第二十六話『編め、必殺技!』
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
皆の咆哮が上がる教室で、先生方が口々に説明する。
エクトプラズム先生は言う。
必殺…即ち、必勝の型・技の事である。
その身に染みつかせた物は、他の追随を許さないものだと。
そしてセメントス先生は、戦闘とは如何に自分の得意を押し付けるかが重要であると説いた。
最後に、ミッドナイト先生は生徒達を見つめ、高らかに主張した。
技は己を象徴する。
今どき、必殺技を持たないプロヒーロー等は絶滅危惧種なのだと。
相澤先生は、興奮冷めやらない生徒達に淡々と補足する。
必殺技の詳しい話は実演で行う為、俺達は戦闘服に着替え体育館に移動する事となった。
移動した俺達の前にあったのは、兎に角広い体育館。
……誰が言ったか、この体育館γの通称はTDL。
トレーニングの台所ランド、だそうだ。
考案したのはセメントス先生で、理由は生徒一人一人に合わせた地形と、物を用意する事が出来る場であるからだ。
それに成程と納得しつつ、その隣で天哉が勢い良く挙手をした。
「質問をお許し下さい!
何故、仮免許の取得に必殺技が必要なのか。
意図をお聞かせ願います!!」
「順を追って話すよ。落ち着け。」
そう言って天哉を一瞥した相澤先生は、仮免許試験について話し始める。
そもそもヒーローとは、事件・事故・天災・人災…あらゆるトラブルから人々を救い出すのが仕事である。
取得試験では、当然その適性を見られることになるのだ。
情報力、判断力、機動力、戦闘力…他にもコミュニケーション能力、魅力、統率力なども含まれ、多くの適性を毎年違う試験内容で試されるそうだ。
確かに、ヒーローをヒーローと足らしめるものは多く、そのどれもが必要とされるものだな。
「その中でも戦闘力は、これからのヒーローにとって極めて重視される項目となります。
備えあれば憂いなし!技の有無は合否に大きく影響する。」
ミッドナイト先生の真剣な表情に、クラスの皆が気を引き締めた。
「状況に左右されることなく安定行動を取れれば、
それは高い戦闘力を有している事になるんだよ。」
セメントス先生の言葉にふむ、と腑に落ちる。
共に行動するヒーローや地形が変わっても、同じように活動出来た方が人々を助けられるものな。
また、エクトプラズム先生は質問した天哉を見つめ生徒達に補足した。
「技ハ必ズシモ攻撃デアル必要ハ無イ。
例エバ…飯田クンノ”レシプロバースト”。
一時的ナ超速移動、ソレ自体ガ脅威デアル為必殺技ト呼ブニ値スル。」
その言葉に天哉は、アレ必殺技で良いのか…!!と感動していた。
それに対して砂藤殿も、合点がいった顔をしている。
「成程…自分の中に『これさえやれば有利・勝てる』って型をつくろうって話か。」
「そ!
先日大活躍したシンリンカムイの
『ウルシ鎖牢』なんか、模範的な必殺技よ。
わかりやすいよね。
相手が何がする前に縛っちゃう。」
俺もシンリンカムイ殿が放ったウルシ鎖牢は、あの神野区事件の際この目で間近に見ていた。
多人数の敵を一挙に捕縛出来る大変効果的な必殺技と言えるだろう。
「中断されてしまった合宿での『個性伸ばし』は、
…この必殺技を作り上げる為のプロセスだった。」
明かされた合宿での目論見に皆が驚く。
あの過酷な”個性”の酷使は、極限の環境で磨かれるものもあるのだろう。
或いは、予期せぬ進化をも遂げる事が出来たかもしれない。
熟々、敵側には機会を潰されてばかりであり雀の涙程だが苛立ちも芽生えた。
過ぎた事を悔いても仕方の無い事ではあるのだが……。
そう思っている間にセメントス先生は訓練場をあっという間に形成し、エクトプラズム先生は一息で何人もの分身を作り出していく。
「つまりこれから後期始業まで…
残り十日余りの夏休みは、
”個性”を伸ばしつつ必殺技を編み出すーー…
圧縮訓練となる!」
俺達は刻限が迫っている、という現実的な問題を叩きつけられながらも期待に胸を膨らませていた。
悲観するような表情は一人もおらず、緊張感を保ったまま前を見据えている。
「尚、”個性”の伸びや技の性質に合わせて、
コスチュームの改良も並行して考えていくように。
