第二十二話『GEKITOTSU』
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場面は変わり、多くのレンズが一点に集中している。
広々とした会場では、報道陣が冷え切った目で会見を開いた張本人達を見つめる。
一人の記者が立ち上がり、質問を投げかけた。
プロヒーローであり教師の一人であるイレイザーヘッドに、合宿での戦闘許可を出した事への質問だ。
それに対してイレイザーヘッドは、教師が状況を把握出来なかった故の『最悪の事態』を避ける為に指示をしたと答える。
「最悪の事態とは?
26名もの被害者と2名の拉致は、最悪と言えませんか?」
「…………。
私があの場で想定した”最悪”とは、生徒が成す術なく殺害されることでした。」
その返答は、正論故に記者がつまらなさそうな顔をする。
イレイザーヘッドの返答後、根津校長がそれに続いた。
被害の大半を占めたガス攻撃、敵の”個性”から催眠ガスの類だと判明しており、B組の拳藤と鉄哲による迅速な対応で全員の命が救われた。
また、生徒らのメンタルケアも並行して行っているが深刻な心的外傷などは見受けられないと語った。
「不幸中の幸いだとでも?」
「未来を侵されることが”最悪”だと考えております。」
記者はその後、爆豪のことを引き合いに出した。
体育祭優勝、中学時代のヘドロ事件では強力な
経歴こそタフなヒーロー性を感じるが、その反面…決勝で見せた粗暴さや、表彰式に至るまでの態度などは、精神面の不安定さが読み取れる。
そこに目をつけた上での拉致だとしたら。
言葉巧みに爆豪を勾引かし、悪の道に染まってしまったら。
そして、その話題は大和にも移る。
「西椋くんは爆豪くんとは真逆で、正義感が強く素晴らしいカリスマ性を秘めています。
しかし、体育祭で見せた詰めの甘さ。
また、彼の仲間を思いやる気持ちを逆手に取られるかもしれません。
例えば、爆豪くんを人質に取られ脅される等があった場合……。
あの若さであそこまで高い戦闘能力は、
記者の男は臆せず、仮にもその子供を担当していた教師を前にこう言った。
「未来があると言い切れる根拠を、お聞かせ下さい。」
攻撃的な発言は、ストレスを掛けてボロを出す為の罠である。
ブラドキングはそれを真っ向から受けたイレイザーヘッドを横目に、肝を冷やしていた。
イレイザーヘッドが立ち上がる。
悪態の1つでも飛び出すかと思えば、イレイザーはメディアに向かって深々と頭を下げたのだ。
「行動については、私の不徳の致すところです。」
そして、そのままの姿勢で言葉は続く。
体育祭での爆豪は、彼自身の思い描く”理想の強さ”が起因している。
誰よりも”トップヒーロー”を追い求め…もがいている。
その様子を”隙”と捉えたのなら、敵は浅はかであるとイレイザーヘッドは明言した。
「そして、西椋ですが…彼の性格はヒーローの本質にほぼ近いでしょう。
だからこそ、高潔で清麗なその姿は人を惹きつける。
ですが、西椋はそれだけではない。
しっかりと自分の最善を判断する事が出来ると私は考えています。」
その根拠をと質問した筈が、最終的な着地が感情の問題となっている事に報道陣が困惑する。
具体策があるのかと問い詰める記者に、根津校長は力強い眼差しで答えた。
「ーー 我々も手を拱いてるワケではありません。
現在、警察と共に調査を進めております。
我が校の生徒は、必ず取り戻します。」
液晶越しに聞いたその言葉に、勝己の表情に生意気な笑みが浮かんだ。
「ハッ、言ってくれるな雄英も先生も…。
そういうこったクソカス連合!」
きっと勝己の事だ。
自分の立場を利用して戦闘を仕掛け、何人か倒したら逃げようという魂胆だろう。
それを裏付ける様に、俺の方を振り向き悪どい笑みを零した。
「言っとくが、俺たちゃァまだ戦闘許可解けてねえぞ!」
勝己が放った言葉に、
命が惜しくないと思わせるその言葉は、敵にとっては芳しくないものだ。
「したくねーモンは嘘でもしねんだよ俺ァ。
こんな辛気くせーとこ、長居する気もねえ。」
死柄木の方を見れば、勝己の爆撃で飛ばされた手の飾りを見つめて固まっている。
俺はその様子が少しだけ不気味に感じた。
黒霧が何かを察したのか、死柄木の元へ寄ろうとした瞬間、奴の眼光が鋭く俺達を射抜いた。
「手を出すなよ……お前ら。
こいつらは…大切なコマだ。」
以前、USJでの襲撃の際は取り乱していた筈の死柄木は、やけに冷静であり落ちていた手の飾りを元の位置…顔面に戻した。
「出来れば、少し耳を傾けて欲しかったな…。
君とは、分かり合えると思ってた…。
大和は…手を貸してくれると思ってた…。」
「ねぇわ。」
勝己はそう言って死柄木の言葉を拒否する。
死柄木の発言に、俺も否定を込めて愛刀の柄を握った。
「仕方がない。ヒーロー達も調査を進めていると言っていた…。
悠長に説得してられない。
先生、力を貸せ。」
『………良い判断だよ。死柄木弔。』
液晶越しのその愉悦混じりの言葉は、死柄木を褒め俺達に疑問を抱かせたのだった。
その一方では、焦凍や出久達がとある廃倉庫へ辿り着き作戦を練る。
プロヒーロー達は、警察と協力しアジトへ包囲網を敷こうとしていた。
俺達の知らない所で、事は刻一刻と進んでいく。
この局面を……圧倒的不利から、流れを覆す。
共に攫われたのが不幸中の幸いだった。
彼なら………背中を任せられる。
俺は個性を発動し、居合の構えを取った。