【呪術廻戦】ごめんね、逃がしてあげられないよ?サンプル
ある日、十数年ぶりに再会した二人……。
この再会をキッカケに、二人の人生が大きく変わる。
“五条から逃げようと必死に踠く夢主”
“逃げようとする夢主を追いかける五条”
_____ 「ごめんね、逃がしてあげられないよ?」
◆注意事項◆
原作等を取り入れつつ、オリジナル要素が強めで、原作やアニメとは異なる展開の場面があります!夏油(離反なし)や灰原が生きている世界線となります。
解釈の相違、キャラ・イメージ崩壊の可能性あり。
(五条の一人称、心の声は“俺”になっています。敢えてなので間違えではありません)
この作品は裏描写(R18)が含まれています。
(18歳未満の方・裏が苦手な方は閲覧注意)
夢主の性格・口調荒っぽいです!作者の妄想が大爆発している超絶自己満足なStoryなので、誹謗中傷などはご遠慮ください。
合わないなーって思ったらそっと閉じて、記憶から抹消することをオススメします!
夢主→夢野ユメ(本編で名前変換可能です)
episode.10〖進展(?)〗から抜粋しました。
五条と夢主は同い年設定で、まだ付き合っていません!
五条side
「伊地知~、ユメのアパートまで」
「承知しました」
伊地知が車をゆっくり発進させる。
いや~、1日何でも言うこと聞いてくれるってさぁ、控えめに言っても最&高でしょ。たまんないよね~。
なんでもかぁ、何でもって何でもオッケーなの?あーんなことや、こーんなこともオッケーなの?
んーー、ヤバいね。
色々想像するだけで顔が緩む。もはや緩むを通り越して、スライムになってデロンデロンだよ。今にも溶けて無くなっちゃうんじゃない?俺の顔どうなってんの?大丈夫?原形留めてる?
「ねえ、伊地知ぃ」
「はい。なんでしょう?」
「僕の顔さー、どうなってる?」
ルームミラー越しにチラッと俺を見て、反応に困っている伊地知。
「……と、言いますと?」
「溶けたりしてないよね?」
「えっ!?ああ、はい。溶けてはいませんね」
「溶けて無くなりそうなんだよね~」
「……な、なるほど」
さらに反応に困ったような顔をして、ルームミラー越しにチラチラ俺を確認している伊地知。いや、そんなに困らせる質問したつもりないんだけどねー。
国宝級イケメンの顔面が溶けて無くなっちゃったらさ、日本中が大騒ぎになっちゃうよね?もはや、世界中が激震して大パニックに陥る……それほどまでに俺の顔面は整ってるんだよねえ。あ、これも“自他共に認める”ってやつ。
そーんな国宝級イケメンの顔面が崩壊した原因がユメともなれば、世界政府に狙われて……なーんてなりかねないでしょ?
あ、今……“そんなのあり得ないでしょ”って思った?ありえるっしょ、俺レベルになっちゃうとさ。
「僕の顔面が崩壊しちゃったら困るよね?」
「は、はあ……そうですね」
「だよねー?困っちゃったなぁー。ていうかさぁ、僕とユメって、とってもお似合いだと思わない?」
「え、あ、はい。まあ、そうですね……お似合いかと」
「だよね~?360度どっかどう見てもお似合いだよねー?なぁんでかなぁ、硝子がさ~『君には勿体無い』って言うんだよ?おかしいと思わない?おかしいよね~?」
どっからどう見ても美男美女カップルだし、色々と相性が良さそうなんだよね~。
あ、今……やらしいこと考えたでしょ?エッチだねえ、君達も。
んま、ソッチの相性も抜群にいいだろうけどね?へへっ。
「……ナルホド」
ボソッとぼやく伊地知。
「いや、なるほどじゃないよね」
「ひっ!!いやっ、す、すみません!!」
額から汗をダラダラ滴しながら運転している。
「みんなして僕のこと『クズ』って言うんだもーん。僕ってそんなにクズだと思うー?」
「……い、いえ……そ、そんなことは……ない……かと」
ねえ、何でそんなに歯切れが悪いのー?おかしくなーい?
