第二十五話『入れ、寮!』
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次に訪れた砂藤殿の部屋は、調理器具の目立つ普通の部屋だったが、部屋には甘い香りが漂っている。
「ああイケね!!忘れてた!!
だいぶ早く片付いたんでよ、シフォンケーキ焼いてたんだ!!
皆食うかと思ってよォ…。」
しふぉんけーき?と言われたオーブンから取り出したものを切り、皆に食べるか聞いてくる砂藤殿。
その良い香りに思わず瞬きを数回繰り返す。
砂藤殿はお菓子作りが得意なのか…意外だ……。
女子陣はそのおもてなしに大層喜んでおり、俺も一切れ貰ったが、ふわっとした食感とさっぱりした甘さがとても美味であり、夜中に食べているという罪悪感は薄かった。
皆が口々に美味い美味いと言っていたが、これは確かに癖になるな。
そして、男子陣の鳳は俺の部屋な訳だが…。
廊下まではさくさくと歩いていた皆だったが、俺の部屋の前まで来ると誰も扉を開けようとしなかった。
「…どうした?」
「何と言うか、その…!」
顔を赤くして言い淀む出久を後目に、俺が扉を開け皆に部屋を見せる。
焦凍と同じく和室なのだが、皆は目を見開く。
「高級旅館じゃん!!!?」
焦凍や八百万殿以外の殆どが声を挙げて俺の部屋に驚いていた。
同じ和室な筈なのだが…まぁ、此方は自力でリフォームした訳ではなく、専門職に任せた訳だしな…。
「す、凄い…!!これも大和君がリフォームしたのかい!?」
「否、父上が雄英に申請した様でな…。」
「この棚とか机とかいくらすんだろ…!?」
「それは母上の実家から取り寄せたらしい…。」
天哉や上鳴殿がわなわなと震えながら部屋を観察している。
どれも触るのを躊躇している様で、何か申し訳なくなった。
「1泊1万円くらい取りそうなお部屋だね!!」
葉隠殿からザックリした感想を貰ったが、その隣で麗日殿はフラリと目眩を起こしていた。
だ、大丈夫だろうか…。
皆が騒然としている中、八百万殿はしげしげと家具を見ていた。
「これは……もしかしなくとも、あの一門の作品ですわね。
とても良い品の数々を取り揃えておりますわ。」
よく分からんが、中々高評価らしい。
やっぱり西椋は和室だよなー、といった切島殿の言葉と共に、俺の部屋の観察は終了した。
「…な、何か大和君の部屋、良い香りがしたね…!」
「畳の香りとはまた違う、魅惑の香りだった…。」
「当たり前だぞ、大和の部屋だからな。」
出久と常闇殿、それから焦凍がひと塊になって何か話していたのが気になるが、そのまま女子の棟に移動する事になった。
だが…、俺の眠気はそろそろ限界だ。
「……むう、すまんが…、俺はそろそろ寝たい。
女子の棟に行くのは、俺自身気が引けるのでな。
結果は後程聞かせてもらう。」
眠気でふわふわしだした視界を他所に、その言葉を伝えると皆は了解してくれた。
「また明日な。」
「うん!おやすみ!」
「またねー!」
皆がそれぞれ挨拶を返し、それに手を振りながら扉を締める。
俺は一息付き、押し入れから布団を出す。
夏用の布団なので薄目なのだが、良い素材を使っている様で触り心地がとても良い。
携帯を充電ケーブルに繋げ目覚ましをセットし、横になった瞬間、すとん…と眠りに着いたのだった。
俺が寝ている間、梅雨殿が神野区に赴いた面々に対し心情を吐露する事があったのだが、話さずにいるより吐き出してしまった方がいいものもある。
彼女の優しくも真面目な性格が、今回の件を重く受け止めていたのだろう。
余談とはなるが、部屋王とやらは砂藤殿が勝ち取ったそうだ。
だが、理由は部屋の素晴らしさでは無く、最終的にシフォンケーキが勝因だったらしい。
まぁ、確かにあれは美味だったからな…。
しかし、正直その勝因なら部屋は関係なかったな…。
そして……俺達は日常に戻って行く。
拉致や監禁等を受けた俺だが、これからはまた、クラスメイト達と切磋琢磨する『ヒーローの卵』としての日常に。
