第二十一話『敗け』
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継ぎ接ぎの男は手を翳し、蒼い炎を繰り出した。
轟は間一髪で避けたが、障子や緑谷は腕を焼かれ、思わず声を上げる。
その場に居たはずの仮面の男は、地面に丸い空洞と硝子玉を残し消えていた。
きっと、個性によるものだろう。
「死柄木の殺せリストにあった顔だ!
そこの地味ボロ君とおまえ!
なかったけどな!」
メジャーのような物を出しながらそう言った覆面の男は、轟の繰り出した氷結によって一旦退かれる。
しかし、緑谷の方は先程遭遇した女子高校生に組み敷かれそうになり、ナイフを向けられていた。
「トガです、出久くん!
さっき思ったんですけど、もっと血出たほうがもっとカッコイイよ、出久くん!!」
「はあ!!?」
その状況を障子が割って入り、事なきを得るが、先程の丸い空洞…硝子玉から仮面の男が現れる。
「いってて…とんで追ってくるとは!
発想がトんでる。」
継ぎ接ぎの男と合流した仮面の男は、目的の物を取り出そうとポケットを探るが、それが見当たらない。
「二人とも逃げるぞ!!」
障子が緑谷や轟に声を掛ける。
その声には確信めいたものがあった。
「
”個性”はわからんが、さっきおまえが散々見せびらかした ーー…、
右ポケットに入ってた
エンターテイナー。」
その拳に握られていたのは、先程の硝子玉。
着地した時の短時間で、障子は相手の懐を探ったのだ。
「ーー ホホウ!あの短時間でよく…!
さすが6本腕!!まさぐり上手め!」
轟はその言葉を聞き、障子と緑谷の元へ走る。
奪い返そうとした継ぎ接ぎの男が、何故か仮面の男に止められた。
それと同時に、草むらから改造された脳無と、黒い靄が男子3人の前に現れる。
「合図から5分経ちました。
行きますよ、荼毘。」
トガと名乗った女子高校生と覆面の男は、すぐ様ワープに乗り込む。
しかし、荼毘と呼ばれた継ぎ接ぎの男は目的を達成していない事に少し急いていた。
「ああ…アレはどうやら走り出す程嬉しかったみたいなんで、プレゼントしよう。
悪い癖だよ。マジックの基本でね。
モノを見せびらかす時ってのは…………、
仮面を外したその男が、口に含んでいたものを見せつける。
そこには3つの硝子玉があった。
それぞれ、常闇と爆豪…そして大和が透けて見えている。
同時に、障子が持っていた硝子玉に掛かっていた個性が解け、中からは氷が飛び出した。
「氷結攻撃の際に「ダミー」を
右手に持ってたモンが右ポケットに入ってんの発見したらそりゃー、嬉しくて走り出すさ。」
「くっそ!!!」
再び駆け出そうとした緑谷だが、仮面の男の半分以上は既にワープの中。
お後がよろしいようで…と会釈して仮面の男が帰ろうとしたその時、一筋のレーザーが奴の仮面を割る。
その衝撃で口に入れていた硝子玉3つが、宙を舞った。
この期を逃すものかと走り出す3人。
だが、緑谷は痛みで一瞬初動が遅れた。
障子がその1つを掴み、轟が2つを掴もうとした時、横から手が伸びる。
「哀しいなあ、轟 焦凍。」
その横槍をいれた手の主…荼毘は、2つのうち1つを仮面の男に渡し、確認の為解除を要求する。
「っだよ今のレーザー…俺のショウが台無しだ!」
パチン、と鳴らされた指に反応し個性が解かれる。
障子が握った方には常闇が、仮面の男に抱き抱れているのは大和。
そして、荼毘に首根っこを掴まれる形で爆豪がそこにはいた。
「問題 なし。」
「かっちゃん!!大和君!!!」
大和は未だ、意識が落ちており仮面の男にそのままワープの向こうへと運ばれてしまう。
「大和!!!」
轟が叫ぶが、その声は届かなかった。
「来んな、デク。」
そう遺した爆豪も、ワープの中へと消えていってしまった。
絶望が、辺りを支配する。
「あ…ーーっ…ああ゛!!!」
卵たちは嗚咽を漏らす事しか出来ない。
この防衛戦は完全にヒーロー側の敗北となってしまった。
ブラドキングの通報により、敵が去った15分後、救急や消防が到着する。
被害状況は生徒41名の内、敵のガスによって意識不明の重体15名。
重・軽傷者11名。
無傷で済んだのは13名。
そして…行方不明が2名。
また、プロヒーロー6名のうち1名は頭を強く打たれ重体。
1名が大量の血痕を残し行方不明となっていた。
一方、
彼等を残し…他の敵は跡形もなく姿を消した。
楽しみにしていた林間合宿は、最悪の結果で幕を閉じたのだ。