第十五話『ヒーロー殺しVS雄英生徒』
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
あれから職場体験も3日が過ぎた。
その間、俺がやった事いえば大した事はしていない。
今はもう夕方になるが、今日は平穏だったな。
職場体験2日目の時は見回りをしていた所、引ったくりを見つけた為縮地で犯人の懐に入り込み拳を御見舞し沈めたり、その日の夜には暴走族が暴れている路上で、タイヤを斬り転倒させ無力化させたりした。
まぁ、荒事ばかりではなく、今日は迷子を保護したり御老人の手伝いをした。
同行していたコガラスマル殿は「いやぁー将来が楽しみだなぁー!」などと笑っていたが、基本的に止められる事はなかったな。
それと、コガラスマル殿が後輩を甘やかすタイプというのは本当らしく、俺が何か解決させる度に甘味を用意したり褒めちぎったりしてくる。
正直俺は自分に厳しい所がある為、そうされると只々擽ったかった。
そんな調子で褒めるものだから、エッジショット殿にコガラスマル殿が報告した際も「予想以上の働きだ…。」と目を見開かれた。
少し報告の着色が過ぎる気もする。
…だが、プロヒーローに言われると、少し誉高い気持ちになった。
そういえば、エッジショット殿の方はあまり進展は無いらしい。
いつもは涼し気なエッジショット殿の表情も、此処最近は悔しそうな表情を見るようになった。
俺はそんな状態の事務所で、冷茶と葛饅頭を用意している。
俺がそうしたい、という気持ちの問題もあるが、少しでもエッジショット殿の気分転換になればいいと思い馴染みの店で購入した物だ。
「エッジショット殿。」
「ん、ああ…態々いれてくれたのか。
茶菓子まで…至れり尽くせりだな。」
「おぉ!葛饅頭とはまたいいねぇ!」
和室で話し合いをしていたであろうエッジショット殿とコガラスマル殿の前に、それぞれ冷茶と茶菓子を置く。
他の方々は、また午前から調査に出ている様だ。
コガラスマル殿の方を見ていた一瞬で、エッジショット殿の葛饅頭が無くなっていたのにはもう慣れたが、茶菓子と冷茶を飲んでから少し雰囲気が柔らかくなった気がする。
「もう夕方なのだが、これから二人には保須市に向かってもらう。」
「保須…ってぇーと、”ヒーロー殺し”か?」
その単語を聞いた俺の脳裏に、飯田殿の顔が浮かぶ。
皆の近況は、緑谷殿が招待してくれたグループラインに時々呟かれるのだが、飯田殿は特に連絡をして来ていない。
「それもあるのだが、少し妙な噂を聞いたものでな。
もしかしたら、事が動くかもしれない。」
エッジショット殿の眼は鋭く光り、俺は身を引きしめた。
「どんな些細な事でもいい。何かあったら報告を頼む。」
「応!」
「承知致しました。」
エッジショット殿も保須市近辺を調査するそうで、別行動となった。
そして、相変わらずこの事務所を出る際は目隠しをされる為、次に目を開けた時は駅近くの裏道にいた。
「ここから保須までは、電車で1時間くれぇかなぁ。」
「これから行くとすると…保須市に着くのは凡そ5時くらいですか。」
二人で電車に乗り込み、電車に乗っている間ラインを確認した。
特に新しい言伝は無いし、皆も頑張っている事が分かった。
……そういえば、戦闘服姿で電車に乗るのは初めてだな…。
「あれってヒーロー…だよね…!」
「コガラスマルの隣にいる子、学生かな?」
「職場体験じゃない?もしかしたら、体育祭のあの子かも!」
電車内は少し色めき立っている。
こう言っては何だが、車の移動が良かったな…。
まぁ、今のうちに慣れとかないといけないものではあるのだが。
「未来のエースヒーローはぁ随分注目浴びてるなぁ。」
「コガラスマル殿、茶化さないでくだされ。」
電車に揺られ、もう2駅程で保須市に着くという所で、スマホのトップニュースが飛び込んで来た。
『新宿行きの新幹線に大きな風穴!』
そのニュースに写った写真には、雄英襲撃事件の時に遭遇した脳無…の様なものが少しだけ写っている。
あの時の脳無と違うのは、体の色が全体的に白っぽいという事だろうか。
そして、その新幹線の事故現場は…保須市が近かった。
「コガラスマル殿…!!保須市で何か起きてるやもしれません!」
「……そうみたいだなぁ。」
横からスマホを覗いていたコガラスマル殿の顔に笑みが一瞬消える。
俺達は早く駅に着いて欲しいと逸る気持ちを抑えながら、窓の外を眺めていた。
十数分後に到着した保須市は、正に混乱状態だった。
至る所で黒煙が上がり、人々は逃げ惑っている。
余りの豹変ぶりに俺も思わずたたらを踏んだが、その瞬間前方から悲鳴が聞こえた。
白く細長い四肢を持った脳無や、翼を持った脳無、空を飛び地を駆け人を襲おうとしている。
それを視界に捉えた俺は、コガラスマル殿の制止を聞かずに駆け出していた。
愛刀に個性を宿らせ、脳無の前に跳ぶ。
市民に手を出そうと伸ばしたその不埒な腕を斬ろうとした時、自身の横側から強烈な熱を感じ、思わず縮地で避ける。
その瞬間通り過ぎるのは、灼熱の業火。
炎の奥に、黄色い戦闘服を身にまとった御老人と、その隣から存在感を放つ男が姿を現した。
「ヒーロー殺しを狙っていたんだが…
タイミングの悪い奴だ。
存じ上げませんがそこのご老人、俺に任せておけ。
それと職場体験生か?巻き込まれんよう下がれ。」
「あ!あなたは!!マジ!?」
「何でここにー…」
その顔に笑みはなく、覇気と熱気を纏った男は声を発した。
「ヒーローだからさ。」
焦凍の父、プロヒーロー”エンデヴァー”がこの阿鼻叫喚としている保須市に降り立ったのだ。