第二十一話『敗け』
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翌日、夏休み中にも関わらず報道陣が門の前に待機している。
対する雄英高校の教師陣は会議に明け暮れていた。
一歩も二歩も遅れてしまっていた。
雄英史上、最大の失態と言えるだろう。
その中で、プレゼントマイクは今まで感じていたことを口にする。
『内通者』
今回の合宿は当日まで場所を明かさなかった。
なのに、襲撃を受けてしまった。
何処から情報が漏れたのか?
洗いざらい調べるべきであるという。
しかし、それと同時に自身は潔白である、と言いきれない現状では特定が難しい。
この議題は平行線である。
そんな中、根津校長は生徒の安全保障の為、以前から思案していた事を発表する事となる。
『でーんーわーがーー来た!』
しかし校長が発表する前に、オールマイトは1本の電話を受けた。
そそくさと緊迫した会議室を出て、自責の念に駆られながらもオールマイトがその電話を取ると、相手は塚内刑事だった。
『
今回の事件の調書と、2週間程前に行った聞き込み調査の目撃情報と合致したのだ。
裏が取れ次第、警察はすぐに現場に向かうらしい。
『今回の救出・掃討作戦、君の力も貸してくれ!』
先程まで丸くなっていたオールマイの背中が、グググ、と力強くなっていく。
完全体になったオールマイトは、
一方で、場所は合宿近くの病院に移る。
2日間気絶と悶絶を繰り返し高熱に魘されながらも、どうにか意識を取り戻した緑谷の病室だ。
サイドテーブルには、皿に入れられた切った果物と母の字でメッセージが添えられていた。
心からの心配が、ありありと伝わるものだった。
それを、緑谷自身も感じ取る。
洸太の安否も気になりながら、天井を見上げる。
そんな時、病室のドアが開いた。
「あー緑谷!!目ぇ覚めてんじゃん。」
現れたのは上鳴、だけかと思えば1Aの生徒ほとんどが病室に入って来た。
「テレビ見たか!?
学校いまマスコミやべーぞ。」
「春の時の比じゃねー。」
「メロンあるぞ。
みんなで買ったんだ!」
ゾロゾロと病室に入り近況を報告する彼ら。
常闇は迷惑をかけた、と謝罪するも緑谷は自分の方こそ…とおざなりな返事になった。
「A組皆で来てくれたの?」
その言葉に、飯田が冷静に返答する。
曰く耳郎と葉隠は当時受けたの
そして八百万も敵に追われている際に頭を負傷し、入院中であり昨日意識が戻ったらしい。
現在、この病室に来ているのはその3人を除いた…15名だと。
「爆豪も…大和も、いねえからな。」
「ちょっ、轟…」
轟の目元は、少しばかり赤くなっている。
ここ数日寝られなかったのだろうか…或いは、届かなかった事への後悔の涙か。
本人が言わない限りは分からないだろう。
その言葉と轟の表情に、緑谷はじわりじわりと置かれている現実を理解していく。
師であるオールマイトの言葉を思い出す。
『手の届かない場所には救けに行けない』と。
だからこそ、手の届く範囲は必ず救け出すのだと。
「僕は…手の届く場所にいた。
必ず救けなきゃいけなかった…!
僕の”個性”は…その為の”個性”…なんだ。
相澤先生の言った通りになった…。
体……動かなかった…。」
見上げていた天井が歪む。
視界いっぱいの涙の膜は、滴となってボロボロと流れていった。
それ程までに、緑谷は後悔していた。
「じゃあ今度は救けよう。」
そうサラリと言った切島に、生徒達は声を上げ目を丸くした。
「実は俺と…轟さ。
昨日も来ててよォ…。」
昨日皆の見舞いに来ていた2人が偶然、目を覚ました八百万と刑事、そしてオールマイトが話している所を目撃したらしい。
発信機を
八百万を高く評価するオールマイトに、それでも『こんな事でしか友を救けられない』と悔しそうな表情をする八百万がそこにはいた。
それを見て聞いてきた切島の話に、飯田がまさかという表情をする。
受信デバイスをもう1つ八百万に作ってもらい、自分達がその場に向かおうとしている事に気付いたからだ。
そして、その直後飯田の脳裏には、保須事件で迷惑を掛けたヒーロー、マニュアルが思い起こされる。
「オールマイトの仰る通りだ。
プロに任せるべき案件だ!
生徒の出ていい舞台ではないんだ馬鹿者!!」
珍しく、飯田は声を荒らげる。
その声と表情に、近くにいた蛙吹と青山はビクリと肩を跳ねさせた。