翌朝、折角セットした目覚ましだったが、それよりも早く目が覚める。
いつも通り鍛錬を行おうとした時、何処で行おうか一瞬迷ったが取り敢えず雄英の周りを走る所から始めるか。
素振り等は中庭でやる事にしよう。
少しづつ、以前の日常と違う所はあるもののそれに順応して行くのが人間である。
ある程度鍛錬を終えた所で、湯浴みをし身を清める。
脱衣場から出た所で、勝己と出くわした。
「お早う、勝己。」
「あ゛?!テメェ…朝風呂とかジジィかよ…!」
「しっかり早起き出来て偉いな。」
「ガキ扱いすんなッ!!!」
はて…爺と言われたので、頭でも撫でて可愛がってやろうと思ったのだが…。
朝から何故か顔が真っ赤な勝己を置いて朝食を食べ、雄英に行く支度を始める。
5分で雄英に着くという立地ではあるが、早めに教室へ向かうとしよう。
もしかしたら天哉はもっと早く着いてるかもしれんがな。
さて、今日の授業はどの様なものだろうか。
久し振りの授業を、俺は心待ちにしていた。
「昨日話した通り、まずは”仮免”取得が当面の目標だ。」
「はい!」
教壇に立つ相澤先生の言葉に、クラス全体が身を引き締める。
「ヒーロー免許ってのは、人命に直接係わる責任重大な資格だ。
当然、取得の為の試験はとても厳しい。
仮免といえど、その合格率は例年5割を切る。」
確かに、ヒーローの資格取得はそう易々と取れるものでは無いだろうな。
「仮免でそんなキツイのかよ。」
峰田殿の率直な意見に、殆どの者が同感するだろう。
「そこで今日から君らには一人最低でも二つ……。」
相澤先生が合図すると同時に、ガラリと扉が開かれる。
そこに居たのは、ミッドナイト先生とエクトプラズム先生、セメントス先生がいた。
「必殺技を、作ってもらう!!」
「学校っぽくて、それでいてヒーローっぽいのキタァア!!!」
皆の士気がぐんと上がったのを肌で感じる。
必殺技……言葉は物騒だが、ヒーローと言えば敵退治であり、必殺技はそれを彩る物である。
考えない手は無い。
仄かに汗ばんだ手を握りしめ、俺は壇上の先生方を強く見つめた。
「ああイケね!!忘れてた!!
だいぶ早く片付いたんでよ、シフォンケーキ焼いてたんだ!!
皆食うかと思ってよォ…。」
しふぉんけーき?と言われたオーブンから取り出したものを切り、皆に食べるか聞いてくる砂藤殿。
その良い香りに思わず瞬きを数回繰り返す。
砂藤殿はお菓子作りが得意なのか…意外だ……。
女子陣はそのおもてなしに大層喜んでおり、俺も一切れ貰ったが、ふわっとした食感とさっぱりした甘さがとても美味であり、夜中に食べているという罪悪感は薄かった。
皆が口々に美味い美味いと言っていたが、これは確かに癖になるな。
そして、男子陣の鳳は俺の部屋な訳だが…。
廊下まではさくさくと歩いていた皆だったが、俺の部屋の前まで来ると誰も扉を開けようとしなかった。
「…どうした?」
「何と言うか、その…!」
顔を赤くして言い淀む出久を後目に、俺が扉を開け皆に部屋を見せる。
焦凍と同じく和室なのだが、皆は目を見開く。
「高級旅館じゃん!!!?」
焦凍や八百万殿以外の殆どが声を挙げて俺の部屋に驚いていた。
同じ和室な筈なのだが…まぁ、此方は自力でリフォームした訳ではなく、専門職に任せた訳だしな…。
「す、凄い…!!これも大和君がリフォームしたのかい!?」
「否、父上が雄英に申請した様でな…。」
「この棚とか机とかいくらすんだろ…!?」
「それは母上の実家から取り寄せたらしい…。」
天哉や上鳴殿がわなわなと震えながら部屋を観察している。
どれも触るのを躊躇している様で、何か申し訳なくなった。
「1泊1万円くらい取りそうなお部屋だね!!」
葉隠殿からザックリした感想を貰ったが、その隣で麗日殿はフラリと目眩を起こしていた。
だ、大丈夫だろうか…。
皆が騒然としている中、八百万殿はしげしげと家具を見ていた。
「これは……もしかしなくとも、あの一門の作品ですわね。
