第十五話『ヒーロー殺しVS雄英生徒』
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俺は保須市中を走り回っていた。
エンデヴァー殿が到着した為、コガラスマル殿は俺に避難する様呼び掛けたのだが、それ所では無かった。
何処か遠く、だが…確かに聴こえた。
「天哉くーん!」
そう呼ぶ、大人の声が。
嫌な予感がする。
飯田殿に危機が迫っている。
俺はコガラスマル殿の方を見て、少しだけ頭を下げた。
それを見たコガラスマル殿は、一瞬目を見開いた後スマホを翳して、いつもと違う真剣な表情をしてから、俺に頷いてくれた。
きっとエッジショット殿に連絡を入れる、という事なのだろう。
頷いてもらった瞬間に、俺は声のした方に駆け出して行った。
「あーぁ……、流石に甘やかし過ぎたかぁ?
けどまぁ、アレは仕方ないよなぁ。
あの顔は”仲間を救いたい”って顔だった。」
俺が去った後、コガラスマル殿はそう独り言ちていたらしい。
俺は、走りながら全神経を張り巡らせて気配を探る。
何処に…何処かに必ずいるはずなのだ。
杞憂であれば一番良い。
だが、俺の勘は警報を鳴らしている。
雄英襲撃事件を思い出す。
あの時、少しでも早く着いていたら相澤先生は彼処まで傷付かずに済んだ。
頼むから、また間に合わない等という失態を犯す事の無い様に…俺は走った。
そんな時、緑の影が目の前の路地から現れる。
それは、俺の良く知る人物であった。
「み、どりや殿…!?」
「西椋君!!」
お互いがどうして此処に?という表情をするが、しかし探している者は一致した様だ。
「俺は、飯田殿を探している。」
「僕もだよ。」
頷き合い、俺は神経を研ぎ澄ませる。
そして、此処より数キロ離れた路地に漸く見つけた。
「ー…!! 居た…!緑谷殿!」
「うん!着いてくね!!」
俺は思わず縮地で移動する。
その時しまった!と思った。
緑谷殿を置いていってしまうと懸念したからだ。
しかし、振り向くと緑谷殿は縮地の速さに着いて来れていた。
「緑谷殿…疾くなったな…!!」
「グラントリノのとこで修行したんだ!
それでも、やっぱ西椋君のが速いや…!」
ぐらんとりの…緑谷殿の体験先であろうか。
元来ヒーローに詳しくない俺は、その言葉に「そうか。素晴らしいな。」とだけ返した。
此処から先は戦場となる。
気を引き締めて掛かろう。
血の匂いがする、その路地へ俺達は足を踏み入れた。
「じゃあな。正しき社会への供物。」
銀の切先が、負傷した飯田殿を捉えている。
「黙れ…、……黙れ!!!
何を言ったっておまえは、兄を傷つけた犯罪者だ!!!」
緑谷殿が壁を蹴り、前へ出る。
俺はその間にもう1人の負傷者の元へ向かった。
稲妻の様な拳が、ヒーロー殺しと思われる男に躊躇無く御見舞される。
足蹴にされていた飯田殿は、思わず目を見開いていた。
「緑谷……君…!?」
「救けに来たよ、飯田君。」
ビンゴだ、と緑谷殿は敵を見つめて呟く。
着地してステインと相対する緑谷殿を見遣りつつも、俺は負傷者の応急手当を行っていた。
戦闘服を着ている事から、彼もまたヒーローなのだろう。
「ワイドショーでやってた…!
ヒーロー殺し被害者の6割が、人気のない街の死角で発見されてる。
だから…騒ぎの中心からノーマルヒーロー事務所辺りの路地裏を…虱潰しに探してきた!
途中で西椋君に会って、気配を察知してくれたからとても助かったよ!」
「に、西椋君も来ているのか!?」
その声に応急手当の終わった俺は立ち上がる。
飯田殿も安全な所に運び出したいのだが、どうやらステインの”個性”で体が動かない様だ。
俺が立ち上がった事で、緑谷殿はもう1人負傷者が居る事にも気付いた。
急いで飯田殿を担ごうとする緑谷殿は、飯田殿の言葉に動きを止めた。
「緑谷君、手を…出すな。西椋君もだ…。
君たちは関係ないだろ!!」
「何……言ってんだよ…」
この状況で出たその言葉に、緑谷殿は顔を青くさせる。
それと同時に、ステインが動き出した。
「仲間が「救けに来た」良い台詞じゃないか。
だが俺はこいつらを殺す義務がある。
ぶつかり合えば当然……
弱い方が淘汰されるわけだが、
さァ、どうする。」
静かに、しかし重く伸し掛る殺気が俺達に注がれる。
ステインの眼に一切の躊躇は無かった。
前に居る緑谷殿が小さく震えた様に見えた。
しかし、彼は拳を握る。
俺も、それに合わせる様に愛刀を構えた。
「やめろ!!逃げろ、言ったろ!!
君たちには関係ないんだから!」
「そんな事言ったら、ヒーローは何も出来ないじゃないか!」
吼える飯田殿に、緑谷殿は不敵な笑顔を見せる。
続いて出た言葉に俺の口角も上がってしまった。
「い……言いたいことは色々あるけど…後にする…!
オールマイトが言ってたんだ。
余計なお世話は、ヒーローの本質なんだって。」
少し大きく見えるその背中に、乗っかるものを軽くする様に、俺は緑谷殿の肩を叩く。
「友が泣いている、市民が傷付いている、俺がこの力で止められるのであれば…必ず護ってみせるさ。
その為に強くなった。その為の力だ。
俺の愛刀は、思想犯の脅威なんぞで折れたりしない!!」
緑谷殿の言葉と俺の言葉を聞いたステインは、嬉しそうに嗤った様な気がした。
「緑谷殿。」
「うん!」
緑谷殿は声掛けに対して、強く地面を蹴った。
「良い。」
俺も緑谷殿に合わせて、飯田殿を担ぎ距離を取る。
軽く止血をしている間に、緑谷殿の方を確認すると綺麗な股抜きを見せた。
そして振り向きざまの一閃を、すかさず上へ跳ぶ事で避け、そのままの勢いで脳天に拳を振り降ろした。
まるで、その動きは何時ぞやの戦闘訓練で見た勝己の様で、思わぬ成長に一瞬判断が遅れた。
緑谷殿が動けなくなったのは、その一瞬だった。
ステインが短刀を舐めた途端、緑谷殿の動きが止まる。
よく見れば、小さな過擦り傷が脚にあった。
「血、か…。」
ステインが此方にゆっくりと向かって来る。
俺は静かに抜刀の構えを取った。
「パワーが足りない。
俺の動きを見切ったんじゃない。
視界から外れ…確実に仕留められるよう画策した…。
そういう動きだった。
口先だけの人間はいくらでもいるが…おまえは、生かす価値がある…。」
俺の間合いに入るか入らないかの所で、奴は止まった。
「おまえは…どうだろうな。
見せてみてくれ、その力を…。」