第十二話『勝利のカケラ』
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飯田殿と塩崎殿の対決は、飯田殿の勝利で終わった。
飯田殿の勇姿を控え室のモニターから確認し、俺は舞台へと向かう。
御相手の常闇殿はほぼ死角無しの個性、
俺の様に近接型という訳でもなく、各方面の攻撃にも対応出来、味方であれば心強い存在だ。
そう、味方であれば。
今回は一体一の真剣勝負である。
しかし、幸いに常闇殿の個性は以前の対人戦闘訓練で、何度も見る事が出来た。
故に、これは仮説となるがきっと
こう結論が出た理由としては、本人からの説明でも聞いていたが、戦闘訓練の際に柱の影や大きな家具の影等からの攻撃が、とても素早く強力なものだったからだ。
反対に、日が当たる窓側へ移動した際
この仮説が当たっている事を祈るが、これが当たった所で、俺の個性では光を生み出す事は出来ない。
戦略を練り直そうとした、その時。
がつ、と足先に何かが当たった。
その正体を確認して、瞬時に閃いた俺は一つの勝ち筋を浮かべた。
初の試みにはなるが、やってみる価値はあるだろう。
俺は舞台に上がる為、歩を進めた。
『スピード勝負で這い寄る黒い影!!
今回もクールにキメろよ!1-A 常闇踏陰!!』
向こうにいる常闇殿が、此方に礼をするのに合わせ俺も礼をする。
『次も凄技の剣戟魅せてくれよ!!
向かうとこ敵無し!1-A 西椋大和!!』
愛刀に個性を宿らせ、俺も抜刀の構えになる。
お互いに言葉は無く、空気が張りつめる中、開始の合図を待った。
『START!!!』
合図と共に
それを愛刀で去なし、常闇殿との距離を詰めようと跳ぶ。
しかし、それは更に後ろから追撃しようと這い寄る
ーガキンッ!
即座に回転し、後ろに居た
爆豪殿程では無いかもしれんが、反射神経には自信がある。
しかし、こうも攻めが続けば防戦一方となり本体には届かんな。
一進一退は続き、金属音が舞台を中心に幾度も鳴り響く。
その度に会場は盛り上がっていた。
何度か打ち込み斬りつけるも、
居合で深く斬り付けても、何処吹く風である。
「矢張り、厄介だな
「ソウダロウ、ソウダロウ。」
誇らしげに胸を張る黒影を見つめ、刀を構え直す。
昼間でこれ程の威力ならば、夜にはどうなるのだろうか…。
「このままでは俺も埒があかん。」
「同意。幾らその琥珀の太刀で斬ろうとも、俺の
『すげェ身体能力で
遂に侍も万事休すかぁー!!?』
マイク先生が実況で俺を煽る。
常闇殿も今が好機と、
俺は、それがゆっくりに見えて来る程に集中する。
懐の手拭いで包んだ『それ』を取り出し、愛刀の刃に擦り付けるように柄側から剣先掛けて、滑らせる。
その瞬間、刃が冷気を持ち、俺の姿を透過出来る程の煌めきを放つ。
手拭いの中に隠していた、随分小さくなってしまった氷結の欠片を舞台に放る。
あの時足元に当たったのは、焦凍が何度も空気を凍らせ攻撃した氷結の一部。
舞台の出入口まで来ていた氷結。
溶かしそびれたそれを見て、俺は一つの作戦を思い付いた。
「氷の刃…初めてだったが…意外と様になるものだな。」
『ザ・イリューージョン!!?
西椋の刀が氷柱みたいになっちまったぞ!?
そんな事も出来んのか西椋!!』
場内がどよめき、常闇殿も一旦突撃を止め戸惑っていた。
それもそうだろう。
今の愛刀は、通常の真剣状態よりも大分激しく、照りつける日光と炎の揺らめきにより眩く光っているのだから。
「……覚悟はいいか、
「オ、オタスケーー!!」
涙目で常闇殿の後ろへと隠れてしまった
その大きな隙を、俺は見逃す筈は無かった。
縮地で常闇殿の懐に潜り込み、刀の峰に持ち替え、俺は常闇殿の胴を思いっ切り薙ぎ払った。
「グッ…!!!」
俺の渾身の力で常闇殿は吹っ飛び、地面に叩き付けられる。
それを俺は追い、仰向けになっている常闇殿の上に、俺は片膝を付く形で乗る。
眩い愛刀を怯える
「常闇殿、年貢の納め時だ。」
「…くっ、……参った。」
悔しそうに常闇殿が宣言し、それを聞いた俺は上から退く。
ミッドナイト先生が、その声を聞き高らかに宣言した。
「常闇くん降参!西椋くん、第3回戦進出!!」
俺はそれに一息付き、愛刀の個性を解いて常闇殿に向き直る。
くすんくすんと涙目の
「済まぬな
一か八かの賭けだったのだ。」
「否、見事な個性の応用だった…完敗だ。」
そう苦笑する常闇殿だが、俺は彼の強さを本当に尊敬している。
今回の勝負も、焦凍の氷が残っていなければ俺は只防戦一方で、常闇殿の隙を窺う事しか出来なかっただろう。
そして、常闇殿はまだまだ強さを秘めている事も俺は知っている。
日が傾いている時であれば、俺の勝率はぐんと低くなるだろう。
「常闇殿との勝負、とても有意義なものであった。」
「ああ。次の試合でも俺の分まで頑張ってくれ、西椋。」
お互いに固く握手をし健闘を讃え、歓声に湧く舞台を後にした。