「それ、何の間なのー?」
「すすすすっ、すみませんっ!!」
滝のように汗を流しながら、一切俺と目を合わせないように、ただただ前を向いて運転している伊地知。
「ま、いいや。何でもいいけど急いでくれるー?愛しのユメが僕のこと待ってるだろうから」
「…………は、はい」
だからさ、その“間”はなんなの?
────── ユメのアパートに到着。
ユメと恵は……うん、まだ来てないようだね。よかったぁ、間に合った間に合ったぁ~。
「伊地知はその辺に待機しといて~」
「承知しました」
こっそりアパートに侵入して、ユメ達が来るのを待った。
「相変わらずセキュリティもクソもないねー」
さて、ちょっと驚かしちゃおうかな?きっと可愛い反応するよね~。ククッ、楽しみだなぁ。
少しすると、ユメ達の気配が近付いて来る。
「お、帰って来たね」
ユメにバレなように気配を消した。
ま、恵は気付くだろうけどそれはそれでいい。俺に気付けばきっと帰るだろうし。
んで案の定、恵は帰ると言い始めて、ユメは駄々をこねながら恵を引き止めてようと必死になっている。
・・・・あまり恵にベタベタしないで欲しいんだけどなー。妬いちゃうよー?俺。
で、結局恵に逃げられたユメはブツブツ言いながら、玄関の鍵を閉めて大きなため息をついている。
そろそろかな?ちょっとだけ驚かしちゃうよ?
そーーっとユメの背後に立ってみた。
ユメが振り向いた瞬間、ものすんごい大声で叫びそうな勢いだったから、思わず手で口を塞いで壁に押し付ける 。
・・・・あ、やべ……やっちまったな。
まぁでも、俺だってすぐ気付くっしょ。こんなことするの俺くらいだろうし。むしろ、俺以外にこんなことする野郎がいたら……殺るしかないよね、ハハ。
すると、バッタバタしながら必死に抵抗して暴れ始めたユメ。
『んんーー!!んんんん!!』とか言いながら、めちゃくちゃパニクってて、俺から離れようとしている。
・・・・えーーっと、これは……もしかして、もしかしなくても……俺だってことに……気付いてない?
ヤバくない?ねえ、ヤバいよね?やっばいっ!!完全にやり過ぎた!?
ユメに声をかけると、顔を上げて俺を見ている。
しっかりと目と目が合った。
ピタッと抵抗しなくなって大人しくなった……と思ったら、身体がガタガタ震え始めて、大きな瞳からポロポロと涙が溢れ頬を伝う。
・・・・おいおいおいおーーい!!
誰だよ、ユメを泣かせて奴!!って、俺かぁぁ!!紛れもなく俺だよなぁぁ!!
完っ全にやり過ぎた、悪ノリし過ぎた。
ブン殴られるのを覚悟して、フワッと優しく抱き寄せて、ユメの頭を撫でてみた。
いつもならこんなこと絶対にできないし、確実にさせてもらえないだろうけど……相当怖かったのか、大人しくさせるがままになっているユメ。
────── え……?
俺の背中に手を回して、服をギュッと掴んできた。
ま じ か。
え?
俺、今……抱き締められてるよね?
これは、ムギュッとされていますよね?いいんですか?いいんですかね?こんなご褒美もらっちゃっていいんですか?泣かせちゃったのにいいんでしょうか?いや、なんか……ありがとう、最高です。とても最高です、申し訳ないけど“最&高”です。
・・・・落ち着いてきたのか、ゆっくりと俺から離れたユメ。
ぶっちゃけ離したくない、一生このままで居たい。もうこのままでいいじゃん、くっついてようよ。
なーんて思いつつ、もう一度ユメを抱き寄せる勇気が俺には無い……チキンかよ。
で、ユメが無言ですぐそこにある照明のスイッチをポチッと押して、パッと玄関の照明がついた。
ま、確かに薄暗かったもんな……余計怖かったかもしんないね。
「落ち着いた?本当にごめんね?」
そう言いながら、ユメの顔を覗き込もうとした時……バチーーンッ!!と、思いっきりビンタを食らった。
「い"っ……!!」
ジーン、ジーンと痛む頬を自ら撫でながら、もう一度ユメの顔を確認すると…………は?
