第十三話『名前をつけてみようの会』
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体育祭後、焦凍の家に顔を出せば何と焦凍は外出していた。
…しかも、焦凍の母が居る病院に行っているのだと。
俺は、安土の見舞いに誘おうと思って顔を出したのだが…。
うむ、しかし折角の親子水入らずだ。
此処は余り首を突っ込まずに、俺は俺の用事を済ませるとしよう。
案の定、同じ病院である筈だが焦凍の姿は無く、俺は入院している安土の着替え等を本人に渡して行く。
「兄さん…僕は兄さんが負けた事、まだ信じられないんです…。
僕の兄さんは最強なんです…。
あんな爆発単細胞に負けるなんて有り得ないんです…。」
「安土、飲み物冷蔵庫に入れとくぞ。」
俺の腰辺りにしがみつき、ぐりぐりと頭を擦り付けてくる弟のそんな姿に俺は苦笑いする。
本当に、俺の事になると俺以上に負けず嫌いと言うか…尊敬していると言うか…身内贔屓が酷い。
俺も安土を可愛がっている自覚はあるがな。
俺が体育祭に向かってから、ずっとテレビに張り付いて観ていたらしく、俺の一挙一動楽しそうに話し始めたと思ったら、最後の勝己との試合が余程辛かったらしい。
…俺に骨折した腕も物ともせずしがみつき、この有様だ。
……俺も、恥ずかしい試合を見せてしまった自覚はある。
だからこそ…これからは、俺を応援してくれる者達にしっかりと、応えなくてはならない。
「すまんな安土。辛い試合を見せてしまった。」
「いいえ!!兄さんは悪くありません!!
元はと言えばあの人間手榴弾が、兄さんの優しさを逆手に取ったのがいけないんです!!」
「余り勝己を悪く言わんでくれ。」
安土は聞こえていないのか聞き流したのか、その言葉には答えずそう言えば、と話を振ってきた。
「先程紅白エアコンに会いました。」
「………その蔑称は焦凍か?相変わらずだな…。」
「僕の兄さんを独り占めする輩はオールマイトであろうと許しません。」
矢張り焦凍も来ていたのだな。
そして、安土は可愛いが他人を蔑む言い方は良くない。
心を鬼にして説教するも、馬の耳に念仏と言った感じだ。
全く安土の俺贔屓は、年々酷くなる一方だな…。
「あの、兄さん。」
「どうした安土。」
寝台の上で、安土がいつになく真剣な顔をする。
「僕は、兄さんが素敵なヒーローになる為のバックアップがしたいです。
雄英の経営科がテレビに出てました。
僕、そこを目指そうかと思ってます。」
その言葉に少し驚くが、予想の範囲内だった。
安土は勉強が出来るし、何より先を見据える力を持っている。
ヒーローよりは、人を指示したり補助する立ち位置に落ち着くだろう、俺はそう感じていた。
そんな安土に雄英の入学案内の冊子を渡す。
「そう言うと思って、これ貰ってきたぞ。」
「!! ありがとうございます!」
弟の無邪気な笑顔に心が温かくなるのを感じる。
雄英高校の冊子は矢張りヒーロー科が全面に押し出されているが、他の科の事もそれなりに知る事は出来るだろう。
まぁ、今小学生の安土が受験する頃には…色々と制度が変わっているかもしれんがな。
早速パラパラと冊子を見ていく安土は、とある頁で手を止めた。
「コイツが雄英の英語教師……兄さんにアレやコレやとハラスメントを強要するキバタン…。」
マイク先生の写真を憎々しげに睨む安土に、俺は首を傾げる。
「きばたん、とは何だ安土。」
「兄さんは知らなくてもいい知識ですが、オウムの種類の1つです。
鳴き声が喧しくって、この鶏冠がそっくりなんです。」
ほら、と見せられた端末(病院内での使用は禁止だぞ…)で見せられた画像には、白くて黄色い鶏冠を持った大きな鳥がいた。
成程、名前は知らなかったが良く見る種類の鸚鵡だ。
……言われてみるとマイク先生に似ている。
愛嬌がある目元とか、特に。
「こんな感じでけたたましく鳴くんですよ。
体育祭のアナウンスしてた時にそっくりです。」
動画で見せられた"きばたん"とやらは、鶏冠と羽を大きく広げ、凄い声量で鳴いていた。
「…先生を動物に例えるのも良くないぞ。…安土、そろそろ携帯仕舞え。」
「はい、兄さん。」
相変わらず、こういう時だけは素直に聞く。
俺も大概弟に甘いな…。
さて…用事も終えたので、そろそろ暇としよう。
「安土、俺はそろそろ帰るが、お医者様の言う事をしっかり聞いて良い子にしているんだぞ。」
「はい、兄さん!
兄さんもお気を付けて!」
俺は病室の扉を開け、此方を見ている安土に微笑み、その場を去った。