第十一話『奮え!チャレンジャー』
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麗日殿が、爆豪殿を浮かせる為に速攻をかける。
爆豪殿はそれを避ける事なく、右手を大きく振りかぶり麗日殿に爆撃を噛ます。
容赦無い攻撃に、観客席の一部からは畏怖の声が上がる。
爆撃による煙幕が広がる中、麗日殿は体操服を囮に隙を衝く。
しかし、爆豪殿は自慢の反射神経でそれを攻撃と共に回避した。
「触れなきゃ発動出来ねぇ麗日の"個性"。
あの反射神経には、ちょっと分が悪いぞ…。」
冷静に解説する声が、非情な現実を突き立てる。
だが麗日殿は何度も何度も、爆豪殿に突撃して行った。
周りが思わず青ざめ、目を塞いでしまう程に。
俺はその時、目の前に浮いてきた石に気を取られる。
つられる様に上空を見ると、成程と合点がいった。
麗日殿は、只闇雲に攻撃している訳では無い。
それに気付いた瞬間、一部の観客席から爆豪殿への批難の声が上がる。
しかし、その声を打ち消す様に相澤先生が喝を入れた。
『ここまで上がって来た相手の力を、認めてるから警戒してんだろう。
本気で勝とうとしてるからこそ、手加減も油断も出来ねえんだろうが。』
相澤先生の言葉に、俺は少し安心する。
あの爆豪殿の心境を、先生はしっかり理解しているのだ。
本当に相澤先生は、生徒を良く見ている。
そして、麗日殿は空中に蓄えていた勝利の一手を、遂に発動させた。
無数に降り注ぐ隕石の様な瓦礫を、盾と矛にし爆豪殿に突撃する。
しかし、その策は爆豪殿の大規模な爆発によって打ち砕かれた。
周りに激震が走る。
『会心の爆撃!!
麗日の秘策を堂々ーー正面突破!!』
麗日殿は吹き飛ばされ、蹲るが爆豪殿を見据えまた突撃体制に入る。
それを真っ向から迎撃しようとする爆豪殿だが…。
麗日殿の膝が、かくりと力を無くした。
個性の許容量を、とっくのとうに越してしまっていた麗日殿は倒れ込む。
ミッドナイト先生が状態を確認し、無情にも爆豪殿の二回戦進出を宣言した。
麗日殿が担架で運ばれ、これにて一回戦が一通り終了となり小休憩となった。
観客席に爆豪殿が戻って来て、俺の隣に居た瀬呂殿が声を掛ける。
矢継ぎ早に生徒達それぞれが感想を述べるが、それを全て無視し俺と真反対の席にどかりと座った爆豪殿は、独り言ちた。
「どこがか弱ェんだよ。」
麗日殿の強かさを、俺はこの試合で知る事が出来た。
常々思うが、人は見かけによらない。
俺は前へ向き直り、次の試合へ意識を向けた。
舞台の中央にはコンクリートで作られた台があり、引き分けとなった切島殿と鉄哲殿の腕相撲が始まった。
二人はがっつりと腕を組み、渾身の力を振り絞りその腕を倒そうとする。
その度に激しい音が鳴り、コンクリートの台にはひびが入って行く。
二つの腕は微動だにせず、暫く続くかと思われた腕相撲だったが、コンクリートとは別の『ぴき』という音が聞こえた。
その瞬間、切島殿が盛大に腕を叩き付ける。
勝利が決まった切島殿は大きく雄叫びを上げ、好敵手となった鉄哲殿殿と固く握手を交わしたのだった。
第二回戦、緒戦の二人を俺は複雑な顔で見つめる。
『今回の体育祭両者トップクラスの成績!!
まさしく両雄並び立ち、今!!
緑谷
開始早々、焦凍が氷結を繰り出し緑谷殿に迫る。
その氷結を緑谷殿は、指を弾く事で衝撃波を出し打ち砕いた。
衝撃波による強い風が会場内を駆け巡る。
今まで氷結を打ち消した生徒を見なかったマイク先生や観客達が、大いに声を上げる。
…また緑谷殿は指を犠牲にして…。
きっと焦凍の隙を読む為に、ああしているのか。
早く緑谷殿には、個性を調整出来る様になってもらわんと…見ている此方が気が気じゃない。
「ゲッ、始まってんじゃん!」
「切島殿、二回戦進出おめでとう。」
上鳴殿と共に手を挙げて祝う。
それに切島殿はにこやかに返し、爆豪殿に声を掛けお互いに軽口を叩いていた。
「おめーも轟も、強烈な範囲攻撃ポンポン出してくるからなー…。バーっつって。」
「ポンポンじゃねえよ。ナメんな。」
切島殿の言葉に、爆豪殿は冷静に返す。
俺はゆっくりと爆豪殿の方向を見つめた。
「筋肉酷使すりゃ筋繊維が切れるし、走り続けりゃ息切れる。
"個性"だって身体機能だ。
奴にも何らかの"限度"はあるハズだろ。」
なぁ?と爆豪殿が俺を睨む。
幼馴染である俺が、焦凍の限度を知っていると思って投げ掛けたのだろう。
生徒達が俺を見ているが、俺はそれに黙する事で応えた。
「考えりゃそりゃそっか…。
じゃあ緑谷は瞬殺マンの轟に…耐久戦か。」
次々に繰り出される氷結を、痛々しくも打ち消して行く緑谷殿。
遂に焦凍も近接攻撃へ持ち込み、足を凍らされそうになった緑谷殿が、咄嗟に腕を振るい凄まじい衝撃波を出す。
そして、俺は気付いてしまった。
焦凍の体に霜が降りている事に。
「焦凍……。」
そろそろ熱を出して調節しなくてはならない筈だ。
だが、焦凍は頑なに炎を使わない。
俺は観客席の一箇所に注目する。
遠くからでも分かる、赤い炎を体に纏わせた焦凍の父…エンデヴァー殿を眺めた。
案の定、エンデヴァー殿は腑に落ちない表情をしている。
今の焦凍はその顔を見ただけでも、少し気が晴れるだろう。
しかし、俺としては早くそんな意地なんて捨てて欲しいと願っていた。