「なにそれ、どうしたの?」
薄暗くて気付かなかった。ユメの頬が腫れて、口元が切れている。
「別に」
「誰にやられたの?」
「誰だっていいじゃん」
「よくないよね」
俺のユメを傷付ける奴は許さん。万死に値する、よって死刑。
「はぁぁ……知らない。その辺の男」
「は?なにそれ」
いや、なんだそれ。どうなったらその辺の知らない男に殴られるわけ?
「あーーもういいじゃん、なんでも。伏黒君が一発KOしてくれたし」
「今すぐ病院へ行くよ」
ユメの腕を掴んで引っ張ろうとすると、“どっから出してきたの?”レベルのハリセンで、バッチーーンッと頭を叩かれた。いや、マジでそれ、どっから出してきたの。
「ったく。こんくらいで病院に行く奴がいる?病院側も迷惑だっつーの。アホなの?アンタ。こんなの冷やしときゃ治る」
「本当に大丈夫?」
「うん」
「さっき押さえつけちゃった時、痛かったでしょ。ごめんね?本当にごめんなさい」
「大袈裟な……」
ちょっと気まずそうにしているユメが可愛い。なんたら可愛いの、君は。
「ねえ、本当に大丈夫?」
「あーーもう、しつこい!!……それより、さっきのは忘れて」
・・・・ん?『さっきの』とは?
なんのことですか?ユメとの思い出は何一つ忘れることなんて、俺にはできませんけどね。
「ん?さっき?」
「さっきの」
「さっきの?」
「……っ。だから、さっきの……あの……ギュッとしちゃったやつ……あれ、忘れて」
・・・・は?なに?可愛いんだけど。
なにそれ『ギュッとしちゃったやつ』って。可愛すぎだろオマエ。なんなの?可愛すぎるんだが?ねえ、ほんっと可愛い。なんつー可愛いのよ、可愛いが過ぎる。死ぬ。
もうさ、こんなにも可愛いと語彙力失われるよね。
「さっきは正常じゃなかったの。正常な判断ができなかったの。だから忘れてください、記憶から抹消してください。オネガイシマス」
「んーー無理。だって、脳と身体がしっかりと記憶しちゃってるもん。思い出すだけで全身がアツくなっちゃって困るよ~」
「あーー、ソウデスカ」
もうどうでも良さそうな顔をして俺を睨んでいるユメ。
そして、何やらガサガサと漁り始めた。きっと何かを探しているんだろうけど……もしかして、コンドームだったりする?なんなら俺持ってるけどね、コンドーム。
「どうしたの?何か探してんのー?」
「あーーいや、煙草どっかになかったかなぁって」
・・・・煙草かよ。
「ないのー?」
「うん。……やっぱ無いかぁ。ちょっとそこのコンビニに行ってくるわ。アナタはさっさとお帰りください、さようなら」
お帰りするわけにはいかないの。
「んーー?何も聞こえないなぁ。で?お金は?」
「あ?あーー。まあ、煙草くらいは普通に買える」
「全財産盗まれたんでしょ?」
「伏黒君から聞いたの?」
「うん」
全部恵から聞いてるよ。なんならお金が何処にあるかも知ってるけどねーん。
「まぁ、財布に多少なりあるし買って来る。アナタはお帰りくださいね、サヨウナラ」
「んーー?ハハッ、何も聞こえなぁい。んじゃ、僕と一緒にコンビニ行こ?僕が払うよ。何でも買ってあげる」
「結構です」
「んもぉ~、こんな時くらい甘えたら?」
ていうか、女ってこういうの喜ぶもんなんじゃないの?“わーい、ありがとう!太っ腹だね~!”ってさ?
ユメなんて露骨に嫌そうな顔してるよ?
