第二十話『狼煙』
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敵と応戦しながらも、マンダレイ殿はテレパスで情報を伝えた。
しかし、出久の怪我を一目見て撤退を指示する。
俺に担がれている出久は、それに対して申し訳なさそうにしながらも、俺に別方向へ行くよう伝えて来た。
「すみません!まだ!もう一つ…伝えて下さい!
敵の狙い、少なくともその一つ ーー …かっちゃんと大和君が狙われている!
テレパスお願いします!
大和君、かっちゃん達と合流しよう!
向こうまで全速力でお願い…!!」
「勝己と…俺が!?」
取り敢えず、俺も頭が混乱して来たが勝己達の無事を確認する為、縮地の踏み込みを再開する。
マンダレイ殿が待ったを掛けようとするも、それより先に長髪の大柄の敵が俺達を止めようとして来た。
「手を出すなマグ姉!!」
それを止めたのは、もう一人の蜥蜴の様な敵であり、奴は仲間に対して刃物を投げて牽制した。
「ちょっと何やってんの!?
優先殺害リストにあった子よ!?」
「そりゃ死柄木個人の意思。」
「スピナー何しに来たのよあんた!」
俺はその仲間割れを背に、森を突き進んで行く。
気配の方向的に、此方で間違いない筈だ。
「あの二人はステインがお救いした人間!
つまり英雄を背負うに足る人物なのだ!!」
そう言った後、スピナーと呼ばれた敵は、此処ぞとばかりにマンダレイ殿の強烈な蹴りを御見舞された。
次いで、マンダレイ殿のテレパスが飛ぶ。
《敵の狙いの一つが判明ーー!!
生徒の「かっちゃん」!!
もしくは「カツキ」君!!
そして「大和」君!!
二人はなるべく戦闘を避けて!!
単独では動かないこと!!
わかった!?「かっちゃん」!!》
このテレパスで名指しされると、こうもむず痒くなるのか…。
というか、何故俺が狙われて……。
そう思った時、俺はショッピングモールでの死柄木を思い出した。
『今度は勧誘しに行くから。またな…西椋 大和。』
そうだ、死柄木はあの時そう言っていた。
つまり、これは俺と勝己が狙われている理由は、彼処側に引き入れる為?
この混乱はそれだけが目的では無い筈だが、兎に角俺は出久の分も足を動かす事にした。
銃声の様な音が聞こえる。
敵には銃を持った奴もいるのか…!
そう意識が散漫した瞬間、目の前に暗闇の歪んだ大きな手が現れた。
出久を庇おうとした時、凄まじい力で引き寄せられ背負った出久ごと何かに包まれる。
「障子殿…!!」「障子くん…!?」
消耗している様子の障子殿の腕に、血が滲んでいる。
一方で障子殿は出久を見て呆れ返っていた。
「その重傷…もはや動いていい体じゃないな…。
友を救けたい一心か。呆れた男だ…。」
「障子殿、出久を任せてもいいか?」
「構わん。」
襷掛けの紐を外し、俺は出久を障子殿に背負わせる。
障子殿の腕から出た俺は懐から手拭いを取り出し、障子殿の出血している腕を応急手当した。
その間に出久と障子殿で情報共有をしていた。
曰く、敵に奇襲された際に障子殿が庇い…その光景を見て、抑えていたものが噴き出してしまったのだ。
先程からの木々がなぎ倒される音の正体は、それだ。
「俺から…っ、離れろ…死ぬぞ!!」
「常闇くん!」「…常闇殿。」
昼間洞窟で手合わせしたものより、更に凶暴化した黒影に呑まれそうになっている常闇殿が、そこにはいた。
少し時を遡ると、肝試しをしていた常闇殿と障子殿は途中でマンダレイ殿のテレパスを受信。
敵襲来・交戦禁止を受け警戒態勢をとった。
その直後、背後から敵が現れた変幻自在の素早い刃で腕を斬られるも、草陰に身を隠したそうだ。
斬られた箇所は複製可能な部分だったらしい為、大事には至っていないが、常闇殿が動揺するには充分だったらしい。
「
少しでも動いたり音を出すと、無差別に攻撃を繰り出す化物と化したそれに、常闇殿は苦しんでいた。
「俺のことは…いい!ぐっ…!!
