第二十六話『編め、必殺技!』
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「A組とB組は別会場で申し込みしてあるぞ。」
下に降りると、どうやら先生方が資格試験についての説明をしていた。
毎年6月と9月に全国三ヶ所で一律に行われるヒーロー資格試験。
同校生徒での潰し合いを避ける為、どの学校も時期や場所を分けて受験させるのが鉄則となっているらしい。
成程、確かに只でさえ少ない合格枠をつまらない私怨で潰されては敵わんからな……。
先程は啖呵を切っていた物間殿から、ホッという音が出る。
どうやら内心穏やかな気持ちでは無かったらしい。
「直接手を下せないのが残念だ!!」
高笑いしている彼を切島殿や上鳴殿は何かの病気では…?と不審がっていた。
「”どの学校でも”…………、そうだよな。
フツーにスルーしてたけど、他校と合格を奪い合うんだ。」
雄英に受験した時の事を思い出す。
あの時もとてつもない人数が受験していた。
受験時と違うのは、敵の襲撃により少しスケジュールが詰まってしまったのと通常の修得過程よりも前倒しされ、1年の時点で仮免を取りに行くという状況。
「君たちより訓練期間の長い者。
未知の”個性”を持ち洗練してきた者が、集うワケだ。」
時間というのは唯一平等である。
自分達よりも1年、2年、或いはもっと経験を積んで来た者と狭き門を目指し戦う事になる。
「試験内容は不明だが、明確な逆境であることは間違いない。
意識しすぎるのも良くないが、忘れないようにな。」
その日の夜、俺は庭で蹴りの動きを確認している出久を発見する。
少し動き足りなかったので、声を掛けて組手の相手をしつつ考察を繰り返す出久にアドバイスもした。
日に日に動きを物にして行くその成長速度には、矢張り驚かされるばかりだ。
「出久は本当に努力家だな。」
「そ、そそそそ、そんな事!!大和君のほうが!!
その!本当に、凄いし!!」
顔を真っ赤にして謙遜する姿に、何だか笑いが込み上げてくる。
微笑ましいというか何と言うか。
その後取り敢えず風呂も一緒に入り、湯船に浸かりながらああでも無いこうでも無いとしていたら、すっかり長風呂になってしまった。
まぁ、たまにはそんな日もいいだろう。
お互いに合格を奪い合うと言うが、親睦を深める事自体に悪い事は無いからな。
そうして、訓練の月日が流れヒーロー仮免許取得試験当日となる。
「降りろ、到着だ。
試験会場 国立多古場競技場。」
緊張する面々、峰田殿が不安な言葉を漏らしていると相澤先生から「取れるかじゃない、取って来い」と緩い喝を入れられる。
それに勿論!と答える峰田殿だったが、本心は一体どうなのやら……。
「この試験に合格し仮免許を取得出来れば、
お前ら志望者は晴れてヒヨッ子…セミプロへと孵化できる。
頑張ってこい。」
相澤先生は俺達にそう伝え、切島殿が盛り上げ役として円陣を取り仕切る。
俺も微笑ましさに目元を緩めてその円陣に加わろうとしたが、す、っと横に見慣れぬ軍帽を被った男子が混ざってきた。
「せーのっ、”Plus ultra!!”」
余りの声量に俺は目を丸くする。
焦凍はそれとは別の意味で、その混ざって来た男子
を見つめていた。
「勝手に他所様の円陣に加わるのは良くないよ、イナサ。」
「ああ、しまった!!
どうも大変、失礼致しましたァ!!!」
同じ制服を着た男子に声を掛けられた途端、勢い良く……本当に頭を地面に叩き付ける程勢い良く、盛大に謝ってくるイナサと呼ばれた男子。
余りの迫力に1-Aの大半は慄いていた。
それを見ていた周りの人達が口々に零して行く言葉。
『西の有名な』
勝己は知っていた様で、つまらなさそうな顔で呟く。
「東の雄英、西の士傑。
数あるヒーロー科の中でも、
雄英に匹敵する程の難関校ーー……
士傑高校。」
俺は正直詳しくなかったのだが、矢張りヒーロー科の高校で有名所は雄英だけでは無い。
西、という事はわざわざ此処まで遥々遠征に来たのだろう。
ガバッと体を起き上がらせたイナサと呼ばれた男子は雄英への熱く語っている。
「雄英の皆さんと競えるなんて、光栄の極みっス!