プルスウルトラの精神で乗り越えろ。
準備はいいか?」
「ワクワクしてきたぁ!!」
そうして始まった必殺技考案の授業。
様々な場所で打撃音や爆発音などが起こっている。
一人一人の生徒にエクトプラズム先生の的確で鋭い指摘とアドバイスが入る。
痛い所を突かれて涙目になるものもいれば、新しい発見を得ている者もいるようだ。
俺はというと、エクトプラズム先生に剣術に関する事を聞かれていた。
「西椋クンニ関シテハ、基本的ナ動キ八全ク問題無イ。
寧ロ、学生ノレベルヲ通リ越スくらい出来過ギダ。
奇シクモ実戦経験ヲ積ンデイルオ陰デ、
ヨリ応用力ノアル動キニナッテイル。」
「あ、有難う御座います…。」
素直に褒められて何だかそわそわしてしまう俺は、取り敢えずぺこりと礼をする。
ふむ、と顎をさすり思案しながらエクトプラズム先生は続けた。
「君ノ『流派』デ、必殺技ニ使エソウナ奥義ヤ技等ハ無イダロウカ?」
「『流派』……。」
奥義に関しては、実は家庭訪問前後の休校期間中に父上から教わっていた。
家庭訪問前の夜、父上に道場へ呼び出され覇導一神昇華流 を伝授された。
伝授された技は十もあったが、技をその場で披露され、その技の用途や効果を説明されて、その後数回父上の前で同じ動きをさせてもらい、頷かれただけだった。
家庭訪問後も確認の為に一通り奥義を見てもらったが、またしても深く頷かれただけだった。
奥義というものはもっと何年も山篭りして修行して会得するものだ、というのが俺の印象だったし、父上も「教えるのはまだ早いと思ってはいたが……」とは言っていた。
けれどこうして伝授されたという事は、これからのヒーロー社会を鑑みての事だったのかもしれない。
「実は……つい先日、父上から流派の技を授かりました。」
「ソウカ。
デハ、ソレヲ主軸ニシテ個性ヲ伸ノバシテ行クカ?」
「……はい。親から授かった俺の唯一です。
まずは教わったものの基本に忠実、ですが…
応用出来るものはそうしていきます。」
俺の言葉に頷いたエクトプラズム先生は、十の技の概要を聞きつつ実践練習を重ねて行った。
「成程……実ニ興味深ク、素晴ラシイ技ノ数々。
以前カラ使ッテイル合気道ノ動キヤ、
『縮地』モ掛ケ合ワセルト、モット可能性ガ広ガルダロウ。」
「有難う御座います。
今はまだ会得したばかりなので、
柔軟な活用方法が浮かばないものもありますが……
色々と挑戦してみます。」
実践練習をしていく中で、戦闘服や装備に関する点をエクトプラズム先生からアドバイスされる。
その間、オールマイト先生もこの体育館に来ており、何人かにアドバイスをしていた。
俺とも目が合い、お疲れ様ですの意味を込めて一礼する。
「やぁ、西椋少年。」
「オールマイト先生、療養なさらなくて大丈夫ですか…?」
「寧ろやる事無くて困ってたくらいさ!」
笑顔でそういうオールマイト先生は以前の迫力ある姿と比べると、今は確かに一般人の如く覇気は全く無い。
そうなってしまった原因の一端に、オール・フォー・ワンとの戦闘…もとい、俺と勝己が夏期合宿で敵に攫われたというものがあるのだが……オールマイト先生は俺や勝己を責める事は一切無かった。
俺はネットを見ないが、ネットで手がかりを調べていた安土や級友達の表情から察するに、俺達や雄英を誹謗中傷する人達も居たんだろう。
「その…気分を悪くされたらすみませんが、
神野区では、俺達の為に体を張ってくださり、
本当に有難う御座います…。その上で、
…本来の姿で対面し御挨拶が出来て、俺は嬉しいです。」
けれど、だからこそ俺も『もう元気です』と意思表示の為にオールマイト先生の笑顔に連れながら伝えると、様子を見ていたエクトプラズム先生と真正面で対話していたオールマイト先生、そしてその奥の方で此方を眺めていた相澤先生が各々目を丸くしていた。
(エクトプラズム先生自体は表情が乏しいのだが、口をあんぐり開けていたのできっと驚いていたと思われる。)
俺は返事が来なかったので、首を傾げて不思議そうにしていると、エクトプラズム先生が咳払いをしてオールマイト先生と相澤先生がハッとした顔をした。
「ハ、HAHAHA!ヒーローとして当然さ!
西椋少年も、余り気に病み過ぎないようにね!
