第十三話『名前をつけてみようの会』
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思案開始から十五分、俺は未だに札が真っ白だが他の者は纏まった様で、教壇に立ち発表する形式となった。
……発表形式なのか…少し、これは…下手なもの出せんな…。
そして、そんな状況でも臆すること無く教卓へ向かうは青山殿。
その青山殿が出したヒーロー名に、俺は二度見した。
「輝きヒーロー
「短文!!!」
分かった、青山殿のヒーロー名は今後呼ばない様にしよう。
その後芦戸殿はエイリアンクイーンという名で発表するも、ミッドナイト先生に却下される。
何か元にした映画があるのだろう。
俺には分からないが、芦戸殿はぶすくれながらも席に戻って行った。
…何だか、大喜利っぽい流れになって来てないか?
しかし、その空気を良い意味で梅雨殿が崩してくれた。
フロッピー殿、可愛らしい名前だ。
「んじゃ俺!!
ダンッと勢い良く札を出す切島殿に、ミッドナイト先生が懐かしそうにした。
曰く切島殿のヒーロー名は『赤の狂騒』と呼ばれた
…ふむ、切島殿は尊敬するヒーローの名を背負ったのだな。
俺はヒーロー自体に詳しくは無いが、相応の重圧を覚悟の上でこれを発表した切島殿は、とても格好良く見えた。
その後、皆熱が入ったかの様に次々発表していく。
焦凍は名前をそのままヒーロー名にし、勝己は余りの方向性に却下された。
常闇殿は月読命から名を取ったのだな。
そういうのも中々に粋である。
俺もこうしてはおれんと我に返り、考えを巡らす。
どうしたものか、俺自身余りセンスがある方ではないのだが……。
ふと、俺の視界に立て掛けていた竹刀袋が映る。
『大和、俺達の愛息子よ。…大丈夫だ。お前の道を、俺達はいつも見守っているからな。』
父上の言葉が、俺の霧がかった頭を晴れさせる。
そうだな、俺は…俺の目指すヒーローは…。
「思ったよりずっとスムーズ!
残ってるのは再考の爆豪くんと…西椋くん、飯田くん。そして緑谷くんね。」
「では…。」
俺はやっと書き上げた札を持ち立ち上がり、教卓へ向かう。
皆の視線が、俺へと向いた。
俺は札を皆に見せる形で立てる。
今まで発表してきた者に習って、俺も書いたものを読み上げた。
「侍ヒーロー、『ブシドウ』。」
「武士道!クーッ!良いわね!!
西椋君ならではで、とっても渋い!」
ミッドナイト先生が何故か身悶えながらも了承の親指を立てたサインに、俺は席に戻る。
やいのやいのと賑やかな教室で、ほっと一息を着いた。
壁に立て掛けられた竹刀袋に刺繍されている、金色の文字。
母上が縫い上げたその文字を、俺は大切にしていた。
親を尊び、仁義を尽くし、弱き者を助ける。
豪遊はせず質素を心掛け、友と共に高みを目指す。
解釈は色々あると思うが、俺はこういう武士道を重んじていた。
これからも、この信念は変わらない。
だからこそ、俺はこの名でヒーローを志していこうと思う。
その後、いつもなら堂々としている飯田殿は、何か苦しそうな顔で名前をそのままヒーロー名とし、緑谷殿は蔑称であった『デク』をヒーロー名として発表した。
思わずその選択に俺も驚くが、緑谷殿の顔は晴々としていた。
因みに、再考した勝己だったがまた似た様な名前を出し却下されていた。
……爆殺卿は流石に物騒過ぎやしないか?
「良い名前だな。」
「…、有難う。」
隣の席に居る障子殿の言葉に、少しだけ気恥ずかしくなりながらも、俺はその言葉に微笑んだのだった。