ククッ。やっぱいいね、最高だよユメ。
「ふーーん。そうやって女を甘やかしてきたの?」
「は?」
・・・・あ……やべ。
『は?』とか素で口に出してしまった。
「あ、えーーっと……それはどういうことかな?」
「“なんでも買ってあげるよー。僕、お金持ってるよー”って、女を釣って甘やかしてたんじゃないの?って聞いたんです。理解できましたか?」
んなこと俺がするわけないよね。ユメ以外興味ないのにさ。
「そんなことしてませんけど」
「ハッ。どうだかねー」
お互い一歩も引かず、バチバチと火花が飛び散りそうな勢いなんですけど。ユメなんて凄く機嫌悪そうな顔してるし。
「興味ない女にお金を使うほど、おバカじゃないんですけどねー」
「おバカにしか見えませんけどねー」
「ユメ以外の女なんて心底どうでもよすぎて、お金なんて特に使ってないって……。だいたい、そんなことしなくても勝手に寄ってくるし、全く困ってなかったからー。別に穴さえあれば誰でも……って、あ……いや、違うよ!?えっと、だからぁ……」
・・・・ヤバいヤバいヤバいヤバい!!!!
完っ全にやらかした、ド派手に口が滑りやがった。何してんだよ俺!!馬鹿かよ、馬鹿じゃん!!
あーーもう最悪、最悪すぎる。
ゆっくーーりユメの顔をチラ見すると……うん、めちゃくちゃ真顔だった。真顔中の真顔だった。
_______ 沈黙が流れる。
“沈黙が怖い”……そう思ったことなんて、俺の人生でハジメテだった。これ以上恐ろしい沈黙なんて、この世に無いだろうな。
はぁぁ。なにしてんの俺……ド派手にやらかしすぎでしょ、アホか。
傑達にはさ?『ユメと接触した時、余計なことを言うなよー』って、念には念を入れといたのに、自分でゲロッてたら世話ないでしょ。アホくさくて泣けてくるわ。
なにより真顔で無言なユメに一番泣けてくるわ。これ以上にない恐怖に襲われてるけど泣いていいかな?
俺に“怖いもの”なんて無いと思ってたけど、ユメが絡むと話は別らしい……マジで怖い。
「…………あ、あのさ」
裏返そうな声で、勇気を振り絞って沈黙を破った。
すると、ムクッとユメが立ち上がる。
相変わらず真顔。やめて、その真顔はヤメて。
「……煙草、買って来ます」
「あ、なら僕もッ……」
「待っててください」
「いや、でもッ……」
「もう逃げたりしないので待っててください。いちいち付いて来なくて結構です」
「いや、そういうことじゃなくて……」
イライラしてんのか眉間にシワを寄せて、めちゃくちゃ冷たい目で見られている。
「あのさー、何回も言わせないでくれる?帰ってくれてもいいんだけど?てか帰れば?鬱陶しいのよ、マジで」
「はい、大人しく待ってます。気をつけてね?いってらっしゃい」
「チッ……ヤリチンが」
そう言い捨ててアパートを出ていった。
ユメが出ていった玄関をボケーーッと眺める俺。
「まずったよなぁ」
せっかく進展あったかも?的な感じだったのに、こりゃ振り出しに戻るかねぇ?ツラ。
ま、自分のせいなんだけどさぁ。
_______ いや、待てよ?
でも、これで怒るってさ?少なからず俺のことが気になってるからじゃないの?そうじゃない?ねえ、そうだよね?そう捉えてもいいのかな?
だってさ、どうでもいい奴が女遊びしてようが何してようが、なんとも思わなくない?微塵も思わなくない?
これって……期待しちゃってもいいかな?
ハハッ、何事もポジティブにいこうよ~!!
_______ んーー。けどなぁー。
さっきのヤリチン発言をした時のユメの目よ。
ゴミを見るような、心底軽蔑するものを見るような、そんな氷のような冷たい目付きだった。
派手にやらかしたよねー、ほんっと。
いずれかはバレたかもしんないけどさ、知られたくなかったんだけどなぁ。
サンプルはここまで!
