第二十話『狼煙』
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森を歩いていた緑谷達は、そんな大和の変化に気付かぬまま前進していく。
暫くすると、A組の麗日と蛙吹が謎の女子高校生と交戦している所に出会す。
麗日の血を採取する事に夢中だった女子高校生は、その後来た人数差を見て撤退を判断し、すぐさま姿を消してしまった。
緑谷達はお互いの無事を確認して、一旦は安堵する。
「とりあえず無事でよかった…。
そうだ、一緒に来て!
僕ら今、かっちゃんと大和君を護衛しつつ施設に向かってるんだ。」
「……………ん?」
「爆豪ちゃんと西椋ちゃんを護衛?」
困惑する女子2人に男子陣は戸惑うが、その後に続いた言葉は更に混乱を招いた。
「その2人は、どこにいるの?」
「え?」
何言ってるんだ、と言いながら振り向くと…そこには只、暗い獣道が続いているだけだった。
「彼らなら、俺のマジックで
木の上に、仮面とシルクハットが特徴的な男が、分厚い手袋の中でコロコロと硝子玉の様なものを転がしている。
長いコートとステッキ、一見してジェントルマンな雰囲気を感じるが、纏うものは一般人のそれではなかった。
「こいつぁ
もっと輝ける舞台へ俺たちが連れてくよ。」
硝子玉は3つ。
それらを見せびらかす様にしていた男に、緑谷は目を血ばらせながら叫んだ。
「ーーー!?、っ返せ!!」
吠えられても尚、男は何処吹く風な様子であり更に挑発を繰り返した。
「返せ?妙な話だぜ。
爆豪くんや西椋くんは誰のモノでもねえ。
彼等は彼自身のモノだぞ!!
エゴイストめ!!」
「返せよ!!」
その様子を見ていた轟が氷結を展開し、男が止まり木にしていた木を凍らせる。
しかし、男は難無くそれを避けた。
「我々はただ、凝り固まってしまった価値観に対し「それだけじゃないよ」と道を示したいだけだ。
今の子らは、価値観に道を選ばされている。」
その時、障子は2人の他に常闇もいない事に気付く。
わざわざ話し掛けて来た事に、舐められていると感じた轟は苛立ち始めた。
「元々エンターテイナーでね、悪い癖さ。
常闇くんはアドリブで貰っちゃったよ。」
曰く、全身拘束具だらけの男はムーンフィッシュ「歯刃」と呼ばれた男。
死刑判決を控訴棄却されるような生粋の殺人鬼であり、それを一方的に蹂躙した暴力性に敵側にと判断したそうだ。
その言葉に、緑谷の頭に血が上る。
つい口調が荒くなり、障子がそれを止めていた。
背負っていたB組の生徒を麗日に預け、轟は氷結を繰り出すも避けられる。
そんな中、痛みを堪えながらも緑谷が提案する。
無重力にした男子陣を蛙吹の舌で投げ飛ばすのだ。
怪我の具合を見た女子陣は止めるが、緑谷の覚悟を決めた表情に同じく腹を括った。
必ず救けてね、という言葉と共に投げ飛ばされる。
そのあまりのスピードに、普段は寡黙な障子が思わず声を上げた。
敵側は、指定していた集合場所に集まっていたが、その数はたったの3人。
他の者はまだかと、辺りを見渡していた継ぎ接ぎの男は、雄叫びの様な声を聞く。
ーーズドオンッ!!
大砲の様な音と同時に落ちて来た彼等に、潰される様な形で仮面の男は敵側と合流した。
「知ってるぜ、このガキ共!!誰だ!?」
生徒3人は自分等で出来る範囲の、最後の奪還チャンスが迫っていた。
一方で、時は少し遡る。
爆豪と大和が狙われているとテレパスをされた頃。
切島はブラドキングに詰め寄っていた。
「ダチが狙われてんだ、頼みます!
行かせて下さい!!」
「ダメだ!」
飯田も戦力に加わろうと、その言葉に加勢するもブラドキングは首を縦に降ることは無い。
そんな時、扉から物音と人影が現れる。
切島はイレイザーヘッドだと思い、その扉に近付こうとするも、ブラドキングの勘によってそれは阻まれる。
ーーゴォッ!!
蒼い炎が教室を焼き、扉は一瞬にして炭と化した。
先程イレイザーヘッドにやられた筈の敵が目の前に再び現れる。
生徒達は混乱するがブラドキングが継ぎ接ぎの男を即座に壁へ縫いつけ、操血で動きを封じる。
「こんなところにまで考え無しのガン攻めか。
随分舐めてくれる!」
生徒達はその早業に感嘆していたが、継ぎ接ぎの男はそれをどうも思っていない様子である。
「そりゃあ舐めるだろ。
思った通りの言動だ。
後手に回った時点で、おまえら負けてんだよ。」
継ぎ接ぎの男は続ける。
ヒーロー育成の最高峰”雄英”と、平和の象徴”オールマイト”。
ヒーロー社会に於いて最も信頼の高い2つが集まった。
こんな状態で、もし信頼が揺らぐような案件が重なれば……その揺らぎは社会全体に蔓延するはず。
「例えば ーー… 何度も襲撃を許す、杜撰な管理体制。
挙句に生徒を犯罪集団に奪われる弱さ。」
その言葉を聞いた切島や上鳴は、男に対し怒りを露わにする。
尚も男は煽ろうとするも、横から飛び蹴りをかましたイレイザーヘッドに止められた。
その後も先生は容赦無く攻撃を繰り返すと、男は泥に戻ってしまった。
「イレイザー、おまえ何してた!」
ブラドキングの言葉に、軽く謝罪するイレイザーヘッドは後ろに隠していた洸太を託す。
そのまま前線に戻り、生徒を保護する予定のようだ。
戻ろうとする先生に、切島と飯田は食い下がる。
しかし、生徒が狙いにある以上相澤先生も許可をしなかった。
「俺たちはとりあえず、全員無事でいることが勝利条件だ。」
燃え盛る森へ戻っていくイレイザーヘッドの背を見送りつつ、切島は悔しそうに歯を食いしばっていた。