第二十三話『全ては1人の為に』
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今、どう動くのが最善か。
ヒーローとしてだけではないが、この思考は幾つもの苦難に対して考えられる事だろう。
空を舞う俺達は、軌道修正をしようと天哉が勝己に協力を求めたが、何故か張り合い始めた。
「……どこにでも…っ、現れやがる!!」
「マジかよ…全く!」
下の方では一喜一憂が繰り広げられていた。
その中で
しかし、それは突如現れた壁…Mt.レディ殿によって阻まれる。
「Mt.レディ!」
「救出…優先。行って…!バカガキ……。」
最後の力を振り絞ったMt.レディ殿が倒れ伏せた所を、もう1回打ち上げようとしていた敵達が、一瞬にして気絶する。
「…ああ!!!グラントリノ!!」
何やらグラントリノ殿は怒りながらオールマイト先生を指差し、それにオールマイト先生も苦笑いを返していた。
しかし、これで先生も心置き無く闘えるだろう。
反対側に着地した俺達は、安全な所へ速やかに退却する。
一方で戦場の方では、オール・フォー・ワンがマグネの個性を強制発動させて、
「待て…ダメだ、先生!
俺、まだ ーーー 」
「弔。
君は、戦いを続けろ。」
靄に呑まれた死柄木は、それ以上言葉を送る事が出来なかった。
それを見届けたオール・フォー・ワンは、オールマイト先生との死闘を再開する。
数多ある個性を使い、オールマイト先生を翻弄した。
死柄木を助太刀しに来た、といったオール・フォー・ワンだが、オールマイト先生に対する憎悪は深い。
嘗ての仲間を次々と潰し回り、平和の象徴と謳われた…その偉業を、経緯を呪っていた。
「心おきなく、戦わせないよ。
ヒーローは
守るものが。」
「黙れ。
貴様はそうやって、人を弄ぶ!」
オール・フォー・ワンの腕を握り潰し、オールマイト先生は怒りを露わにする。
「壊し、奪い!
つけ入り、支配する!
日々暮す方々を!理不尽が嘲り嗤う!
私はそれが!許せない!!」
拳を叩き込んだそのマスクは割れ、同時にオールマイト先生の姿も変わって来ていた。
「いやに感情的じゃないか、オールマイト。
同じような台詞を、前にも聞いたな。」
瓦礫を背に、割れたマスクからは常人にはある筈の目等が見当たらない肉塊の様な貌が、そこにはあった。
「ワン・フォー・オール先代後継者。
志村菜奈から。」
その名を口にした瞬間、全ての時が止まった。
一方で、脱出した俺達は大通りに出た。
混乱している駅前は、大きな液晶にその戦いを中継で映している。
出久は焦凍に連絡をとっているようだ。
少しだけ出久に詫びを入れると、電話を代わって貰えた。
「……焦凍。」
『大和!!……無事か…!』
「あぁ。……、心配を掛けて、すまなかった。」
その言葉を伝えると、電話口で息を飲む様な音が聞こえた。
『……俺も、守れなかった。わりぃ…!』
「焦凍だけの所為ではない。
………まだ、己が未熟だった。
…救けてくれて、感謝する。」
『…っ、大和が無事で……本当に、良かった…!』
心の底から安堵した声が、俺の耳に届く。
また何処かで合流しような、とだけ伝え俺は出久に電話を返した。
空には報道陣のヘリコプターが数機飛び、事件現場へ向かっていた。
それを見上げ、俺はふと思う。
オールマイト先生に、いつもの笑顔が無かった事を。
いつぞやの雄英襲撃事件の時でも、怒りの表情をしていたのは最初だけだった。
相手の強さは、対面していたから分かる。
故に油断出来ないのも頷ける。
しかし、最後空からちらりと見たオールマイト先生は、いつも以上に疲弊の色が強かった。
………あの強敵に、勝てるだろうか。
俺が行った所で足でまといにしかならないのは分かり切っていたが、少しだけ不安が過ぎる。
市民達だけではない、日本中の…下手したら世界中の人間が、液晶に釘付けとなる。
その殆どは、オールマイト先生の勝利を確信している顔だった。
だが、横にいた出久だけは…俺と同じ、不安を抱いた表情をしていた。