なんとな~く五条と夢主の雰囲気が掴めましたかね……?
こんな感じです!笑
この再会をキッカケに、二人の人生が大きく変わる。
“五条から逃げようと必死に踠く夢主”
“逃げようとする夢主を追いかける五条”
_____ 「ごめんね、逃がしてあげられないよ?」
◆注意事項◆
原作等を取り入れつつ、オリジナル要素が強めで、原作やアニメとは異なる展開の場面があります!夏油(離反なし)や灰原が生きている世界線となります。
解釈の相違、キャラ・イメージ崩壊の可能性あり。
(五条の一人称、心の声は“俺”になっています。敢えてなので間違えではありません)
この作品は裏描写(R18)が含まれています。
(18歳未満の方・裏が苦手な方は閲覧注意)
夢主の性格・口調荒っぽいです!作者の妄想が大爆発している超絶自己満足なStoryなので、誹謗中傷などはご遠慮ください。
合わないなーって思ったらそっと閉じて、記憶から抹消することをオススメします!
夢主→夢野ユメ(本編で名前変換可能です)
episode.10〖進展(?)〗から抜粋しました。
五条と夢主は同い年設定で、まだ付き合っていません!
五条side
「伊地知~、ユメのアパートまで」
「承知しました」
伊地知が車をゆっくり発進させる。
いや~、1日何でも言うこと聞いてくれるってさぁ、控えめに言っても最&高でしょ。たまんないよね~。
なんでもかぁ、何でもって何でもオッケーなの?あーんなことや、こーんなこともオッケーなの?
んーー、ヤバいね。
色々想像するだけで顔が緩む。もはや緩むを通り越して、スライムになってデロンデロンだよ。今にも溶けて無くなっちゃうんじゃない?俺の顔どうなってんの?大丈夫?原形留めてる?
「ねえ、伊地知ぃ」
「はい。なんでしょう?」
「僕の顔さー、どうなってる?」
ルームミラー越しにチラッと俺を見て、反応に困っている伊地知。
「……と、言いますと?」
「溶けたりしてないよね?」
「えっ!?ああ、はい。溶けてはいませんね」
「溶けて無くなりそうなんだよね~」
「……な、なるほど」
さらに反応に困ったような顔をして、ルームミラー越しにチラチラ俺を確認している伊地知。いや、そんなに困らせる質問したつもりないんだけどねー。
国宝級イケメンの顔面が溶けて無くなっちゃったらさ、日本中が大騒ぎになっちゃうよね?もはや、世界中が激震して大パニックに陥る……それほどまでに俺の顔面は整ってるんだよねえ。あ、これも“自他共に認める”ってやつ。
そーんな国宝級イケメンの顔面が崩壊した原因がユメともなれば、世界政府に狙われて……なーんてなりかねないでしょ?
あ、今……“そんなのあり得ないでしょ”って思った?ありえるっしょ、俺レベルになっちゃうとさ。
「僕の顔面が崩壊しちゃったら困るよね?」
「は、はあ……そうですね」
「だよねー?困っちゃったなぁー。ていうかさぁ、僕とユメって、とってもお似合いだと思わない?」
「え、あ、はい。まあ、そうですね……お似合いかと」
「だよね~?360度どっかどう見てもお似合いだよねー?なぁんでかなぁ、硝子がさ~『君には勿体無い』って言うんだよ?おかしいと思わない?おかしいよね~?」
どっからどう見ても美男美女カップルだし、色々と相性が良さそうなんだよね~。
あ、今……やらしいこと考えたでしょ?エッチだねえ、君達も。
んま、ソッチの相性も抜群にいいだろうけどね?へへっ。
「……ナルホド」
ボソッとぼやく伊地知。
「いや、なるほどじゃないよね」
「ひっ!!いやっ、す、すみません!!」
額から汗をダラダラ滴しながら運転している。
「みんなして僕のこと『クズ』って言うんだもーん。僕ってそんなにクズだと思うー?」
「……い、いえ……そ、そんなことは……ない……かと」
ねえ、何でそんなに歯切れが悪いのー?おかしくなーい?
