第八話『逆襲のヒーローズ』
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演習場内に静けさが戻り、俺も個性を解除した。
…だが、今日だけで何度も個性を使った今までの反動からか、精神力が限界だった様で、俺はその場でフラついてしまう。
何とか倒れまいと木刀に戻った愛刀を地面に刺し片膝を付いた。
「ぐ……。」
酷い耳鳴りと目の前が強く乱反射する光景に、己の未熟さを痛感した。
その後方で、緑谷殿とオールマイト先生が語らっていた内容を知る事はなく、俺は少しばかり目を瞑りその場で安静にしていた。
暫くして、少しだけ落ち着いて来たので立ち上がろうとすると、切島殿が此方へやって来る気配がした。
「緑谷ぁ!!西椋ぅ!!大丈夫か!?」
しかし、切島殿が此方へ来ることは叶わず。
俺の真後ろと切島殿の前方に、突如として現れた壁によって阻まれたのだった。
「…?」
「生徒の安否を確認したいから、ゲート前に集まってくれ。
ひどいケガ人の方は、こちらで対処するよ。」
少し切島殿の方に歩くと、セメントス先生が居た。
成程、セメントス先生の個性であったか。
「切島殿、すまないが肩を貸してくれ…。」
「に、西椋大丈夫か!!?」
「少し疲れただけだ…。」
切島殿の頼もしい肩を貸してもらいながら、治まってきた目眩と耳鳴りが早く止むように祈る。
ゲート前に向かいながら、他の生徒達が大丈夫だったか今更心配になって来た。
「大和…!!」
俺が個性を使い過ぎたのを感じ取った焦凍は、俺の前に現れさっと目元を左手で覆う。
湯たんぽの様な温かさに調節された左手を、俺は甘んじて受けた。
「…面目ない焦凍。もう大丈夫だ。」
「無茶すんなよ…。お前飛び出してって肝冷えたんだぞ…。」
全員が集まり、皆の無事を確認する。
肩を借りていた切島殿にも礼を言い、警察の到着を待った。
「16…17…18………。
両足重傷の彼を除いて、ほぼ全員無事か。」
各々が小さな傷があるも、全員がしっかり己の足で立ち警察の指示を待っていた。
火事演習場で出会った尾白殿もその後探索を続けていてくれた様で、本当に有難く思った。
青山殿は相変わらずマイペースであり、生徒達は情報交換でそれ所ではなく無視する様な形になってしまったが、結局青山殿は答えをはぐらかしていた。
…何がしたかったんだろうか。
「え、大和君!?」
「…塚内殿、久しく。」
警察の何人かに顔見知りが居るとは思ったが、まさかこの場で塚内殿に出会えるとは思わなかった。
生徒の何名かが、俺と塚内殿が親しく話しているのを見て驚いている。
「西椋君、刑事さんとお知り合いなのかい!?」
「あぁ。家が道場で、父上が警察の訓練で貸し出しているのだ。指導も行っている。…そこで知り合った。」
成程!と不思議な動きで納得する飯田殿と、それを聞いていた生徒達はへぇーと小さく驚いていた。
「警察って、そういえば剣道するんだっけ!」
「柔道とか空手とか、護衛術の一環でやるらしいね。」
葉隠殿と尾白殿がそう呟いているのを横目に、塚内殿と向き直る。
「最近忙しくて来れなかったけど、またご指導宜しくね大和君。」
「…はい、その時は。」
はははと感情の起伏が乏しい表情で笑われ、取り敢えず俺達1-Aは教室へと戻る事となった。
……相澤先生は、幸い脳系の損傷は見受けられなかったものの、両腕の粉砕骨折・顔面骨折…。
また、眼窩底骨という所が激しく傷付き、もしかしたら何かしらの後遺症か残るかもしれないとの事だった。
13号先生、オールマイト先生共に命の別状は無いが中々に大怪我を負った。
脳無は警察によって確保されたが、あれ程の損傷がもう再生されており、呼び掛けには一切応じること無く…有力な情報を得るのは難しいかもしれない。
俺は、今回でらしくもなく『たられば』を脳内で繰り返す。
あの時目を離していなければ…もう少し早く着いていれば…手当も万全なものであれば…、相澤先生はもう少し良い状態だったかもしれない。
過ぎたものは仕方が無いし、子供がどうこう出来るものでも無かった。
そう反対側では思うも、俺自身が納得出来ずに居たのだ。
「もっと、…強くなる…。」
手を血が滲む程強く握りしめ、己の力を再度高めていく事を誓った。