悪い悪い…」
『頑張って薬飲んだんだから、ご褒美ちょうだいよ』
「そういうのは自分から言うもんじゃねェよぃ」
『……だめ?』
「…何が欲しいんだよぃ?」
『夜のお散歩!!』

夜のお散歩。

それはララとマルコだけの特別な言葉だった。

不死鳥化した彼の背に乗って夜の空を飛び回る。

それが彼女にとって何よりも幸福を感じる瞬間だ。

キラキラした装飾品なんかを贈られるよりもずっと。

「そんなんでいいのかぃ?」
『夜のお散歩がいいの!!他のじゃやだ!!』
「わかったよぃ。飯食ったら連れてってやる」
『じゃ、早く食べよ!!』
「まだ早ェだろぃ。夕飯まで大人しくしてろ」

時刻はまだ昼過ぎ。

夜には早すぎる。

ララは少しむくれながらもマルコの言葉に素直に頷いた。


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