第十二話『勝利のカケラ』
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俺が席に戻って来た頃、丁度爆豪殿と切島殿の対決が見せ場となっていた。
お互いの拳を交差させ、二人の肉弾戦は激しくなっていく。
切島殿の硬化は爆豪の爆破を難無く受け止め、切島殿による反撃を許している。
しかし十八番が効かない事に怯むこと無く、爆豪殿は爆撃を畳み掛けていた。
「お!お疲れ西椋ー!カッコ良かったなー!!」
「あぁ、有難う。」
近くに居た上鳴殿や瀬呂殿が俺の肩を叩く。
焦凍も此方を見て、手を一度上げた。
俺は自身の手と焦凍の手を、ぱちりと重ね、片手で所謂ハイタッチをする。
「俺の氷使ったんだな。」
「丁度足元に転がっていたのでな。」
悪戯っぽく笑い、焦凍に軽く礼を言って俺は席に着く。
その短い間に何があったのか、会場ではぐらりと切島殿の身体が傾く。
「てめぇ、全身ガチガチに気張り
その状態で速攻仕掛けてちゃ、いずれどっか
「くっ…」
切島殿の弱った瞬間を見逃す筈もなく、爆豪殿は攻撃を絶やさず寧ろ苛烈に攻め続ける。
「死ねえ!!!」
強烈な爆発を切島殿に浴びせ、爆豪殿が第三回戦へと出場した。
時間が経過する事で更に威力を増していく爆豪殿は、持久戦になるとその強さが輝くな。
「…次の対戦相手は、爆豪殿か…。」
今まで以上の強敵に、俺は気を引き締めた。
そして、この戦いで遂に体育祭の上位四名が決定したのだ。
その中に焦凍は勿論、俺も居る。
舞台の修繕が終わり、次の試合へ移行する。
そこに立っているのは、二人共俺の親しい人物だ。
『お互いヒーロー家出身のエリート対決だ!
飯田天哉 対 轟焦凍!!』
開始の合図が会場に響き渡り、焦凍がまたしても開始早々氷結を御見舞する。
しかし、飯田殿もそれを予見していたのか、見事な立ち幅跳びで避けた。
そして、飯田殿の脚を超加速させた蹴りを一度避けられても尚、止まること無く焦凍の脳天に決める。
その早業に観客からは大きなどよめきが聞こえた。
焦凍の背中を掴み、場外へと向かう飯田殿だが、その脚が急に止まる。
自慢の脹脛を見てみると、焦凍の氷が通気口を塞いでいた。
そうか…蹴りの時に焦凍はあそこだけ凍されたのだな。
ぱきぱきと急速に全身を凍らされた飯田殿は、身動きをとる事が出来ず、焦凍との勝負に敗れてしまった。
まだ焦凍の中で迷いがあるのか、この戦いで炎を使う事はなかった…。
俺は立ち上がり、控え室へと向かう。
焦凍が出した氷結を溶かし乾かすまで、今暫く掛かるだろう。
控え室に入り、考えを巡らせる。
爆豪殿はどの様な小細工も、真正面から打ち崩してくるだろう。
だから、今までの様な小手先勝負では叶わない。
真剣で切り捨てるか引き刃で骨を折るかでないと、爆豪殿は引き下がらないだろう…。
だが、俺としてはその様な人道に外れた『試合』はしたいと思わない。
しかし、爆豪殿の性格上俺が手加減をすると激情する事は火を見るより明らかだ。
八方塞がりな俺は、考えに行き詰まる。
その時、丁度名を呼ばれ重い腰を上げて、舞台へと向かった。
『さぁて!お待ちかねのこの対決!!
戦闘に特化した個性の二人が登場だ!
インポッシブルな試合を期待してるぜ!!
爆豪 VS 西椋!!』
威嚇する様に口角を上げ、此方を睨む爆豪殿。
俺もその表情に気を引き締め、個性を発動させ愛刀を引き刃に変えた。
「やっとテメェをブッ潰せるぜ西椋…!!!」
「…いざ、尋常に。」
『START!!!』
爆豪殿は片手を勢い良く爆発させ、此方へ突撃してくる。
右手を大きく振るい、攻撃を仕掛けてきた。
俺はそれを刀を構えた状態で避け、爆豪殿のガラ空きとなった背中側に愛刀を振るう。
しかし、それは爆豪殿の機敏な動きと爆風で防がれた。
尚も幾度か斬り込むが、両手の爆発で刀身を跳ね除け、当たること無く逸らされる。
流石爆豪殿、反射神経は俺より上手か。
俺が眉間に皺を寄せると、爆豪殿は幾分か気分良さそうにした。
「個性の相性的に手も足も出ねぇってか?
ハッ!!そんな棒きれで俺が遅れを取るかよ!!」
「……その様だな。」
俺は一旦距離を取り、居合の構えを取る。
爆豪殿はそれを楽しそうに見ている。
どのような攻撃が来るか、見定めているのだろう。
そして、それを捩じ伏せるのが楽しみ…と言った所か。
しかし、それに俺が怯む訳なく縮地で爆豪殿の目の前に跳び、居合で何十回と打ち込む。
だが、その幾つかは爆発で弾かれてしまった。
爆豪殿を切り抜け、損傷具合を確認するが多少打撲痕はあるも、自慢の強靭さで平然と立っていた。
「んだこの生っちょろい攻撃はよォ!!
速ぇが見慣れちまえばそうでもねぇしな!!」
「…修羅の様な男だ。」
今度はこっちから行くぜ…という言葉と共に、爆風に乗せて突撃する爆豪殿を、俺は刀身を横に構えその拳を防いだ。
ーガキンッ!!
目の前で爆発するその拳に、俺の額から冷や汗が流れる。
この男相手に、俺はどうするべきなのか。
未だに無血での勝ち筋が見えないでいた。