第十二話『勝利のカケラ』
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俺と緑谷殿が観客席に戻ると、会場では決勝戦の結果が決まった後で表彰式の準備へ移っていた。
少し長い間気を失っていた様だ。
緑谷殿に聞いた所、焦凍は二位で勝己は一位になったらしい。
……そう言えば、あの勢いのまま爆豪殿の名を呼んでいるが、後で噛み付かれないか心配だな。
…まぁ、その時はその時で、良いか。
1-Aの皆が俺に声を掛けようと近寄って来たが、それよりも早く俺は係に呼ばれ壇上に上がる事となった。
切島殿の行き場のない手を、俺は見てしまう。
…皆すまぬ。後で沢山語ろうな。
そう言えば、俺は飯田殿と三位決定戦をしなければならない筈だが、飯田殿の姿が見当たらんな…。
何かあったのだろうか。
「それではこれより!!表彰式に移ります!」
ミッドナイト先生がカメラに向かって司会を進める中、皆の視線は一位の勝己へと向けられていた。
……それも、そうだろう。
三位の台の位置から、俺も勝己を見上げる。
「ん゛ん゛ーーーー!!」
「締まんねー1位だな。」
全身を拘束されても尚、鎖を盛大に鳴らし焦凍の方へ吠える勝己。
い、一体決勝戦で何があったというのだ…。
「修羅を通り越して、悪鬼羅刹か…。」
そして、ミッドナイト先生により飯田殿が早退した事を知る。
あそこまで張り切っていたので、少し残念だが…家庭の事情であれば仕方あるまい。
「メダル授与よ!!
今年メダルを贈呈するのは、もちろんこの人!!」
遠くの方で、誰かが跳躍する気配を感じる。
何回転かした後、舞台に降り立ったのは我等がヒーロー、オールマイト先生だ。
……ミッドナイト先生の司会と、台詞が被ってしまったのが何とも勿体ないが、そこはご愛嬌である。
そんなオールマイト先生が、俺の前に来る。
「西椋少年、おめでとう!
正直、君が優勝すると思っていたんだがね。
相性差は兎も角、最後の試合で手が止まってしまったのは…どうしてかな?」
銅色のメダルを俺の首に掛け、オールマイト先生は労る様に抱き締め背中を叩く。
言われた言葉に、俺は苦しい顔をした。
「……俺の甘さが招いた醜態です。
どうしても、友を斬る事が出来なかった。」
「…それは、甘さではなく優しさだと私は思うよ。
だが、それをどう克服するかは君次第だ。
…君は曲がらず、その信念を成長させてくれ。」
オールマイト先生の言葉に、俺は大きく頷き胸元に光るメダルを手に取り見つめた。
焦凍もメダルを受け取り、二三言オールマイト先生と言葉を交わす。
憑き物が取れた顔付きに、オールマイト先生も察したのかグッと力強く抱き締めた。
そして、件の未だ暴れる勝己に向き直る先生。
口の拘束を外し、メダルを用意するが勝己の形相はこの上なく凶悪な物になっていた。
びきびきと勝己の血管が悲鳴を上げ、地の底から這い出でる様な声と表情に、俺は思わず慄く。
「うむ!相対評価に晒され続けるこの世界で、不変の絶対評価を持ち続けられる人間はそう多くない。
受けとっとけよ!"傷"として!忘れぬよう!」
「要らねっつってんだろが!!」
オールマイト先生は無理矢理というか押し付ける様な形で勝己にメダルを掛け……掛け、と言うか咥えさせ、カメラへ向き直る。
「さァ!!今回は彼らだった!!
しかし皆さん!
この場の誰にも
ご覧いただいた通りだ!競い!高め合い!
さらに先へと登っていくその姿!!
次世代のヒーローは確実にその芽を伸ばしている!!」
俺は、オールマイト先生の言葉を噛み締め頷く。
俺自身の課題も、まだまだある中で俺の周りは更に成長していく。
置いてかれぬよう、あわよくば追い越せるよう、気を引き締めなければ。
そして、最後の唱和ですら皆と噛み合わず、オールマイト先生は会場全体から批難の嵐を受けたのだった。
制服に着替え、いつもの教室へ戻る。
相澤先生曰く、明日明後日は休校になるそうだ。
プロの指名等を纏め、休み明けに発表されるらしい。
俺はその言葉に、くたくたの体ではあるが不安と期待で胸を膨らませていた。
だが、これから俺の知らない所で…少しずつ、少しずつ、環境に変化が訪れる事となる。
「なぁ…黒霧…可哀相だよなぁ…。」
「如何しましたか、死柄木弔。」
写真が一枚、ダーツの的に矢で縫い付けられる。
そこには、長い黒髪を一つに結んだ刀を持った少年が映っていた。
「こっちに
だらんと椅子の背もたれに身を預け、にんまりと三日月のように嗤うこの男の真意を……今はまだ誰も知らない。