第二十三話『全ては1人の為に』
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「ずいぶん遅かったじゃないか。」
平和の象徴…それと対面する男が、衝撃波の中心に居ながら涼しげに軽口を叩く。
周りの者は、俺も含めて吹き飛び地面に転がる始末なのに、そこにいる2人だけはピンピンしていた。
「バーからここまで5km余り…。
僕が脳無を
衰えたね、オールマイト。」
「貴様こそ、何だその工場地帯のようなマスクは!?
だいぶ無理してるんじゃあないか!?」
オールマイト先生の攻撃を素手で受止めた男を見て、俺は確信する。
奴こそ、死柄木が先生と呼び慕っていた
「5年前と同じ過ちは犯さん。
オール・フォー・ワン。
爆豪少年と西椋少年を取り返す!
そして貴様は今度こそ刑務所にブチ込む!
貴様の操る
拳を握りしめ、オールマイト先生が飛び出す。
オール・フォー・ワンと呼ばれた男は、片手を上げたと思ったら一瞬でその腕が変形した。
オールマイト先生は、その攻撃を真正面から受ける。
幾つものビルと衝突し、破壊し、見事に吹き飛ばされた。
あれが、
全てにおいて不明瞭で不適確なのだ。
個性の組み合わせが云々言っていたが、まるで他人の個性を奪い、使う事の出来る言い方だ。
物間殿のコピーとも違う。
まるで、実験や工作を楽しむ学者や子供のように、奴は力を奮っていた。
「オールマイトォ!!!」
勝己が吠えるが、それに対して奴はあの程度じゃ死なないと豪語した。
「ここは逃げろ弔。
その子達を連れて。
黒霧、皆を逃がすんだ。」
男の指先が変化する。
その黒い爪の様なものは、気絶している黒霧の腹部に刺さり何やら弄り始めた。
オール・フォー・ワンの行動を、敵の1人…マグネと呼ばれていた男?が止める。
確かに、奴も黒い泥を出して転移することが出来るが、その個性はまだ限定的らしい。
故に、黒霧の中を弄り個性を強制発動させた。
ぶわっと広がった黒い靄を思わず眺める。
「さあ行け。」
「先生は… !」
死柄木がオール・フォー・ワンを呼び止めるが、急速に戻って来たオールマイト先生に対応する為戦場へ戻った。
「常に考えろ弔。
君はまだまだ成長出来るんだ。」
激しくぶつかり合い始めた両者を見遣り、俺は勝己の近くへ行く。
勝己も俺の視線に気付いたようだ。
「行こう死柄木!
あのパイプ仮面が、オールマイトをくい止めてくれてる間に!」
敵連合も撤退の用意を始めていた。
気を失っている荼毘はコンプレスの個性により小さな硝子玉に収納され、他の敵達は此方にゆらりと体を向けた。
「
「めんっ…ドクセー。」
俺は静かに鞘から愛刀抜き、構える。
勝己の顔には笑みがあったが、頬を流れる冷や汗を俺は見逃さなかった。
オールマイト先生は、俺と勝己が気になっているが助けには来れなさそうだ。
寧ろ、俺達が気になって闘い辛そうだった。
……此処は、或る意味正念場となるだろう。
トガヒミコが短刀を振り回しているのを愛刀でいなし、トゥワイスが繰り出した紐のようなものを斬る。
刃物を持っている蜥蜴の敵やトガヒミコは、率先して俺が相手しよう。
纏めて飛び掛ってきた敵2人を、刀の峰でそれぞれの胴に叩き込み押し返すが、大したダメージにはなっていなかった。
その間後ろを任せていた勝己は、コンプレスの相手をしている。
しかし、6対2のこの状況だ。
相手側も強引に此方を連れ去ろうとしている。
動きがアジトの時と比べ物にならない。
何とかオール・フォー・ワンの猛威を掻い潜り、此方へ向かおうとしていたオールマイト先生は、奴の出した黒い爪に無理矢理引き戻される。
危機的な状況は変わること無く、只一方で壁の向こうにいた生徒達は考えを巡らせていた。
生徒達が唯一見出した活路。
その鍵は1人の少年が握っていたのだ。
俺と勝己が、2歩以上敵の間合いから外れたその瞬間。
何処からか壁が壊れる音と、何かのエンジン音が上空から聞こえた。
思わずこの場にいた全員が空を見上げる。
其処には、この場にいない筈の…出久や天哉…切島殿が空を舞っていた。
そして、勝己に手を伸ばされる。
その手は幼馴染の出久でも、委員長の天哉でもなく。
入学してから勝己と対等に関係を築いていた、切島殿の手だった。
「来い!!」
その言葉を聞いた俺は、個性を足に集中させ跳躍し、勝己は爆破を利用してその手を目指した。
「…バカかよ。」
「助太刀、感謝する。」
届くかギリギリだったが、俺も切島殿の腕辺りに何とか捕まる事が出来た。
2人の重みが加わったが、ぐらつく事は無く、俺達はそのまま3人に救けられたのだった。