第二十話『狼煙』
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俺は意識を浮上させる。
その原因は、森にあった。
窓を開けると、そこには黒煙が上がる森が見える。
パチパチと木々が燃え弾ける音と、焦げ臭い焼けた臭いが、俺の鼻腔まで届いた。
急いで私服に着替え、愛刀を持つ。
何かが起きている。
先日の気配があった七人だろうか。
クラスの皆は、無事だろうか。
これ以上手遅れになる前に、俺は動いていた。
《皆!!!
他にも複数いる可能性アリ!
動ける者は直ちに施設へ!!
会敵しても決して交戦せず撤退を!!》
脳内に響くマンダレイ殿のテレパスに、状況の深刻さを嫌でも理解する。
窓から施設の外へ出ると、同時期に正面出入口に相澤先生が居た。
そして、その真横に見知らぬ男が一人いる事にも気付く。
その男は、相澤先生に掌を向けていた。
「心配が先に立ったか、イレイザーヘッド。」
「先生!!!」
ドッ!と凄まじい音と熱が此方まで届いた。
その蒼い炎は、先生に直撃した様に見える。
俺はその光景を見て、全身の血の気が引いた。
「邪魔はよしてくれよプロヒーロー。
用があるのは、おまえらじゃない。」
「で、あれば…何用だ
奴の喉元に愛刀を携え、俺はその素性の知れない敵を睨み上げた。
一方では、森の方でガスにより昏睡状態の生徒が何名か出ており、プロヒーローの一人ラグドール殿は音信不通。
何名かは…特に出久に関してはボロボロになりながらも、敵との交戦を余儀なくされている事を俺は知る事は出来なかった。
同時刻、とある繁華街のビルで死柄木弔は写真を片手に涼やかな表情をしていた。
「本当に彼らのみで大丈夫でしょうか?」
「うん。」
黒霧がアジトに戻り、死柄木に声を掛けるが死柄木はそのまま写真を見つめている。
「俺の出る幕じゃない。
ゲームが変わったんだ。
今まではさ、
やるべきは
俺はプレイヤーであるべきで、使えるコマを使って、格上を切り崩していく…。」
その為に、まず死柄木は超人社会にヒビを入れる事を目的とした。
七人もの開闢行動隊は、失敗しても成功してもいい。
ヒーローのテリトリーに来た、という事実がヒーローへの信頼を脅かす。
あくまで、捨て駒とはせずその強さを信用したからこその死柄木の行動だった。
「法律で雁字搦めの社会。
抑圧されてんのは、こっちだけじゃない…。
成功を、願ってるよ。」
その手に握られた写真には、体育祭の表彰台で拘束されていた勝己と、勝己との試合で敗れた、傷だらけの一瞬を捉えた大和の写真があった。
「…おまえが、西椋 大和か。
会いたかったよ。」
そう言ってきた全身継ぎ接ぎだらけの男は、刀を首筋に当てられているのも構わず、俺に手を伸ばしてくる。
しかし、それを上に避難していた相澤先生が捕縛布で止めた。
そのまま相澤先生の個性で、奴の炎を出せないようにしつつ重力に従ったまま落ちてくる。
男の顔面に膝蹴りを食らわせ、そのまま地に伏せさせ、完璧に拘束する事が出来た。
それは一瞬であり、俺はその鮮やかな動きに目を瞬かせる。
「目的・人数・配置を言え。」
「何で?」
拘束されても飄々としているその男に、相澤先生は容易く片腕の骨を折った。
「次は右腕だ。合理的にいこう。
「焦ってんのかよ?イレイザー。」
すかさずもう片腕も折る先生に声を掛けようとするが、その時森の方で轟音が響く。
思わずそっちの方を見る。
それと同時に天哉や、尾白殿を合わせた4人が此方に合流した。
その隙に、男は先生の下から脱出してしまう。
俺は満身創痍なその男に注目するが、この状況でも未だに飄々としていた。
「さすがに雄英の教師を務めるだけはあるよ。
なあヒーロー。」
先生が引っ張った捕縛布が、ずるりと本体から抜けてしまう。
奴の体その物が、泥の様に解けたのだ。
「生徒が大事か?
守りきれるといいな……また会おうぜ。」
峰田殿がどういう事か聞くが、先生はすぐに戻るとだけ伝えて来た。
「……俺も、行きます。」
「駄目だ、部屋に戻ってろ。」
先生の後ろに付いて走ろうとした瞬間、俺の肩をがしりと掴む。
相澤先生の目は本気だった。
「勝手な行動はしません。先生と行動を共にする事を約束します。」
「………。」
「お願い致します相澤先生。」
先生を強く見つめ、俺は思いの丈を誠意に詰めた。
やがて、先生も頭を抱え溜め息を着く。
「……はぐれるなよ。絶対だ。」
「はい。」
俺と先生は夜の森を駆け巡る事となる。
生徒達の気配を探ると、思いの外近くに2人の気配を見つけた。
「先生!!」
同時に、その気配の主である出久から声を掛けられる。
先生と共に、其方を見ると洸太殿を背負った…両腕が酷く損傷している出久が居た。
思わず、顔を顰める。
「出久…!!また酷い怪我を…!!」
「大和君!良かった…!!
大変なんです先生…!
伝えなきゃいけないことが沢山あるんです…けど、とりあえず僕マンダレイに伝えなきゃいけないことがあって…!」
出久は怪我の痛みなど感じない程興奮しているらしく、先生と俺に矢継ぎ早に言葉を投げていく。
洸太殿は水の個性を持っているらしく、先生に預けると直ぐに移動しようとした。
勿論、俺も先生もそんな出久を止めに入る。
怪我を指摘すると、罰の悪そうな顔をした。
「彼女に
俺は、先生に目配せをして出久の保護役を買って出た。
これ以上、出久を無理させる訳にはいかない。
俺は出久を無理やり背負い、襷掛け用の紐で出久を縛り固定させる。
気配を探り、マンダレイ殿を見つければ俺は即座に縮地で森を駆けた。
現場に辿り着くと、マンダレイ殿や虎殿…そして見知らぬ敵が2人。
99の刀を狩った逸話を持つ弁慶の様な刃の塊を振り回す敵に、俺は接近すると同時に居合で結合部分を斬り伏せた。
「えぇ!?」
四散していくその刃達に、敵が気を取られているうちに出久がマンダレイ殿に言葉を伝える。
「マンダレイ!!洸太君!無事です!
相澤先生からの伝言です!
テレパスで伝えて!!」
喉が枯れんばかりに出された言葉は、先生の覚悟が感じられるものだ。
「A組B組総員ーー プロヒーロー、イレイザーヘッドの名に於いて戦闘を許可する!!」