「それ、何の間なのー?」
「すすすすっ、すみませんっ!!」
滝のように汗を流しながら、一切俺と目を合わせないように、ただただ前を向いて運転している伊地知。
「ま、いいや。何でもいいけど急いでくれるー?愛しのユメが僕のこと待ってるだろうから」
「…………は、はい」
だからさ、その“間”はなんなの?
────── ユメのアパートに到着。
ユメと恵は……うん、まだ来てないようだね。よかったぁ、間に合った間に合ったぁ~。
「伊地知はその辺に待機しといて~」
「承知しました」
こっそりアパートに侵入して、ユメ達が来るのを待った。
「相変わらずセキュリティもクソもないねー」
さて、ちょっと驚かしちゃおうかな?きっと可愛い反応するよね~。ククッ、楽しみだなぁ。
少しすると、ユメ達の気配が近付いて来る。
「お、帰って来たね」
ユメにバレなように気配を消した。
ま、恵は気付くだろうけどそれはそれでいい。俺に気付けばきっと帰るだろうし。
んで案の定、恵は帰ると言い始めて、ユメは駄々をこねながら恵を引き止めてようと必死になっている。
・・・・あまり恵にベタベタしないで欲しいんだけどなー。妬いちゃうよー?俺。
で、結局恵に逃げられたユメはブツブツ言いながら、玄関の鍵を閉めて大きなため息をついている。
そろそろかな?ちょっとだけ驚かしちゃうよ?
そーーっとユメの背後に立ってみた。
ユメが振り向いた瞬間、ものすんごい大声で叫びそうな勢いだったから、思わず手で口を塞いで壁に押し付ける 。
・・・・あ、やべ……やっちまったな。
まぁでも、俺だってすぐ気付くっしょ。こんなことするの俺くらいだろうし。むしろ、俺以外にこんなことする野郎がいたら……殺るしかないよね、ハハ。
すると、バッタバタしながら必死に抵抗して暴れ始めたユメ。
『んんーー!!んんんん!!』とか言いながら、めちゃくちゃパニクってて、俺から離れようとしている。
・・・・えーーっと、これは……もしかして、もしかしなくても……俺だってことに……気付いてない?
ヤバくない?ねえ、ヤバいよね?やっばいっ!!完全にやり過ぎた!?
ユメに声をかけると、顔を上げて俺を見ている。
しっかりと目と目が合った。
ピタッと抵抗しなくなって大人しくなった……と思ったら、身体がガタガタ震え始めて、大きな瞳からポロポロと涙が溢れ頬を伝う。
・・・・おいおいおいおーーい!!
誰だよ、ユメを泣かせて奴!!って、俺かぁぁ!!紛れもなく俺だよなぁぁ!!
完っ全にやり過ぎた、悪ノリし過ぎた。
ブン殴られるのを覚悟して、フワッと優しく抱き寄せて、ユメの頭を撫でてみた。
いつもならこんなこと絶対にできないし、確実にさせてもらえないだろうけど……相当怖かったのか、大人しくさせるがままになっているユメ。
────── え……?
俺の背中に手を回して、服をギュッと掴んできた。
ま じ か。
え?
俺、今……抱き締められてるよね?
これは、ムギュッとされていますよね?いいんですか?いいんですかね?こんなご褒美もらっちゃっていいんですか?泣かせちゃったのにいいんでしょうか?いや、なんか……ありがとう、最高です。とても最高です、申し訳ないけど“最&高”です。
・・・・落ち着いてきたのか、ゆっくりと俺から離れたユメ。
ぶっちゃけ離したくない、一生このままで居たい。もうこのままでいいじゃん、くっついてようよ。
なーんて思いつつ、もう一度ユメを抱き寄せる勇気が俺には無い……チキンかよ。
で、ユメが無言ですぐそこにある照明のスイッチをポチッと押して、パッと玄関の照明がついた。
ま、確かに薄暗かったもんな……余計怖かったかもしんないね。
「落ち着いた?本当にごめんね?」
そう言いながら、ユメの顔を覗き込もうとした時……バチーーンッ!!と、思いっきりビンタを食らった。
「い"っ……!!」
ジーン、ジーンと痛む頬を自ら撫でながら、もう一度ユメの顔を確認すると…………は?
