第二十三話『全ては1人の為に』
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依然バーのアジトでは
オールマイトが死柄木を掴もうとするも、同じように呑まれることはなく、そこには黒い泥だけ残った。
空間に道を開くワープではなく、対象のみを転送するものの個性。
シンリンカムイは自分の手落ちと謝罪を口にしたが、それは跳ね除けられた。
脳無に群がられたオールマイトを心配するグラントリノだったが、それはオールマイトの大胆な攻撃により杞憂に終わる。
外で待機していたエンデヴァーは脳無を焼きながら悪態をつく。
この場はエンデヴァーに任せ、オールマイトはもう1つの現場…廃倉庫へ向かう事となった。
そして、件の廃倉庫はとある男の一撃で一部は更地になっており、傷付き蹲るプロヒーロー達がいた。
乾いた拍手が絶望を彩る。
「さすがNO.4!!ベストジーニスト!!
僕は消し飛ばしたつもりだったんだ!!
皆の衣服を操り瞬時に端へ寄せた!
判断力・技術…並の神経じゃない!」
更地の中央で転がっているベストジーニストは、以前から噂されていたブレーンの存在を思い出す。
オールマイトに匹敵する強さ、そのくせ狡猾で用心深い…自分よりも1枚も2枚も上手な相手に対して、ベストジーニストは怯むこと無く個性を使い上体を起き上げる。
……だが、現実は無情であった。
「相当な練習量と実務経験故の”強さ”だ。
君のは…いらないな。
弔とは、性の合わない”個性”だ。」
何をどうしたのか、指先一本でベストジーニストの腹に一撃を与えオール・フォー・ワンは静かに佇んでいた。
その少し先にある壁の影には、恐怖で体が動かない生徒達が潜んでいるとも知らずに。
「ゲッホ!!くっせぇぇ…。
んっじゃこりゃあ!!」
「ごほっ、けほっ……。
此処は……一体……。」
突如黒い泥の中から現れた爆豪と大和の存在に、先程まで固まっていた生徒達の思考と体が解れる。
「悪いね、爆豪くん。西椋くん。」
「あ!!?」
「………、もしかして…その声は…。」
大和が言いかけた所で、他の所から幾重もの黒い泥が現れる。
そこから出てきたのは、先程囚われた筈の
俯く死柄木に、先生と呼ばれていたオール・フォー・ワンが声をかける。
「また、失敗したね弔。
でも決してめげてはいけないよ。
またやり直せばいい。
こうして仲間も取り返した。」
優しく論するその口調は、正しく教師のようなものだ。
しかし、何かが徹底的にズレている違和感もある。
「この子達もね…。
君が「大切なコマ」だと考え判断したからだ。
いくらでもやり直せ。
その為に僕がいるんだよ。
全ては、君の為にある。」
洗脳のような…催眠のような…オール・フォー・ワンの言葉一つ一つは、死柄木を肯定するものばかりだ。
先程まで追い詰められていた筈の死柄木も、落ち着きを取り戻している。
現状を理解し切れない大和も、流石に放棄していた思考を再回転させ、愛刀に個性を宿らせる。
壁の影にいた緑谷達も、どうにか体を動かし救出しようとしたが、その行動は飯田と八百万に止められた。
仲間を思っての救出行動だ。
だからこそ、必死にクラスメイトが止めたのだ。
無謀と勇気を履き違えない為に。
夜空に一筋の飛行機雲が現れる。
否、それはミサイルのように飛んできたオールマイトだ。
両の拳をお互いに受け止め、2人は睨み合った。
「全て返してもらうぞ、オール・フォー・ワン!!」
「また僕を殺すか、オールマイト。」
両者の揺るぎない一戦…とうとうそれは、始まろうとしていた。