第一話『侍少年:オリジン』
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
あの偶然の出会いから俺は焦凍とよく話すようになった。
家が隣同士という事と実は同い年だと後から知って、焦凍が照れくさそうにしていたのを覚えている。
父上や母上もそれまで轟家と交流はさほど無かったのだが、俺と焦凍が仲良くなってからはそれなりに交流をしているようだった。
だが、ある日を境に焦凍は暗い目をするようになってしまった。
あんなに母を見る度輝かせていた瞳は今はなく。
いつか撫でた小さな頭と顔には白い包帯が巻かれ、俺は胸が締め付けられた。
俺は詳しく踏み込む事は出来なかったが、事情を知った父上や母上は俺に焦凍の友達として傍にいてやってほしいと言っていた。
勿論、そのつもりである。
焦凍の父親の事は知っている。
エンデヴァーというヒーローをしているらしい。
炎の個性を持っていてとても強く、巷では事件解決数史上最多として賞賛されているらしいが、一方で行き過ぎた言動が反感を買っているそうだ。
俺も、エンデヴァーは好きじゃない。
焦凍が深く傷ついた原因は、エンデヴァーだからだ。
いくら事件を解決したとてヒーローというのは、こういうものではないと思う。
俺の目指しているものは、泣いている人に手を差し伸べられる存在になる事だ。
俺は、これ以上焦凍が傷ついてほしくない。
出来ることなら、焦凍の母も傷ついてほしくない。
公園で小さくなっていた焦凍や自分の家族を護る為に、強くなる事を決意した。
齢5歳の子供には、余りにも重い決意だとしても俺は俺を曲げる気は無い。
そんな思いと裏腹に、焦凍の修行は更に過酷なものになって行った。
時折屋敷に忍び込み、焦凍の様子を見に行き自身のお小遣いで買った団子を渡しながら、休憩しようと声を掛けた。
その時だけ焦凍は一年前の様に柔らかな表情をしてくれた。
やはり甘味の力は偉大だ。
「…焦凍、本当に頑張っているな。」
撫でてやると焦凍は瞳を潤ませる。
ぐっと唇を噛み締め、泣くのを耐えていた。
………いつから、焦凍は泣かなくなってしまっただろう。
心臓が針で刺される様な痛みを感じなからも、此処から自由にする事が叶わない自分の無力さを嘆いた。
「……大和は、ヒーローになるの?」
「ヒーロー…。」
焦凍に尋ねられて、はてと考えた。
俺としては道場を継ぐつもりだったのだが、何処かで泣いている人を助ける…という意味ではヒーローが合っているのかもしれない。
「そういう手もあるな。まだ分からん。」
「そっか…。…あのね、オールマイトって知ってる?」
「おーるまいと?」
焦凍はベッドの下に手を入れ、厳重に隠してあった箱を取り出した。
中には人形とブロマイドが入っている。
「NO.1ヒーロー、オールマイト!……あいつのまえでだすと、なぐられるから…かくしてるんだ。」
「…ほう。」
それから暫く、オールマイトの話を聞いていたが焦凍は楽しそうにしていた。
…成程、ナンバーワンというのは伊達ではなく、人々の心の支えになっているのがとても好ましく思えた。
俺は家に帰ってから父上に聞いてみた。
「…父上。俺はヒーローになれるでしょうか。」
その言葉に父上は一瞬目を見開く。
しかし次にはいつもの笑みを見せ、大きく頷いた。
「大和はいいヒーローになれる。父が保証しよう。」
「ありがとうございます…。」
「…俺は、大和が強い者になる事を願っている。強い者とは、只武力を持っているという事ではないぞ。」
俺の肩に手を置き、真っ直ぐに見つめられる。
「不幸に涙する者に、どうしようもない災に呆然とする者に、希望と優しさを持って接する事の出来る者の事だ。…そんなヒーローになるんだぞ、大和。」
「はい!」
まだ幼い俺の言葉をしっかりと受け止め、親として激励を送る父上に、ほっと息をつき身を引き締める。
自身の夢を見定めたのだ。
これからはそれに向かってやれる事をやろう。
「…因みに、ヒーローには副業も許されている。道場を継ぎたくなったら、必ず言うんだぞ。」