よろしくお願いします!!」
そして打ち付けた額から、これまた勢い良く垂れる血に俺は思わず、その男子の頬を両手で挟んでぐい!と此方へ向かせた。
「おい、試験前に負傷する者が何処にいる。」
そう言いながら水で傷を洗い、ティッシュで血を拭きつつもアルコール消毒し、大きめのガーゼを当てて行く。
幸いにもそこまで深く切ってなかったので直ぐ出血も治まったが、傷口が頭であるから油断は出来ない。
「遠路遥々受けに来たのだろう?
もう少し慎重に動かないと努力が水の泡だ。
……視界が霞んだり、気分が優れない等はあるか?」
「…………。」
「保健委員魂に火を付けちゃったね…。」
葉隠殿のあらぁ〜という言葉を背にしながらも、急な事で固まる負傷した彼は、目を見開いて俺を凝視している。
俺は中学の剣道部時代を思い出し、坊主頭を少し撫でてしまった。
後輩が可愛くて、彼等が怪我した時はついこうしてしまっていたなと懐かしい気持ちになる。
このショリショリとした手触り、後輩達もこんな感じだったな…。
「……可憐だ……。」
「…む?」
「俺、貴方のこと大好きっス!!!西椋 大和さんっスよね!!?」
ガシッ!と突然両手を、大きな手に包まれて戸惑う。
雄英側のほうで爆発音やら冷気やら、叫び声やらが感じ取れたのだが俺は目の前の事態にどうしていいのか分からない。
「あ、ああ。そうだな…、俺は西椋 大和だ。」
「俺、夜嵐 イナサっス!!!」
「夜嵐殿……。」
「是非イナサって呼んで欲しいっス!!!」
余りの勢いに後ろに下がりそうになるが、包んでいた手の片方が俺の腰に行き、逃がさないとばかりに力強く引き寄せられる。
流石に応急手当も済んでいるので離して欲しい…という表情になってしまい、同じ軍帽を被った毛羽毛現のようなもふもふした人がイナサ殿を引き剥がしてくれた。
その途端、右肩を勝己に左肩を焦凍に掴まれて一気に1-Aの下へ戻って来れた。
障子殿の後ろに隠されて、視界は一気に雄英一色に染まる。
正直ホッとしてしまった。
「手当をしただけなのに、何故……???」
「無自覚だからなぁ、西椋は…。」
近くにいた尾白殿の言葉に、常闇殿と障子殿が深く頷いていた。
何だか解せない気持ちになってはいたが、俺が絡まれている間にイナサ殿については相澤先生が話していたらしい。
どうやら、雄英の推薦入試をトップの成績で合格したにも関わらず、何故か入学を辞退したそうで、そうなってくると焦凍よりも成績が上……という事になる。
不思議な経歴を持っている彼だが、実力は本物という事でマークしておけと相澤先生は忠告していたらしい。
「イレイザー!?
イレイザーじゃないか!!」
「!」
女性の声が相澤先生を呼び止め、振り向けば頭に橙色の布を巻いた鮮やかな色合いの女性が、此方に手を振っている。
出久がその女性を見て、ハッとしていたがそれよりも相澤先生の至極嫌そうな顔に俺は二度見してしまった。
「結婚しようぜ」「しない」
ほぼ同時に否定の言葉を伝える相澤先生だが、芦戸殿は何か色めき立った声を上げる。
会って1分も満たないが、その後も一方的な会話を続けており何とも破天荒そうな女性である事は分かった。
「スマイルヒーロー『Ms.ジョーク』!
”個性”は『爆笑』!
近くの人を強制的に笑わせて、思考・行動共に鈍らせるんだ!
