第十五話『ヒーロー殺しVS雄英生徒』
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数多の剣戟が路地から響く。
一進一退の攻防が続いている。
絶対に血を流してはならない。
このヒーロー殺し相手に、中々酷な要求をする。
神経を張り巡らせ、次の1撃を読み、確実に斬り込もうとすれば阻まれる。
ステインは、1体1の戦闘においては限りない猛者だ。
「ハァ……素晴らしいな…!この歳で、ここまで動けるのか…!!」
何が愉しいのか、嗤いながらもステインはその攻撃の手を緩めない。
長物に短刀、足先に付いている棘や飛び道具。
多彩な攻撃を仕掛けてくるステインに、俺は無血で何とか喰らい付く。
「凄い…西椋君、あのヒーロー殺し相手にまだ傷を見せてない…!」
「しかし…ステインにまだその刀は届かないみたいだな…。」
緑谷殿達との間を何とか距離を伸ばしたいのだが、ステインはその思惑に気付いているのだろう。
何とか離しても、即座に距離を詰めてきた。
「あいつが気に入るのも頷ける……おまえは、逸材だ…。」
「彼奴…?……ッ、グ!」
ーーダンッ!!
「西椋君!!」
ステインの零した言葉に気を取られたその瞬間、鋭い蹴りが飛んで来て俺は壁に叩き付けられた。
靴に付いていた棘が腹に刺さり、叩き付けられた衝動で傷口が広がった。
「っ、…く、そ…」
「…ハァ、…そのまま寝ておけ、若き光よ。
おまえは、こんな所で死ぬのは俺が許さない…。」
頬まで飛び散った俺の血を、ステインが舐め上げる。
その途端、身体中が鉛の様に重たくなり動けなくなった。
「二人共…逃げろ…!!」
時間稼ぎが充分に出来ず、緑谷殿も飯田殿もまだ動けない様だった。
俺のほんの気の緩みが招いた結果だ。
悔やんでも悔やみきれない。
思わず歯を食いしばり、手足を動かそうとするが指先はピクリとも動かない。
そうこうしている間に、ステインが飯田殿に止めを刺そうと刀を振ろうとしたその時…。
ごう!と燃え盛る灼熱と、底冷えする様な冷寒が路地を通った。
思わず、その方向を見る。
「次から次へと…今日はよく邪魔が入る…。」
「緑谷。こういうのはもっと詳しく書くべきだ。
遅くなっちまっただろ。」
凛然と立つ幼馴染…焦凍が、この路地に到着した。
俺はつい、深く息を吐いてしまう。
焦凍は本当に、ヒーローだと実感する。
その姿を見て、こんな絶望的状況でも安心させてしまうのだから。
「轟君まで…。」
「何で君が…!?それに…左……!!」
「何でって…こっちの台詞だ。
数秒”意味”を考えたよ。一括送信で位置情報だけ送ってきたから。
意味なくそういうことする奴じゃねえからな、おまえは。」
焦凍が右側を使い、地面を一瞬で凍らせる。
「”ピンチだから応援呼べ”って事だろ。
大丈夫だ、数分もすりゃプロも現着する。」
俺や緑谷殿の床が氷で持ち上がり、自身の体が傾く。
それと同時に、炎が舞い氷の表面が溶け、俺達はつるりと焦凍の方へ滑って行った。
「情報通りのナリだな。
こいつらは殺させねえぞ、ヒーロー殺し。
……大和、大丈夫か?」
「ああ、すまなんだ焦凍…。少し、油断した…。」
ステインが様子を伺う間、緑谷殿は焦凍に情報を渡す。
「轟君、そいつに血ィ見せちゃ駄目だ!
多分、血の経口摂取で相手の自由を奪う!
皆やられた!」
「それで刃物か。俺なら距離保ったまま…。」
そう言った矢先、小型の刃物が飛んで来て焦凍の頬を擦る。
ステインは一気に距離を詰めてきた。
「良い友人を持ったじゃないか、インゲニウム。」
横振りの短刀を即座に出した氷柱で防ぐが、上を見たステインに釣られ見ると、そこには刀が回転しながら落ちてきていた。
その一瞬をつき、ステインは焦凍の擦って血の滲む頬を舐めようとする。
慌てて焦凍は左側を使い、炎を出した。
何とか距離を取った焦凍だが、思わず「っぶねえ」と声が出る。
「何故…三人とも…何故だ…やめてくれよ…。
兄さんの名を継いだんだ…、僕がやらなきゃ。
そいつは、僕が…」
地を這う様な飯田殿の声に、焦凍はさらりと告げる。
「継いだのか、おかしいな…。
俺が見たことあるインゲニウムは、そんな顔じゃなかったけどな。
おまえん家も裏じゃ色々あるんだな。」
大きな氷塊を作り、ステインとの間に壁を作る。
しかし、それも切り刻まれ焦凍が炎で応戦しようとした時、左腕に刃物が突き刺さった。
「おまえも、良い…。」
真上に跳んだステインを皆が見上げる中、一人だけ同じ高さに行った者がいた。
「緑谷!」
「なんか普通に動けるようになった!!」
ステインを壁に押し当て、そのまま引きずり下ろしていく緑谷殿。
時間制限かと思ったが、緑谷殿は俺の前にやられたのだから、一番最初にやられたプロヒーローが動けないのは可笑しい。
そうこうしている内に、緑谷殿は肘鉄を喰らい急降下する。
すかさず焦凍が氷結を出し、その場は一旦仕切り直しとなった。
「血を摂り入れて動きを奪う。
僕だけ先に解けたってことは、」
「考えられるのは3パターン。
人数が多くなる程効果が薄くなるか、摂取量か…血液型によって効果に差異が生じるか…。」
焦凍の予測に、ステインから笑みが消える。
「血液型…ハァ、正解だ。」
2人が作戦会議をする間、俺は手足の感覚が少しずつ戻って行くのを感じた。
巾着から止血用の布を取り出し、腹に巻く。
ある程度血が滲まないくらいになって、俺はゆっくりと立ち上がった。
「に、西椋君!」「大和!」
「三人で、守るぞ。俺はまだ動ける…!」
ステインが此方を見据え、2人は敵と向かい合った。
焦凍が後方支援をする中、俺と緑谷殿でステインの相手をする。
しかし、先程と動きが比べ物にならないくらいに奴は本気になっていた。
緑谷殿の補助をしながら、俺も斬り込んでいく。
「止めてくれ……もう……僕は……」
「やめて欲しけりゃ、立て!!!」
緑谷殿が血を舐められ、動きが止まる。
その間を縫う様に、ステインは焦凍の前まで躍り出た。
「なりてえもん、ちゃんと見ろ!!」
幼馴染の危機が迫っているというのに、俺は飯田殿に喝を入れる焦凍の言葉が、やけに耳から離れなかった。