これからも宜しく頼むよ。」
「はい!」
そのままオールマイト先生は片手を上げてHAHAHA…と笑いながら去っていき、他の生徒の所へ。
俺もエクトプラズム先生と向き直り、改めて授業を再開した。
そして遠くでそれを観察していた出久は、「(あ、大和君また誑してるんだな……)」と思っていたとかいなかったとか。
エクトプラズム先生は言う。
必殺…即ち、必勝の型・技の事である。
その身に染みつかせた物は、他の追随を許さないものだと。
そしてセメントス先生は、戦闘とは如何に自分の得意を押し付けるかが重要であると説いた。
最後に、ミッドナイト先生は生徒達を見つめ、高らかに主張した。
技は己を象徴する。
今どき、必殺技を持たないプロヒーロー等は絶滅危惧種なのだと。
相澤先生は、興奮冷めやらない生徒達に淡々と補足する。
必殺技の詳しい話は実演で行う為、俺達は戦闘服に着替え体育館に移動する事となった。
移動した俺達の前にあったのは、兎に角広い体育館。
……誰が言ったか、この体育館γの通称はTDL。
トレーニングの台所ランド、だそうだ。
考案したのはセメントス先生で、理由は生徒一人一人に合わせた地形と、物を用意する事が出来る場であるからだ。
それに成程と納得しつつ、その隣で天哉が勢い良く挙手をした。
「質問をお許し下さい!
何故、仮免許の取得に必殺技が必要なのか。
意図をお聞かせ願います!!」
「順を追って話すよ。落ち着け。」
そう言って天哉を一瞥した相澤先生は、仮免許試験について話し始める。
そもそもヒーローとは、事件・事故・天災・人災…あらゆるトラブルから人々を救い出すのが仕事である。
取得試験では、当然その適性を見られることになるのだ。
情報力、判断力、機動力、戦闘力…他にもコミュニケーション能力、魅力、統率力なども含まれ、多くの適性を毎年違う試験内容で試されるそうだ。
確かに、ヒーローをヒーローと足らしめるものは多く、そのどれもが必要とされるものだな。
「その中でも戦闘力は、これからのヒーローにとって極めて重視される項目となります。
備えあれば憂いなし!技の有無は合否に大きく影響する。」
ミッドナイト先生の真剣な表情に、クラスの皆が気を引き締めた。
「状況に左右されることなく安定行動を取れれば、
それは高い戦闘力を有している事になるんだよ。」
セメントス先生の言葉にふむ、と腑に落ちる。
共に行動するヒーローや地形が変わっても、同じように活動出来た方が人々を助けられるものな。
また、エクトプラズム先生は質問した天哉を見つめ生徒達に補足した。
「技ハ必ズシモ攻撃デアル必要ハ無イ。
例エバ…飯田クンノ”レシプロバースト”。
一時的ナ超速移動、ソレ自体ガ脅威デアル為必殺技ト呼ブニ値スル。」
その言葉に天哉は、アレ必殺技で良いのか…!!と感動していた。
それに対して砂藤殿も、合点がいった顔をしている。
「成程…自分の中に『これさえやれば有利・勝てる』って型をつくろうって話か。」
「そ!
先日大活躍したシンリンカムイの
『ウルシ鎖牢』なんか、模範的な必殺技よ。
わかりやすいよね。
相手が何がする前に縛っちゃう。」
俺もシンリンカムイ殿が放ったウルシ鎖牢は、あの神野区事件の際この目で間近に見ていた。
多人数の敵を一挙に捕縛出来る大変効果的な必殺技と言えるだろう。
「中断されてしまった合宿での『個性伸ばし』は、
…この必殺技を作り上げる為のプロセスだった。」
明かされた合宿での目論見に皆が驚く。
あの過酷な”個性”の酷使は、極限の環境で磨かれるものもあるのだろう。
或いは、予期せぬ進化をも遂げる事が出来たかもしれない。
熟々、敵側には機会を潰されてばかりであり雀の涙程だが苛立ちも芽生えた。
過ぎた事を悔いても仕方の無い事ではあるのだが……。
そう思っている間にセメントス先生は訓練場をあっという間に形成し、エクトプラズム先生は一息で何人もの分身を作り出していく。
「つまりこれから後期始業まで…
残り十日余りの夏休みは、
”個性”を伸ばしつつ必殺技を編み出すーー…
圧縮訓練となる!」
俺達は刻限が迫っている、という現実的な問題を叩きつけられながらも期待に胸を膨らませていた。
悲観するような表情は一人もおらず、緊張感を保ったまま前を見据えている。
「尚、”個性”の伸びや技の性質に合わせて、
コスチュームの改良も並行して考えていくように。
プルスウルトラの精神で乗り越えろ。
準備はいいか?」