とても良い品の数々を取り揃えておりますわ。」
よく分からんが、中々高評価らしい。
やっぱり西椋は和室だよなー、といった切島殿の言葉と共に、俺の部屋の観察は終了した。
「…な、何か大和君の部屋、良い香りがしたね…!」
「畳の香りとはまた違う、魅惑の香りだった…。」
「当たり前だぞ、大和の部屋だからな。」
出久と常闇殿、それから焦凍がひと塊になって何か話していたのが気になるが、そのまま女子の棟に移動する事になった。
だが…、俺の眠気はそろそろ限界だ。
「……むう、すまんが…、俺はそろそろ寝たい。
女子の棟に行くのは、俺自身気が引けるのでな。
結果は後程聞かせてもらう。」
眠気でふわふわしだした視界を他所に、その言葉を伝えると皆は了解してくれた。
「また明日な。」
「うん!おやすみ!」
「またねー!」
皆がそれぞれ挨拶を返し、それに手を振りながら扉を締める。
俺は一息付き、押し入れから布団を出す。
夏用の布団なので薄目なのだが、良い素材を使っている様で触り心地がとても良い。
携帯を充電ケーブルに繋げ目覚ましをセットし、横になった瞬間、すとん…と眠りに着いたのだった。
俺が寝ている間、梅雨殿が神野区に赴いた面々に対し心情を吐露する事があったのだが、話さずにいるより吐き出してしまった方がいいものもある。
彼女の優しくも真面目な性格が、今回の件を重く受け止めていたのだろう。
余談とはなるが、部屋王とやらは砂藤殿が勝ち取ったそうだ。
だが、理由は部屋の素晴らしさでは無く、最終的にシフォンケーキが勝因だったらしい。
まぁ、確かにあれは美味だったからな…。
しかし、正直その勝因なら部屋は関係なかったな…。
そして……俺達は日常に戻って行く。
拉致や監禁等を受けた俺だが、これからはまた、クラスメイト達と切磋琢磨する『ヒーローの卵』としての日常に。
翌朝、折角セットした目覚ましだったが、それよりも早く目が覚める。
いつも通り鍛錬を行おうとした時、何処で行おうか一瞬迷ったが取り敢えず雄英の周りを走る所から始めるか。
素振り等は中庭でやる事にしよう。
少しづつ、以前の日常と違う所はあるもののそれに順応して行くのが人間である。
ある程度鍛錬を終えた所で、湯浴みをし身を清める。
脱衣場から出た所で、勝己と出くわした。
「お早う、勝己。」
「あ゛?!テメェ…朝風呂とかジジィかよ…!」
「しっかり早起き出来て偉いな。」
「ガキ扱いすんなッ!!!」
はて…爺と言われたので、頭でも撫でて可愛がってやろうと思ったのだが…。
朝から何故か顔が真っ赤な勝己を置いて朝食を食べ、雄英に行く支度を始める。
5分で雄英に着くという立地ではあるが、早めに教室へ向かうとしよう。
もしかしたら天哉はもっと早く着いてるかもしれんがな。
さて、今日の授業はどの様なものだろうか。
久し振りの授業を、俺は心待ちにしていた。
「昨日話した通り、まずは”仮免”取得が当面の目標だ。」
「はい!」
教壇に立つ相澤先生の言葉に、クラス全体が身を引き締める。
「ヒーロー免許ってのは、人命に直接係わる責任重大な資格だ。
当然、取得の為の試験はとても厳しい。
仮免といえど、その合格率は例年5割を切る。」
確かに、ヒーローの資格取得はそう易々と取れるものでは無いだろうな。
「仮免でそんなキツイのかよ。」
峰田殿の率直な意見に、殆どの者が同感するだろう。
「そこで今日から君らには一人最低でも二つ……。」
相澤先生が合図すると同時に、ガラリと扉が開かれる。
そこに居たのは、ミッドナイト先生とエクトプラズム先生、セメントス先生がいた。
「必殺技を、作ってもらう!!」
「学校っぽくて、それでいてヒーローっぽいのキタァア!!!」
皆の士気がぐんと上がったのを肌で感じる。
必殺技……言葉は物騒だが、ヒーローと言えば敵退治であり、必殺技はそれを彩る物である。
考えない手は無い。
仄かに汗ばんだ手を握りしめ、俺は壇上の先生方を強く見つめた。