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導きの舞

「焦らなくていい。神子の自覚を少しずつ持ってくれれば、それで」
『うん…』



「話は終わったかぃ?」

タイミングを見計らったようにそこへマルコの声が聞こえてきた。

祠の入り口に立つ彼の姿。

ララとシャルはそちらに視線を向けた。

『おじちゃん…』
「一通り片付いたが、来れるかぃ?」
「ああ、今行く」

シャルは先に行くマルコの後に続いた。

ララも慌ててその後を小さな足で追いかける。

置いてかれぬよう、マルコの服の裾をぎゅっと掴んで。

ゆっくりとした足取りで二人と一匹は集落のある方角へと進む。

ララの表情は浮かないままで、どこか不安げだ。


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—————

集落にたどり着くと、数時間前は子供に見せられるような状態ではなかった悲惨な惨状が見る影もないくらい、綺麗さっぱりなくなっている。

木の棒で作られた大きな十字架が少し盛り上がった地面に突き刺さっていた。

一族の亡骸が、埋まっているのだろう。

『……っ…』

家屋は崩壊寸前だが、綺麗な花束が添えられたその弔いの墓にララは言葉を失っている。

一族が亡くなったことは理解していたが、こう目の前に突きつけられると辛いのだろう。

彼女はマルコの身体にしがみついて表情を歪めた。

「ララ。
…最後のお別れだ」
『……や…!』
「嬢ちゃん、行くんだよぃ。
生きていく者の礼儀だ」
『………』

マルコは自分の身体にしがみついたララを無理矢理に引き剥がし、彼女を墓の前に立たせた。

辛いだろうが、立ち向かわなければいけない。

とぼとぼ、とララは墓の前に立った。

視線はずっと下を向いたまま。

『………ぃ…
……ごめん…なさ…っ…』

小さな消えいるような声が聞こえたかと思うと、ララはその場にへたり込み、ボロボロと涙を流した。

誰も宥めることはせず、ただその小さな震える背中を眺めるだけ。

彼女を護るために命を落とした一族。

責任を感じているのだろう。

自分のせいだ、と。

幼いララにはあまりに辛い現実だった。

「……ララ…
導きの舞を…」
『……うん…』

導きの舞。

それは一族に伝わる亡き者がちゃんと正しき、道に歩めるように導く舞だった。

ステリア族が病気や事故で亡くなった際は一族の女性達が総出で導きの舞を踊って送り出す。

幼いララもぎこちない動きながら数回、参加したことがあった。

彼女はよろよろ、と立ち上がって崩壊寸前の民家にかけていく。

何かを取りに行ったように見える。

「導きの舞…?」
「見ればわかる」
「?」

マルコの問いにシャルは特に答えなかった。

ざわざわ、と風が木々を撫でる音を聞きながらララが戻って来るのを待つ。

彼女はすぐに民家から出てきた。

胸には身体の小さなララには少し大きな扇を抱えて。


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