「ワクワクしてきたぁ!!」
そうして始まった必殺技考案の授業。
様々な場所で打撃音や爆発音などが起こっている。
一人一人の生徒にエクトプラズム先生の的確で鋭い指摘とアドバイスが入る。
痛い所を突かれて涙目になるものもいれば、新しい発見を得ている者もいるようだ。
俺はというと、エクトプラズム先生に剣術に関する事を聞かれていた。
「西椋クンニ関シテハ、基本的ナ動キ八全ク問題無イ。
寧ロ、学生ノレベルヲ通リ越スくらい出来過ギダ。
奇シクモ実戦経験ヲ積ンデイルオ陰デ、
ヨリ応用力ノアル動キニナッテイル。」
「あ、有難う御座います…。」
素直に褒められて何だかそわそわしてしまう俺は、取り敢えずぺこりと礼をする。
ふむ、と顎をさすり思案しながらエクトプラズム先生は続けた。
「君ノ『流派』デ、必殺技ニ使エソウナ奥義ヤ技等ハ無イダロウカ?」
「『流派』……。」
奥義に関しては、実は家庭訪問前後の休校期間中に父上から教わっていた。
家庭訪問前の夜、父上に道場へ呼び出され
伝授された技は十もあったが、技をその場で披露され、その技の用途や効果を説明されて、その後数回父上の前で同じ動きをさせてもらい、頷かれただけだった。
家庭訪問後も確認の為に一通り奥義を見てもらったが、またしても深く頷かれただけだった。
奥義というものはもっと何年も山篭りして修行して会得するものだ、というのが俺の印象だったし、父上も「教えるのはまだ早いと思ってはいたが……」とは言っていた。
けれどこうして伝授されたという事は、これからのヒーロー社会を鑑みての事だったのかもしれない。
「実は……つい先日、父上から流派の技を授かりました。」
「ソウカ。
デハ、ソレヲ主軸ニシテ個性ヲ伸ノバシテ行クカ?」
「……はい。親から授かった俺の唯一です。
まずは教わったものの基本に忠実、ですが…
応用出来るものはそうしていきます。」
俺の言葉に頷いたエクトプラズム先生は、十の技の概要を聞きつつ実践練習を重ねて行った。
「成程……実ニ興味深ク、素晴ラシイ技ノ数々。
以前カラ使ッテイル合気道ノ動キヤ、
『縮地』モ掛ケ合ワセルト、モット可能性ガ広ガルダロウ。」
「有難う御座います。
今はまだ会得したばかりなので、
柔軟な活用方法が浮かばないものもありますが……
色々と挑戦してみます。」
実践練習をしていく中で、戦闘服や装備に関する点をエクトプラズム先生からアドバイスされる。
その間、オールマイト先生もこの体育館に来ており、何人かにアドバイスをしていた。
俺とも目が合い、お疲れ様ですの意味を込めて一礼する。
「やぁ、西椋少年。」
「オールマイト先生、療養なさらなくて大丈夫ですか…?」
「寧ろやる事無くて困ってたくらいさ!」
笑顔でそういうオールマイト先生は以前の迫力ある姿と比べると、今は確かに一般人の如く覇気は全く無い。
そうなってしまった原因の一端に、オール・フォー・ワンとの戦闘…もとい、俺と勝己が夏期合宿で敵に攫われたというものがあるのだが……オールマイト先生は俺や勝己を責める事は一切無かった。
俺はネットを見ないが、ネットで手がかりを調べていた安土や級友達の表情から察するに、俺達や雄英を誹謗中傷する人達も居たんだろう。
「その…気分を悪くされたらすみませんが、
神野区では、俺達の為に体を張ってくださり、
本当に有難う御座います…。その上で、
…本来の姿で対面し御挨拶が出来て、俺は嬉しいです。」
けれど、だからこそ俺も『もう元気です』と意思表示の為にオールマイト先生の笑顔に連れながら伝えると、様子を見ていたエクトプラズム先生と真正面で対話していたオールマイト先生、そしてその奥の方で此方を眺めていた相澤先生が各々目を丸くしていた。
(エクトプラズム先生自体は表情が乏しいのだが、口をあんぐり開けていたのできっと驚いていたと思われる。)
俺は返事が来なかったので、首を傾げて不思議そうにしていると、エクトプラズム先生が咳払いをしてオールマイト先生と相澤先生がハッとした顔をした。
「ハ、HAHAHA!ヒーローとして当然さ!
西椋少年も、余り気に病み過ぎないようにね!
これからも宜しく頼むよ。」
「はい!」
そのままオールマイト先生は片手を上げてHAHAHA…と笑いながら去っていき、他の生徒の所へ。
俺もエクトプラズム先生と向き直り、改めて授業を再開した。
そして遠くでそれを観察していた出久は、「(あ、大和君また誑してるんだな……)」と思っていたとかいなかったとか。