彼女の敵退治は狂気に満ちてるよ!」
出久の説明に成程……となる一方で、相澤先生と面識があるのは一体……?という疑問も勿論浮上する。
梅雨殿が聞いた所、昔事務所が近かったらしい。
同業他社故のご近所付き合いというやつだろうか。
ヒーローは敵が出たら即席でバディを組む事もある訳だし、まぁ何度か仕事を共にしたのだろう。
「いじりがいがあるんだよな、イレイザーは。
そうそう、おいで皆!雄英だよ!」
「おお!本物じゃないか!!」
彼女の後ろにいた生徒達が此方へ近寄って来る。
TVで見た、という言葉が出ているので、体育祭の視聴率と伝播率は侮れない事が伺える。
そう言えば、先程のイナサ殿も俺の事は体育祭で知ったのだろうか。
「傑物学園高校 2年2組!
私の受け持ち、よろしくな。」
そう言ったジョーク先生は、決して俺達を油断していない目で見てくる。
担任としては、教え子の合格を何よりも願っているのだろう。
「俺は真堂!
今年の雄英はトラブル続きで大変だったね。」
「えっ あ、」
「しかし君たちはこうしてヒーローを志し続けているんだね。
すばらしいよ!!
不屈の心こそ、これからのヒーローが持つべき素養だと思う!!」
出久の手を取り、それからテンポ良く上鳴殿や耳郎殿の手を取り握手をし、雄英を励ましている真堂殿。
1年先輩という事もあるし、爽やかな言動に皆呆気に取られている。
「中でも神野事件を中心で経験した爆豪くん、西椋くん。
君たちは特別に強い心を持っている。
今日は君たちの胸を借りるつもりで、頑張らせてもらうよ。」
俺と勝己の方へ手を差し出してくる真堂殿に、俺は応えようとするも、勝己がそれを払い除ける。
「フかしてんじゃねえ。
台詞と面が合ってねえんだよ。
それと大和にも触んな。」
「こらおめー失礼だろ!すみません無礼で…」
勝己の失礼な態度に、切島殿と一緒に俺も頭を下げる。
真堂殿はそれを「心が強い証拠」だと言い笑って許していた。
ワイワイしている会場前で焦凍がサインを強請られたりもしたが、相澤先生の指示により移動を再開する事に。
自分達が有名である事を改めて知り、俺達は会場への道を急いだのだが、この仮免試験がまた一波乱も二波乱も巻き起こすのだった。
下に降りると、どうやら先生方が資格試験についての説明をしていた。
毎年6月と9月に全国三ヶ所で一律に行われるヒーロー資格試験。
同校生徒での潰し合いを避ける為、どの学校も時期や場所を分けて受験させるのが鉄則となっているらしい。
成程、確かに只でさえ少ない合格枠をつまらない私怨で潰されては敵わんからな……。
先程は啖呵を切っていた物間殿から、ホッという音が出る。
どうやら内心穏やかな気持ちでは無かったらしい。
「直接手を下せないのが残念だ!!」
高笑いしている彼を切島殿や上鳴殿は何かの病気では…?と不審がっていた。
「”どの学校でも”…………、そうだよな。
フツーにスルーしてたけど、他校と合格を奪い合うんだ。」
雄英に受験した時の事を思い出す。
あの時もとてつもない人数が受験していた。
受験時と違うのは、敵の襲撃により少しスケジュールが詰まってしまったのと通常の修得過程よりも前倒しされ、1年の時点で仮免を取りに行くという状況。
「君たちより訓練期間の長い者。
未知の”個性”を持ち洗練してきた者が、集うワケだ。」
時間というのは唯一平等である。
自分達よりも1年、2年、或いはもっと経験を積んで来た者と狭き門を目指し戦う事になる。
「試験内容は不明だが、明確な逆境であることは間違いない。
意識しすぎるのも良くないが、忘れないようにな。」
その日の夜、俺は庭で蹴りの動きを確認している出久を発見する。
少し動き足りなかったので、声を掛けて組手の相手をしつつ考察を繰り返す出久にアドバイスもした。
日に日に動きを物にして行くその成長速度には、矢張り驚かされるばかりだ。
「出久は本当に努力家だな。」
「そ、そそそそ、そんな事!!大和君のほうが!!