他と合流し…!他を救い出せ!!
静まれっ…
今起こっている火事や、明かりのある施設へ誘導すれば、静めることも出来るだろう。
障子殿は友を見捨てる事はせず、このまま黒影を引き付ける役を提案するが、それは余りにも危険だ。
しかし、勝己か常闇殿かの二者択一の選択肢で出久が選んだものは、一番難しく危険を伴うものであった。
『どちらか選ばなきゃいけないなら、僕はどっちも救けたい!』
出久の答えを聞き、俺は即座に気配を探る。
元々の目的として向かっていた方向だ。
丁度延長線上に見つける事が出来た。
「行くぞ、出久!障子殿!」
俺は縮地で地面を思いっ切り蹴る。
それに置いてかれぬよう、障子殿も走った。
その音に、
時々自身も囮になりつつ、複製腕で音を出している障子殿の方を確認しながら、俺はとある所へと向かった。
暫くして、気温が少し下がったのを感じる。
そして視界の先には、大きな氷の壁があった。
拓けた所に出る。
そこには敵と思わしき全身拘束具だらけの男、そして勝己と焦凍がいた。
「爆豪!轟!
どちらか頼む ーー…光を!!!」
敵が己の歯を刃にして襲ってくる。
しかし、それを上から
「かっちゃん!」「勝己!」
余りにも突然の出来事に、焦凍も勝己も目が点になっている。
そんな2人に、俺から声を掛けた。
「早く”光”を!!常闇殿が暴走している!!」
「大和!」
暴れる
その間に敵が立ち上がり、逆上しその刃を向けるも…。
「強請ルナ、三下!!」
その強大な力に、今までのは手加減していた事が見て取れる。
暴れ足りん、そう吼えた
がくり、と常闇殿が地面に膝を付ける。
勝己は軽く掌を爆破させつつも、少し悔しそうにしていた。
「俺らが防戦一方だった相手を一瞬で…。」
「それは此方も同じだ、焦凍。」
常闇殿の安否を確認する障子殿は、感謝の言葉も述べる。
俺達は、彼に対し
「障子…悪かった…。緑谷と西椋も…。
俺の心が未熟だった。」
常闇殿は俺達に悔しさと申し訳無さを伝えてくれたが、障子殿も俺達もそれに対しては一旦置いておく事にした。
さて…と安全を確認した所で出久が、常闇殿に勝己と俺が敵に狙われている事を伝える。
「爆豪と西椋が…?
命を狙われているのか?何故…?」
どうやら常闇殿は制御に必死になっていて、テレパスを聞いていなかったようだ。
俺達はこれから、宿泊施設へ向かう事になる。
ブラドキング先生、相澤先生がいる施設には他生徒も集まっていると踏んだからだ。
そして、俺と勝己を置いて話はとんとん進んで行く。
広場は依然プッシーキャッツが交戦している。
よって森を突き抜けて真っ直ぐ進む事になった。
障子殿の索敵能力や焦凍の氷結、制御出来る黒影殿がある今、負傷者2名を背負っていても戦闘力のある面子が揃っていた。
「何だこいつら!!!」
「おまえ中央歩け。」
俺と勝己は真ん中に寄せられる。
何だか守られるのは性にあわんな…。
「俺を守るんじゃねぇクソ共!!!」
「行くぞ!!」
こうして、俺達は団子のように纏まりながら森を歩いて行った。
暫くは静寂が続いた。
と言っても、何処かでは銃声が聞こえるし、焦げ臭い火事の臭いはそのままだ。
何処まで行った所だったか…一番後ろ…殿を務める常闇殿の気配が、いつの間にか消えていた。
ぱっと振り返ると、仮面を付けた男が人差し指を口元に当てている。
俺は、嫌な予感がした。
丁度相手はもう片方の手を俺に向けている所で、俺は刀を構えようとするも、突然眠気が襲ってきて目の前が真っ暗になった。
それから、何が起こったのか…俺には全く理解出来なかった。