第十二話『勝利のカケラ』
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剣舞や殺陣と呼ばれても可笑しくない様な爆豪殿との攻防は、激しさを増していく。
それもそうだろう。
爆豪殿は個性を使い汗を流す程、強力になって行く。
体力的に受け流すのもそろそろ限界が近付いて来た。
しかし、対策が無い以上こうして少しずつ爆豪殿に打ち込んで損傷を与えるしかない。
「焦れってェなぁッ!!!!」
ードカァンッ!!
俺の脇腹を、爆豪殿が抉る様に爆撃する。
その強力な攻撃に、呻き声が漏れ思わず身体が傾く。
『おおっと!!西椋!!
爆豪の攻撃がクリティカル!!
こいつぁシヴィー!!!』
会場がどよめき、爆豪殿が吼える。
「さっきっからよぉ!テメェ俺に本気出すのは不十分だってのかよ!!」
「そんな、事は…!!」
胸倉を掴まれ、大きく揺さぶられる。
しかし、それだけで止まらず爆豪殿は苛ついたように捲し立てる。
「
大人しく斬られてやんねェよ!
ナメてんじゃねぇぞ、『大和』!!!」
「……っ!」
俺を投げ飛ばし、此方へ掌を構える。
小さく爆発するそれは、俺にはとても眩しく見えた。
「てめェの本気を
だから!てめェの刀で、真剣で掛かってこい!!」
…俺は……、爆豪殿に、何と失礼な事をしたのだろう。
俺の未熟さ故に、こうまで言わせてしまうとは。
爆豪殿の意思、決意に、俺はしっかりと向き合わねばならない。
立ち上がり、刀を一度納める。
個性を送り込み、俺は居合の構えをとり、決心した。
「……済まなかった、…『勝己』。」
「…来いよ。」
シン…と鎮まり、会場に緊張が走る。
俺達は、同時に走り出し一瞬二人の姿が消える。
鋭い爆発音と、金属音が舞台に響く。
瞬時にお互いの場所が入れ替わり、土煙が舞い沈黙が落ちる。
その時俺は、焦凍に言われた言葉を思い出していた。
対人戦闘訓練の時に言われた、あの言葉。
『大和は甘いとこあるよな。』
『…もし仲間だった奴が敵になったら、絶対斬るか迷うだろお前。』
俺の身体が、ぐらりと揺れる。
結んでた髪紐が爆撃で焦げ、ぶつりと切れた。
ばさりと自身の髪が視界を遮る。
刀を支えにし、片膝が着いた状態で…俺は悟った。
「……矢張り、俺は…甘いなぁ…。」
勝己に、斬り掛かる事は出来た。
只、刀を抜く瞬間に手が止まってしまったのだ。
胴から真っ二つになり血の海に沈む勝己を想像してしまい、案の定躊躇したのだ。
それ程の隙があれば、攻撃を受けるのは訳無かった。
勝己の身体には、刀傷はほぼ無いに等しい。
それはそうだ、俺が後一歩踏み込めなかったからだ。
対して俺の鳩尾は、容赦の無い爆撃による傷でぼろぼろになっていた。
「大和、テメェ…!!」
俺の意識は、そこでぷつりと途切れる。
全ての音が遠のく中、勝己の吼える声だけは耳にこびり付いて離れなかった。
気付いたらリカバリーガール殿の所で、寝台に横たわっていた。
これは、俺の甘さが招いた敗北…。
「……敗けるのは、父上ぶりだ…。」
未だ割り切れない自身に歯痒さを感じ、俺の視界は滲む。
それを拭い、寝台から起き上がる。
腹等は治療されており、倦怠感はあるものの違和感無く動かす事が出来た。
「西椋君!!!」
「…緑谷殿。」
両腕にギプスを付けた緑谷殿が、勢い良く医務室に入って来る。
俺が起き上がっているのを見て、緑谷殿がほっと息を着いた。
「その、…惜しかったね。」
「否、惜しくも何ともない。
大丈夫だ緑谷殿。…次は、もう少しましな戦いをしよう。」
俺より泣きそうな顔をする緑谷殿の、その乱雑な頭をぽふぽふと叩く。
わわっと首をすぼめる緑谷殿に、そう言えばと改めて向き直る。
「緑谷殿、焦凍のしがらみを打ち砕いて頂き、誠に感謝する。
幼馴染である俺からも、礼を言わせてくれ。」
「えっ、えぇ!?あ、頭を上げてよ西椋君!!
ぼ、僕はそんな…!!大した事はしてないんだ…!!」
慌てる緑谷殿に、俺はゆっくりと頭を上げそれでも、と続けた。
「俺の長年の想いも、緑谷殿のお陰で救われたのだ。」
その言葉に、緑谷殿の大きな翠色の瞳が一度揺らめく様に煌めいた。