その!本当に、凄いし!!」
顔を真っ赤にして謙遜する姿に、何だか笑いが込み上げてくる。
微笑ましいというか何と言うか。
その後取り敢えず風呂も一緒に入り、湯船に浸かりながらああでも無いこうでも無いとしていたら、すっかり長風呂になってしまった。
まぁ、たまにはそんな日もいいだろう。
お互いに合格を奪い合うと言うが、親睦を深める事自体に悪い事は無いからな。
そうして、訓練の月日が流れヒーロー仮免許取得試験当日となる。
「降りろ、到着だ。
試験会場 国立多古場競技場。」
緊張する面々、峰田殿が不安な言葉を漏らしていると相澤先生から「取れるかじゃない、取って来い」と緩い喝を入れられる。
それに勿論!と答える峰田殿だったが、本心は一体どうなのやら……。
「この試験に合格し仮免許を取得出来れば、
お前ら志望者は晴れてヒヨッ子…セミプロへと孵化できる。
頑張ってこい。」
相澤先生は俺達にそう伝え、切島殿が盛り上げ役として円陣を取り仕切る。
俺も微笑ましさに目元を緩めてその円陣に加わろうとしたが、す、っと横に見慣れぬ軍帽を被った男子が混ざってきた。
「せーのっ、”Plus ultra!!”」
余りの声量に俺は目を丸くする。
焦凍はそれとは別の意味で、その混ざって来た男子
を見つめていた。
「勝手に他所様の円陣に加わるのは良くないよ、イナサ。」
「ああ、しまった!!
どうも大変、失礼致しましたァ!!!」
同じ制服を着た男子に声を掛けられた途端、勢い良く……本当に頭を地面に叩き付ける程勢い良く、盛大に謝ってくるイナサと呼ばれた男子。
余りの迫力に1-Aの大半は慄いていた。
それを見ていた周りの人達が口々に零して行く言葉。
『西の有名な』
勝己は知っていた様で、つまらなさそうな顔で呟く。
「東の雄英、西の士傑。
数あるヒーロー科の中でも、
雄英に匹敵する程の難関校ーー……
士傑高校。」
俺は正直詳しくなかったのだが、矢張りヒーロー科の高校で有名所は雄英だけでは無い。
西、という事はわざわざ此処まで遥々遠征に来たのだろう。
ガバッと体を起き上がらせたイナサと呼ばれた男子は雄英への熱く語っている。
「雄英の皆さんと競えるなんて、光栄の極みっス!
よろしくお願いします!!」
そして打ち付けた額から、これまた勢い良く垂れる血に俺は思わず、その男子の頬を両手で挟んでぐい!と此方へ向かせた。
「おい、試験前に負傷する者が何処にいる。」
そう言いながら水で傷を洗い、ティッシュで血を拭きつつもアルコール消毒し、大きめのガーゼを当てて行く。
幸いにもそこまで深く切ってなかったので直ぐ出血も治まったが、傷口が頭であるから油断は出来ない。
「遠路遥々受けに来たのだろう?
もう少し慎重に動かないと努力が水の泡だ。
……視界が霞んだり、気分が優れない等はあるか?」
「…………。」
「保健委員魂に火を付けちゃったね…。」
葉隠殿のあらぁ〜という言葉を背にしながらも、急な事で固まる負傷した彼は、目を見開いて俺を凝視している。
俺は中学の剣道部時代を思い出し、坊主頭を少し撫でてしまった。
後輩が可愛くて、彼等が怪我した時はついこうしてしまっていたなと懐かしい気持ちになる。
このショリショリとした手触り、後輩達もこんな感じだったな…。
「……可憐だ……。」
「…む?」
「俺、貴方のこと大好きっス!!!西椋 大和さんっスよね!!?」
ガシッ!と突然両手を、大きな手に包まれて戸惑う。
雄英側のほうで爆発音やら冷気やら、叫び声やらが感じ取れたのだが俺は目の前の事態にどうしていいのか分からない。
「あ、ああ。そうだな…、俺は西椋 大和だ。」
「俺、夜嵐 イナサっス!!!」
「夜嵐殿……。」
「是非イナサって呼んで欲しいっス!!!」
余りの勢いに後ろに下がりそうになるが、包んでいた手の片方が俺の腰に行き、逃がさないとばかりに力強く引き寄せられる。
流石に応急手当も済んでいるので離して欲しい…という表情になってしまい、同じ軍帽を被った毛羽毛現のようなもふもふした人がイナサ殿を引き剥がしてくれた。
その途端、右肩を勝己に左肩を焦凍に掴まれて一気に1-Aの下へ戻って来れた。
障子殿の後ろに隠されて、視界は一気に雄英一色に染まる。
正直ホッとしてしまった。
「手当をしただけなのに、何故……???」
「無自覚だからなぁ、西椋は…。」
近くにいた尾白殿の言葉に、常闇殿と障子殿が深く頷いていた。
何だか解せない気持ちになってはいたが、俺が絡まれている間にイナサ殿については相澤先生が話していたらしい。
どうやら、雄英の推薦入試をトップの成績で合格したにも関わらず、何故か入学を辞退したそうで、そうなってくると焦凍よりも成績が上……という事になる。
不思議な経歴を持っている彼だが、実力は本物という事でマークしておけと相澤先生は忠告していたらしい。
「イレイザー!?