「? はい、父上。」
少し寂しそうにしている父上にそう言われて、一応返事はしたが首を傾げてしまった。
家が隣同士という事と実は同い年だと後から知って、焦凍が照れくさそうにしていたのを覚えている。
父上や母上もそれまで轟家と交流はさほど無かったのだが、俺と焦凍が仲良くなってからはそれなりに交流をしているようだった。
だが、ある日を境に焦凍は暗い目をするようになってしまった。
あんなに母を見る度輝かせていた瞳は今はなく。
いつか撫でた小さな頭と顔には白い包帯が巻かれ、俺は胸が締め付けられた。
俺は詳しく踏み込む事は出来なかったが、事情を知った父上や母上は俺に焦凍の友達として傍にいてやってほしいと言っていた。
勿論、そのつもりである。
焦凍の父親の事は知っている。
エンデヴァーというヒーローをしているらしい。
炎の個性を持っていてとても強く、巷では事件解決数史上最多として賞賛されているらしいが、一方で行き過ぎた言動が反感を買っているそうだ。
俺も、エンデヴァーは好きじゃない。
焦凍が深く傷ついた原因は、エンデヴァーだからだ。
いくら事件を解決したとてヒーローというのは、こういうものではないと思う。
俺の目指しているものは、泣いている人に手を差し伸べられる存在になる事だ。
俺は、これ以上焦凍が傷ついてほしくない。
出来ることなら、焦凍の母も傷ついてほしくない。
公園で小さくなっていた焦凍や自分の家族を護る為に、強くなる事を決意した。
齢5歳の子供には、余りにも重い決意だとしても俺は俺を曲げる気は無い。
そんな思いと裏腹に、焦凍の修行は更に過酷なものになって行った。
時折屋敷に忍び込み、焦凍の様子を見に行き自身のお小遣いで買った団子を渡しながら、休憩しようと声を掛けた。
その時だけ焦凍は一年前の様に柔らかな表情をしてくれた。
やはり甘味の力は偉大だ。
「…焦凍、本当に頑張っているな。」
撫でてやると焦凍は瞳を潤ませる。
ぐっと唇を噛み締め、泣くのを耐えていた。
………いつから、焦凍は泣かなくなってしまっただろう。
心臓が針で刺される様な痛みを感じなからも、此処から自由にする事が叶わない自分の無力さを嘆いた。
「……大和は、ヒーローになるの?」
「ヒーロー…。」
焦凍に尋ねられて、はてと考えた。
俺としては道場を継ぐつもりだったのだが、何処かで泣いている人を助ける…という意味ではヒーローが合っているのかもしれない。
「そういう手もあるな。まだ分からん。」
「そっか…。…あのね、オールマイトって知ってる?」
「おーるまいと?」
焦凍はベッドの下に手を入れ、厳重に隠してあった箱を取り出した。
中には人形とブロマイドが入っている。
「NO.1ヒーロー、オールマイト!……あいつのまえでだすと、なぐられるから…かくしてるんだ。」
「…ほう。」
それから暫く、オールマイトの話を聞いていたが焦凍は楽しそうにしていた。
…成程、ナンバーワンというのは伊達ではなく、人々の心の支えになっているのがとても好ましく思えた。
俺は家に帰ってから父上に聞いてみた。
「…父上。俺はヒーローになれるでしょうか。」
その言葉に父上は一瞬目を見開く。
しかし次にはいつもの笑みを見せ、大きく頷いた。
「大和はいいヒーローになれる。父が保証しよう。」
「ありがとうございます…。」
「…俺は、大和が強い者になる事を願っている。強い者とは、只武力を持っているという事ではないぞ。」
俺の肩に手を置き、真っ直ぐに見つめられる。
「不幸に涙する者に、どうしようもない災に呆然とする者に、希望と優しさを持って接する事の出来る者の事だ。…そんなヒーローになるんだぞ、大和。」
「はい!」
まだ幼い俺の言葉をしっかりと受け止め、親として激励を送る父上に、ほっと息をつき身を引き締める。
自身の夢を見定めたのだ。
これからはそれに向かってやれる事をやろう。
「…因みに、ヒーローには副業も許されている。道場を継ぎたくなったら、必ず言うんだぞ。」
「? はい、父上。」
少し寂しそうにしている父上にそう言われて、一応返事はしたが首を傾げてしまった。