第十八話『演習試験』
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周りをエクトプラズム先生に囲まれた俺達は、一先ず撤退を選択した。
俺は3階辺りの壁に向かって跳躍する。
それに合わせて常闇殿は蛙吹殿を投げ、壁に張り付いた蛙吹殿がその長い舌で常闇殿を上へと運んだ。
3階付近のガラス張りの壁に手を引っ掛けその様子を見ていた俺は、後に4階に着地した常闇殿に運ばれる。
一旦はこれで退けた。
「ウマイナ。」
「ヤハリ戦闘ヲ避ケルカ。」
一度戦闘訓練で組まれた我々にとって、個性の長所短所は一通り頭に入っている。
例え先生相手でも、何通りか策は用意しておくべきだ。
柱の影に隠れ、俺達は作戦会議を始める。
「さて、あの軍勢相手にどうするか。」
「西椋ちゃん、ご本人は何処にいるか分かる?」
「………少し、数が多いな。減らされれば特定が出来る。」
「戦闘は避けられないな…。」
気配を探るも、エクトプラズム先生の分身が靄がかっており探索の妨げになってしまった。
蛙吹殿は考え事をする仕草をして、例の手枷を取り出した。
「西椋ちゃんがいれば、戦闘も全然怖くないのだけれど、いざって時はコレ使う必要がありそうね。」
「俺が囮になっている間に枷を嵌める、という手もある。」
「しかし、相手は我等の上を行く者…。無事では済まないはずだ。」
常闇殿が心配そうに此方を見ていたが、それに対して俺は笑う事で応えた。
一瞬、常闇殿の動きが止まる。
その隣にいた蛙吹殿が「あら。」と何処か嬉しそうに常闇殿を見ていた。
「とにかく、まずは分身を減らしていきましょ。」
「俺が居合で纏めて斬る。討ち損じた者を頼む。」
「御意。」
分身達が前方から現れる。
俺は身を低くし、縮地で一気に間合いを詰めた。
ーーキィンッ!!
斬られた先生達が霧散していく。
それを皮切りに各々が戦闘態勢に入った。
常闇殿が不意打ちを喰らわぬ用、後ろで蛙吹殿が助太刀をしている。
とても頼もしい。
だからこそ、俺は前を進んで行ける。
「道を、斬り開かせてもらうぞ。」
俺はまた、刀を鞘に戻し抜刀の体勢に入った。
何度か斬り伏せている間に何処かの放送機から、焦凍と八百万殿が試験に合格した事を耳にする。
少しだけほっとするのと同時に、負けてられないなという思いも湧いた。
……さて、4階から戦って来て今3階になるが、この階に現れた分身達が少なくなって来た所で一旦気配を探る。
その間、間合いに現れた分身に対し反応出来無かった常闇殿を蛙吹殿が助けていた。
蛙吹殿は常に周りを良く見ており、常に冷静である。
蛙吹殿の様なヒーローが一人いるだけで、戦況は大分変わるだろう。
俺は目を開けて、周りの分身を斬り伏せる。
先生の場所は掴めた。二人に目線を送る。
俺の目線を追った二人も、エクトプラズム先生本人を視野に入れた。
先生は可愛らしい装飾のされた門の前に立ち、3階から移動しようとする俺達を見つめた。
「あれがゴールと、御本人ね。」
「アノ数ヲ、ヨクゾ凌イダ…ダガ…コレナラ、ドウダ?」
先生が口を大きく開き、一つの巨大な分身を作る。
まるで鯨の如く、俺達に向けてその闇の広がる口を向けて来た。
思わず俺は2人を助けようか迷ったが、縮地で柱の影へ跳ぶ。
「数ハ出セナクナルガ、我ガ視認出来レバ、コノ一体デ事足リル。
分身ノ解除ハ我ノ意思デノミ…サァ、ドウスル?」
「為れば本体を叩くのみ。」
二人が巨大分身に捕まってしまったのを後目に、俺は先生の所へ跳んだ。
最初の一撃は脚で去なされ、その後の斬りこみも先生には届かない。
だが、これでいい。
俺は二人が活路を見出すまで時間を稼ぎ、先生を2人に注目させなければいいのだ。
先生から繰り出される蹴りも激しく、だがそれを受け流し隙を突こうとする。
どうしたらその様に反応し防御出来るのか、外套は傷付けられてもその刃が届かない。
ーー…キィンッ!!
「アト10分弱…コレヲ続ケルカ?
我ガ欲スハ逆境ヲ打チ崩ス、ヒーローノ瞬キ。」
その時、
俺は咄嗟に場所を交代する。
「ーーナル程…。」
『蛙吹・常闇・西椋チーム条件達成!』
その放送を聞いた俺は二人の確認へ向かう。大きな怪我も無く、俺はほっと一息吐いたのだった。
「見事であった、御二方。」
「西椋ちゃんも時間稼ぎありがとう。おかげで上手くいったわ。」
「僥倖。混沌が上手く噛み合った。」
巨大分身から拘束が解かれた二人に手を差し出す。
一応だが、その場で過擦り傷などを応急手当をする。
リカバリーガールの所へ行くか、二人の判断に任せよう。
「
「良イッテ事ヨー!!西椋ノ為ナラ火ノ中水ノ中!」
頼もしい事を言ってくれる黒影殿の喉元辺りを撫でながら、
「どうしたのだ常闇殿!痛むのか!?」
「否……否、問題無い…」
「西椋ちゃん、そっとしておいてあげて。
今常闇ちゃんは幸せを噛み締めてるだけだから。」
そう蛙吹殿に言われて俺は腑には落ちなかったが、言われた通りそっとしておく事にした。
演習試験に合格出来たのが余程嬉しかったのだろうか。
常闇殿も余り顔に出さぬからな…。
そうこうしているうちに、時間切れの放送が流れる。
皆無事に演習試験を達成出来ただろうか…。
逸る気持ちを抑えながら、俺達はバスに乗り校舎へと戻る事となった。