イレイザーじゃないか!!」
「!」
女性の声が相澤先生を呼び止め、振り向けば頭に橙色の布を巻いた鮮やかな色合いの女性が、此方に手を振っている。
出久がその女性を見て、ハッとしていたがそれよりも相澤先生の至極嫌そうな顔に俺は二度見してしまった。
「結婚しようぜ」「しない」
ほぼ同時に否定の言葉を伝える相澤先生だが、芦戸殿は何か色めき立った声を上げる。
会って1分も満たないが、その後も一方的な会話を続けており何とも破天荒そうな女性である事は分かった。
「スマイルヒーロー『Ms.ジョーク』!
”個性”は『爆笑』!
近くの人を強制的に笑わせて、思考・行動共に鈍らせるんだ!
彼女の敵退治は狂気に満ちてるよ!」
出久の説明に成程……となる一方で、相澤先生と面識があるのは一体……?という疑問も勿論浮上する。
梅雨殿が聞いた所、昔事務所が近かったらしい。
同業他社故のご近所付き合いというやつだろうか。
ヒーローは敵が出たら即席でバディを組む事もある訳だし、まぁ何度か仕事を共にしたのだろう。
「いじりがいがあるんだよな、イレイザーは。
そうそう、おいで皆!雄英だよ!」
「おお!本物じゃないか!!」
彼女の後ろにいた生徒達が此方へ近寄って来る。
TVで見た、という言葉が出ているので、体育祭の視聴率と伝播率は侮れない事が伺える。
そう言えば、先程のイナサ殿も俺の事は体育祭で知ったのだろうか。
「傑物学園高校 2年2組!
私の受け持ち、よろしくな。」
そう言ったジョーク先生は、決して俺達を油断していない目で見てくる。
担任としては、教え子の合格を何よりも願っているのだろう。
「俺は真堂!
今年の雄英はトラブル続きで大変だったね。」
「えっ あ、」
「しかし君たちはこうしてヒーローを志し続けているんだね。
すばらしいよ!!
不屈の心こそ、これからのヒーローが持つべき素養だと思う!!」
出久の手を取り、それからテンポ良く上鳴殿や耳郎殿の手を取り握手をし、雄英を励ましている真堂殿。
1年先輩という事もあるし、爽やかな言動に皆呆気に取られている。
「中でも神野事件を中心で経験した爆豪くん、西椋くん。
君たちは特別に強い心を持っている。
今日は君たちの胸を借りるつもりで、頑張らせてもらうよ。」
俺と勝己の方へ手を差し出してくる真堂殿に、俺は応えようとするも、勝己がそれを払い除ける。
「フかしてんじゃねえ。
台詞と面が合ってねえんだよ。
それと大和にも触んな。」
「こらおめー失礼だろ!すみません無礼で…」
勝己の失礼な態度に、切島殿と一緒に俺も頭を下げる。
真堂殿はそれを「心が強い証拠」だと言い笑って許していた。
ワイワイしている会場前で焦凍がサインを強請られたりもしたが、相澤先生の指示により移動を再開する事に。
自分達が有名である事を改めて知り、俺達は会場への道を急いだのだが、この仮免試験がまた一波乱も二波乱も巻き起こすのだった。