「なにそれ、どうしたの?」
薄暗くて気付かなかった。ユメの頬が腫れて、口元が切れている。
「別に」
「誰にやられたの?」
「誰だっていいじゃん」
「よくないよね」
俺のユメを傷付ける奴は許さん。万死に値する、よって死刑。
「はぁぁ……知らない。その辺の男」
「は?なにそれ」
いや、なんだそれ。どうなったらその辺の知らない男に殴られるわけ?
「あーーもういいじゃん、なんでも。伏黒君が一発KOしてくれたし」
「今すぐ病院へ行くよ」
ユメの腕を掴んで引っ張ろうとすると、“どっから出してきたの?”レベルのハリセンで、バッチーーンッと頭を叩かれた。いや、マジでそれ、どっから出してきたの。
「ったく。こんくらいで病院に行く奴がいる?病院側も迷惑だっつーの。アホなの?アンタ。こんなの冷やしときゃ治る」
「本当に大丈夫?」
「うん」
「さっき押さえつけちゃった時、痛かったでしょ。ごめんね?本当にごめんなさい」
「大袈裟な……」
ちょっと気まずそうにしているユメが可愛い。なんたら可愛いの、君は。
「ねえ、本当に大丈夫?」
「あーーもう、しつこい!!……それより、さっきのは忘れて」
・・・・ん?『さっきの』とは?
なんのことですか?ユメとの思い出は何一つ忘れることなんて、俺にはできませんけどね。
「ん?さっき?」
「さっきの」
「さっきの?」
「……っ。だから、さっきの……あの……ギュッとしちゃったやつ……あれ、忘れて」
・・・・は?なに?可愛いんだけど。
なにそれ『ギュッとしちゃったやつ』って。可愛すぎだろオマエ。なんなの?可愛すぎるんだが?ねえ、ほんっと可愛い。なんつー可愛いのよ、可愛いが過ぎる。死ぬ。
もうさ、こんなにも可愛いと語彙力失われるよね。
「さっきは正常じゃなかったの。正常な判断ができなかったの。だから忘れてください、記憶から抹消してください。オネガイシマス」
「んーー無理。だって、脳と身体がしっかりと記憶しちゃってるもん。思い出すだけで全身がアツくなっちゃって困るよ~」
「あーー、ソウデスカ」
もうどうでも良さそうな顔をして俺を睨んでいるユメ。
そして、何やらガサガサと漁り始めた。きっと何かを探しているんだろうけど……もしかして、コンドームだったりする?なんなら俺持ってるけどね、コンドーム。
「どうしたの?何か探してんのー?」
「あーーいや、煙草どっかになかったかなぁって」
・・・・煙草かよ。
「ないのー?」
「うん。……やっぱ無いかぁ。ちょっとそこのコンビニに行ってくるわ。アナタはさっさとお帰りください、さようなら」
お帰りするわけにはいかないの。
「んーー?何も聞こえないなぁ。で?お金は?」
「あ?あーー。まあ、煙草くらいは普通に買える」
「全財産盗まれたんでしょ?」
「伏黒君から聞いたの?」
「うん」
全部恵から聞いてるよ。なんならお金が何処にあるかも知ってるけどねーん。
「まぁ、財布に多少なりあるし買って来る。アナタはお帰りくださいね、サヨウナラ」
「んーー?ハハッ、何も聞こえなぁい。んじゃ、僕と一緒にコンビニ行こ?僕が払うよ。何でも買ってあげる」
「結構です」
「んもぉ~、こんな時くらい甘えたら?」
ていうか、女ってこういうの喜ぶもんなんじゃないの?“わーい、ありがとう!太っ腹だね~!”ってさ?
ユメなんて露骨に嫌そうな顔してるよ?
