第二十四話『ワン・フォー・オール』
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
その後、焦凍達と合流し俺と勝己は警察に一時保護される事となった。
勝己も俺も、静かに誘導へ従い皆と別れた。
事情聴取が終わり、その後家族が迎えに来るまで、俺達は警察署の会議室の様な場所で待機させられていた。
「………勝己。」
「んだよ。」
勝己に向き直ると、その瞳は複雑な気持ちを映していた。
逸らされてしまう前に、言葉を口にする。
「救けてくれて、感謝する。…ありがとう。」
はぁ?と目を丸くする勝己に、俺は少し笑った。
「敵に囲まれたあの状況で、俺だけだったら助からなかったかもしれない。
勝己がいたから、背中を任せられた。」
それを伝えると、ふいと顔を背けられる。
俺は少し残念に思いながらも、伝えられた事に満足していた。
「…………俺もだよ。」
ぽつり、と呟かれた言葉に俺は勝己を見つめる。
同時に、彼の耳と項が赤く染っているのが分かってしまった。
ー一… 一夜明け、世間は騒然としていた。
ヒーローやメディアもだが、警察上層部も課題が多い今回の事件。
平和の象徴……柱との引き換えに一旦の平穏は手に入れる事が出来たが、ただそれだけだ。
これから悪の意識は肥大していくことだろう。
このままでは、いけない。
改革をする必要がある。
今回の事件で、そう結論が出た。
自室でその新聞を読んでいると、隣の焦凍の家から轟音が響く。
俺は目を丸くさせながら窓を開けた。
何となく察しはついているのだが、凄い荒れようである。
ため息をついて窓を閉めた。
思い通りにならないことが多い世の中ではあるが、今回の神野事件は本当に犠牲が多かった。
新聞には、オール・フォー・ワンからの攻撃で深手を負ったベストジーニストというヒーローが長期の活動休止を宣言し、合宿でお世話になったプッシーキャッツのラグドール殿も体に変調をきたし活動を見合わせている。
オールマイト先生は、ヒーローとして引退を表明した。
これからどうなるのだろう、という不安が日本を取り囲んでいる。
物思いに耽ながら1階に降りると、机に雄英からの書類が来ていた。
1度開けた形跡がある事から、家族の誰かが受け取って確認したのだろう。
「………家庭訪問……全寮制……。」
書類には明日家庭訪問がある事が記載されており、全寮制への検討を伝えるものだった。
その夜家族が全員集まった。
欅を一枚板にした年季のある見事な座卓に、次々と夕餉が運ばれていく。
そこに座布団を並べて食卓を囲む。
いつもの光景だ。
…そう、いつもの夕餉の、家族との光景である。
豚の冷しゃぶをゴマだれに浸けながら、俺は考えを巡らせていた。
静かだが、家族の言いたいことが何となく伝わって来たからだ。
食事が終わり、お茶を飲みながら父上が口を開く。
「………俺は、雄英の方針については構わないと思っている。」
その言葉に、俺ではなく安土と姉上が声を上げた。
「兄さんが雄英にいる事で、これ以上危険な目に遭うのは許せません!」
「全寮制って……確かに目の届く範囲にいれば守りやすいかもしれないけど……。」
安土の憤りも、姉上の心配や疑念の気持ちも分かる。
だからこそ、母上は沈黙していた。
当の俺は、自分の手の中にある湯呑みを見つめている。
「大和。」
「はい。」
父上に呼ばれて、俺は目を合わせる。
父上は俺の方をじぃっと見て、俺の言葉を待っている。
周りを見れば、安土や姉上、母上も俺を見ていた。
「………俺は、今回も腑甲斐無い所を見せてしまいました。」
体育祭や職場体験…そして今回の神野事件…、俺は家族に心配を掛けてばかりである。
「まだまだ学ぶ事が多いです。
……その真意は、雄英でしか学べません。
我儘を言う様ですが、学校を変える気は無いです。」
正座して背筋を伸ばし、家族に向かって俺は深々と頭を下げる。
「どうか、俺の道を見守ってていただきたい。」
その言葉を聞いて、父上は満足そうに頷き母上はにこりと微笑む。
安土や姉上は、一拍置いた後に仕方が無いなといった表情をした。
「…精進するんだぞ、大和。」
「はい!」
俺はほっと一息を着き、湯のみの茶を飲み干す。
その後は父上と道場に向かってから、自室に戻って明日の家庭訪問に向けて就寝したのだった。