第二十二話『GEKITOTSU』
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俺達の知らない所で、出久達が廃倉庫の中を確認して脳無の存在を見つけた時。
俺達は、敵に囲まれながらも頭の中で策を練っていた。
『先生』という存在。
つまり死柄木を裏で操る存在がいるという事だ。
「黒霧、コンプレス。
また眠らせてしまっておけ。」
死柄木の言葉に、コンプレスが一歩俺達に近付いて来た。
「ここまで人の話聞かねーとは…逆に感心するぜ。」
「聞いて欲しけりゃ土下座して死ね!」
勝己の口は相変わらず悪態を付いているが、その様子は黒霧を中心に警戒しているものだった。
ーー コンコンッ
「どーもォ、ピザーラ神野店ですー。」
その声に気を取られた瞬間、バーの壁が轟音と共に破壊される。
同時に飛び込んで来たのは、平和の象徴…オールマイト先生だった。
一瞬場は騒然とするも、死柄木が黒霧を呼ぶ。
しかし、それよりも速くとあるヒーローが敵を捕らえた。
あのヒーローは確か……この間出久に教えてもらった、シンリンカムイ殿だったか…。
木を見て荼毘が燃やそうとすると、黄色い戦闘服を身に纏ったグラントリノ殿が鋭い蹴りを入れる。
丁度好い加減で入ったその蹴りは、荼毘の意識を落とす事に成功した。
それぞれの働きをオールマイト先生が讃える。
「もう逃げられんぞ
我々が、来た!」
星明りを背に、ヒーロー達はこの場を制圧した。
「攻勢時ほど守りが疎かになるものだ…。」
後ろから聞こえてきた聞き覚えのある声に、俺は思わず振り返る。
扉の隙間からすぅー…と静かに姿を現したのは、職場体験でお世話になったエッジショット殿だった。
「ピザーラ神野店は、俺たちだけじゃない。
外はあのエンデヴァーをはじめ、手練のヒーローと警察が包囲してる。」
「エッジショット殿!」
俺が声を掛けると、エッジショット殿は先程の敵へ向けていた鋭い目付きを、ふっと和らげた。
「……無事な様で何よりだ。怖かっただろう。」
「有難う御座います。大丈夫です。」
勝己は勝己でオールマイト先生に保護され、苦虫を噛み潰したような顔をしていた。
「せっかく色々こねくり回してたのに………何そっちから来てくれてんだよラスボス…。」
死柄木が怒りに震えながら、仕方が無いといい、黒霧に持って来れるだけ持って来いと命令する。
この言い分からすると、脳無だろう。
しかし、その脳無はやって来なかった。
珍しく黒霧が焦った様な声色を出す。
曰く、所定の位置にある筈の脳無が無いらしい。
それに対し、オールマイト先生は勝己の肩を掴みながら死柄木を煽った。
「
少年らの魂を、警察のたゆまぬ捜査を。
そして…我々の怒りを!!
おいたが過ぎたな、ここで終わりだ死柄木弔!!」
正義の眼は、敵達に畏怖を植え付ける。
敵である蜥蜴男はその眼光を受け、とっくに戦意を喪失しているが、死柄木が怯む事は無い。
これからが始まりであると、巫山戯るなと燻るその怒りに任せながら、黒霧を呼ぼうとした。
しかし、黒霧は短く呻いた後がくりと項垂れてしまう。
俺の近くに居たはずのエッジショット殿が、黒霧の向こう側に居た。
「忍法 千枚通し!
この男は最も厄介…眠っててもらう。」
エッジショット殿の個性である紙肢を使い、黒霧を気絶させたのだ。
そして、グラントリノ殿によって敵の本名が述べられていく。
警察が少ない情報と時間を駆使して素性をつき止めたのた。
もう、敵連合に逃げ場などない。
それを悟った死柄木の怒りが、焦りが、長い沈黙としてこの場に表された。
「ふざけるな。こんな…こんなァ…、こんな…あっけなく…。
ふざけるな…失せろ…、……消えろ…。」
狼狽する死柄木に、オールマイト先生は問い詰めた。
「
「おまえが!!嫌いだ!!」
死柄木が怒りを爆発させた瞬間、黒い泥の様なものから2体の脳無が現れる。
俺達だけではなく、死柄木自身も驚いていた。
何も無いところから、いきなり現れる。
しかし、黒霧はエッジショット殿が気絶させたはずだ。
勢いが止まることなく、別の場所からどんどん現れる。
「…っゔ!?」
「お゛!!?」
俺と勝己の口から、同じ様な黒い泥が溢れ出る。
次から次へと流れ出るそれに、俺達は体が飲まれていくのを感じた。
「!!!
西椋少年!!爆豪少年!!No!」
バシャ、という音と共に俺達はその場から姿を消した。
外で包囲していたヒーローや警察達も、突然現れた脳無の対応に追われ、一体どうなっているのかと無線を飛ばすも、その相手先であるベストジーニストは応答しなかった。
……否、応答出来なかったのだ。
「せっかく弔が自身で考え、自身で導き始めたんだ。
出来れば、邪魔はよして欲しかったな。」
1秒にも満たない、しかしその男によってその瞬間廃倉庫は辺りを巻き込み更地と化した。
顔全体を覆うその重厚な機械を被った男は、その更地に立っていた。
オール・フォー・ワン。
「さて…やるか。」
オールマイトを追い込み、死柄木を裏で導いた『先生』と呼ばれ親しまれたその男は、この場にいた全員に”絶望”を与えたのだった。