ククッ。やっぱいいね、最高だよユメ。
「ふーーん。そうやって女を甘やかしてきたの?」
「は?」
・・・・あ……やべ。
『は?』とか素で口に出してしまった。
「あ、えーーっと……それはどういうことかな?」
「“なんでも買ってあげるよー。僕、お金持ってるよー”って、女を釣って甘やかしてたんじゃないの?って聞いたんです。理解できましたか?」
んなこと俺がするわけないよね。ユメ以外興味ないのにさ。
「そんなことしてませんけど」
「ハッ。どうだかねー」
お互い一歩も引かず、バチバチと火花が飛び散りそうな勢いなんですけど。ユメなんて凄く機嫌悪そうな顔してるし。
「興味ない女にお金を使うほど、おバカじゃないんですけどねー」
「おバカにしか見えませんけどねー」
「ユメ以外の女なんて心底どうでもよすぎて、お金なんて特に使ってないって……。だいたい、そんなことしなくても勝手に寄ってくるし、全く困ってなかったからー。別に穴さえあれば誰でも……って、あ……いや、違うよ!?えっと、だからぁ……」
・・・・ヤバいヤバいヤバいヤバい!!!!
完っ全にやらかした、ド派手に口が滑りやがった。何してんだよ俺!!馬鹿かよ、馬鹿じゃん!!
あーーもう最悪、最悪すぎる。
ゆっくーーりユメの顔をチラ見すると……うん、めちゃくちゃ真顔だった。真顔中の真顔だった。
_______ 沈黙が流れる。
“沈黙が怖い”……そう思ったことなんて、俺の人生でハジメテだった。これ以上恐ろしい沈黙なんて、この世に無いだろうな。
はぁぁ。なにしてんの俺……ド派手にやらかしすぎでしょ、アホか。
傑達にはさ?『ユメと接触した時、余計なことを言うなよー』って、念には念を入れといたのに、自分でゲロッてたら世話ないでしょ。アホくさくて泣けてくるわ。
なにより真顔で無言なユメに一番泣けてくるわ。これ以上にない恐怖に襲われてるけど泣いていいかな?
俺に“怖いもの”なんて無いと思ってたけど、ユメが絡むと話は別らしい……マジで怖い。
「…………あ、あのさ」
裏返そうな声で、勇気を振り絞って沈黙を破った。
すると、ムクッとユメが立ち上がる。
相変わらず真顔。やめて、その真顔はヤメて。
「……煙草、買って来ます」
「あ、なら僕もッ……」
「待っててください」
「いや、でもッ……」
「もう逃げたりしないので待っててください。いちいち付いて来なくて結構です」
「いや、そういうことじゃなくて……」
イライラしてんのか眉間にシワを寄せて、めちゃくちゃ冷たい目で見られている。
「あのさー、何回も言わせないでくれる?帰ってくれてもいいんだけど?てか帰れば?鬱陶しいのよ、マジで」
「はい、大人しく待ってます。気をつけてね?いってらっしゃい」
「チッ……ヤリチンが」
そう言い捨ててアパートを出ていった。
ユメが出ていった玄関をボケーーッと眺める俺。
「まずったよなぁ」
せっかく進展あったかも?的な感じだったのに、こりゃ振り出しに戻るかねぇ?ツラ。
ま、自分のせいなんだけどさぁ。
_______ いや、待てよ?
でも、これで怒るってさ?少なからず俺のことが気になってるからじゃないの?そうじゃない?ねえ、そうだよね?そう捉えてもいいのかな?
だってさ、どうでもいい奴が女遊びしてようが何してようが、なんとも思わなくない?微塵も思わなくない?
これって……期待しちゃってもいいかな?
ハハッ、何事もポジティブにいこうよ~!!
_______ んーー。けどなぁー。
さっきのヤリチン発言をした時のユメの目よ。
ゴミを見るような、心底軽蔑するものを見るような、そんな氷のような冷たい目付きだった。
派手にやらかしたよねー、ほんっと。
いずれかはバレたかもしんないけどさ、知られたくなかったんだけどなぁ。
サンプルはここまで!
なんとな~く五条と夢主の雰囲気が掴めましたかね……?
こんな感じです!笑