第二十四話『ワン・フォー・オール』
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翌日、家の前に一台の車が止まった。
俺と姉上がそこから出てくる人達を迎える。
「お早う御座います。
相澤先生、オールマイト先生。」
「お忙しい中有難う御座います。
さ、どうぞ中へ。
客間で両親がお待ちしています。」
俺が一礼し門を開けて、姉上がその奥にある玄関の戸を開けて誘導した。
しかし、一向に動く気配が無くて俺は首を傾げる。
「……すげぇ家だな…。」
「まるで武家屋敷の様だ…。」
聞き耳を立てれば先生達が驚いているようだった。
俺の家は歴史はあるが、そこまで豪勢という訳でも無いし…焦凍の家を見たら驚くのだろうな。
八百万殿の家だともっと凄いだろう。
この様子だと、まだそれほど訪問していないらしい。
遠い家から徐々に狭めて回っていくのだろう。
漸く一歩踏み出した先生方を、俺は改めて案内した。
玄関で姉上の案内の元、先生方がスリッパを履いている間に、俺は靴を揃えて扉側に爪先を向ける。
それが終わったら、少し歩いて台所へ向かい、客間へ持って行く茶を用意する事にした。
今日も暑いから、今朝用意した氷出しの煎茶にしよう。
お茶請けに水羊羹を拵え、俺は客間へ向かった。
客間の扉を姉上に開けてもらうと、緊張した面持ちの先生方が和家具座椅子に腰掛けており、対面して座っている母上は微笑んでいるが、父上はむすりと黙り込みどっしりと構えていた。
どうやら挨拶はお互いに済ませたみたいだ。
お茶を出して、俺は姉上と一緒にその場を見守る。
因みに安土は今日から塾の夏期講習がある為、早々に家を出ていた。
何だか昨日とは違って、父上の威圧感が凄い気がする…。
「この度は、お子様に危険が及んだ事や雄英の管理が甘かった事に対して、まずは謝罪をさせてください。
本当に申し訳御座いません。」
深く頭を下げる相澤先生につられる様にして、オールマイト先生も頭を下げた。
「……。」
その謝罪は、父上の沈黙で返された。
空気が更に少しだけ重く感じる。
「プリントにもあるように、今後はセキュリティの強化を目的として夏休みから全寮制に切り替えを検討しています。
この事は、御家族でお話は出ましたでしょうか?」
相澤先生が本題を口にする。
そして、机の上に再度送られて来た資料が置かれる。
それを父上は一瞥し、母上は笑みを深めた。
「…相澤先生、でしたよね。」
「は、はい。」
母上が相澤先生に声を掛けた。
2人の先生が母上を見つめる。
「会見の時、大和さんの事をあそこまで理解して頂けたのは貴方くらいだと思います。
大和さんは、一般的には子供らしくない子供に成長しておりますので…。
強さだけではなく、心も見てくださって嬉しかったです。」
母上は鈴を転がすような声色で言葉を紡ぐ。
その表情はとても穏やかで、慈愛に満ちていた。
「大和さんを、私達の目の届かない所に送るのは少しだけ心配していたのですが…。
御二方ならと、私は思っております。」
「………巴。」
父上が母上の名を呼ぶと、母上ははい、と言った後言葉を口にしなくなった。
父上が先生方を真正面から見つめる。
「まずは、神野の事件解決に関して、国民として感謝します。」
父上が頭を下げ、先生方が少し目を丸くした。
その後上がって来た表情は、先程よりも固く鋭いものであり、先生方がぴしりと固まる。
「これは保護者として…引退はしましたが、ヒーローとしての意見ですが、あの事件や戦いは不安でしかなかった。
主戦力をオールマイトさんに傾け過ぎであるし、連携は取れていても救助活動が終わってからでは遅過ぎる。」
その言葉をしっかりと受け止めている先生方は、苦い顔をしている。
それと同時に疑問が浮かんだ様で、父上に声を掛けた。
「失礼を承知でお聞きしますが…西椋さんは、ヒーローをされていたのですか?」
相澤先生の問いに父上はゆっくり頷き、御二方と同じく雄英を卒業しています。と答えた。
「当時は…『タケミカヅチ』という名でした。
家内と結ばれ子を授かってからは、ヒーローとしての名を捨て去り今に至ります。」
あの頃は若かったな……と懐かしそうに思いを馳せている父上に、相澤先生とオールマイト先生が驚愕の顔をしていた。
「タケミカヅチって……『覇王』じゃないですか……世間じゃ行方不明扱いされてんのに……。」
「なんてこった……西椋少年はとんでもない遺伝を持っていたんだな……。」
先生方がわなわなとしていると、父上は改めて2人と向き合った。
「……雄英は、こんな事で翳りはしないと私は思っています。
未来の雄英を見ているからこそ、息子を託します。」
その言葉を聞いて、俺と先生方が漸くほっと一息付けた。
分かっていてそう言うのだから父上も人が悪い。
先生方が頭を下げ、その後に父上と母上も頭を下げた。
こうして、俺の気持ちは家族に届き、先生達にもそれは伝わった。
本当に、何事も無く家庭訪問は無事終了したのだった。