第八話『逆襲のヒーローズ』
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蹴破られた扉の前に仁王立ちする、我等のヒーロー。
オールマイト先生は、いつもの笑顔ではなく修羅の表情で、ネクタイを引きちぎった。
「待ってたよヒーロー。
社会のゴミめ。」
そう罵る死柄木だが、他のゴロ付き達はオールマイト先生の迫力に尻込み始めていた。
先生は、そんなゴロ付き達を瞬く間に手刀で仕留め、安置させていた相澤先生を確認する。
「相澤くん、すまない。」
一言そう謝り、そして俺達の方を向く。
その凄まじい覇気を纏った眼光に、敵も俺達も気圧され、気付いた時には皆を抱えていた俺が浮き上がっていた。
一瞬で、先生は俺達を安全な所に連れて行ったのだ。
「西椋少年、ありがとう。
よく頑張ってくれた。
相澤くんの手当は、君がしたんだろう?」
俺達を相澤先生の近くに降ろし、俺の肩に置いたオールマイト先生の大きな手を、俺は見つめた。
「…これくらいしか、出来なかったもので…」
もう少し早く着いていれば…と、少し悔しく思いながら俺は歯をくいしばる。
その感情を、オールマイト先生は肩を叩く事で慰めた。
「充分さ。…さぁ、
皆入口へ、相澤くんを頼んだ。
意識がない、早く!!」
戸惑う峰田殿を他所に、俺は死柄木を警戒する。
向こうも奪還間際に攻撃をされた様で、顔に張り付いていた手を落とし、動揺していた。
しかし、大した損傷は無いらしく未だに余裕綽々の様子だ。
緑谷殿が心配そうにオールマイト先生を引き留めようとするも、それを先生はいつもの笑顔と、茶目っ気のあるVサインで跳ね返した。
そして先生は、一瞬で脳無と死柄木に向かって行く。
しかし、巨体に合わぬ速さで前へ躍り出た脳無によって死柄木への攻撃は届かなかった。
「マジで全っ然…効いてないな!!!」
オールマイト先生はそう言いながらも、攻撃の手を止めない。
俺達はその間に、相澤先生を担いで移動を始めた。
物凄い勢いの爆発が起きる。
後ろを向いていた為見えなかったが、峰田殿曰くばっくどろっぷとやらを脳無に決めたらしい。
生徒達は、オールマイト先生の登場に安心しきって、特に峰田殿は盛り上がっている。
だが緑谷殿の表情は、依然暗いままだ。
「…緑谷殿?」
歩を止めてしまった緑谷殿に声を掛ける。
その視線の先が気になり緑谷殿と同じ方向を見ると、そこには目を疑う光景が見えた。
ばっくどろっぷをしたであろう先生を、脳無は黒霧の靄を使い回避し、先生のガラ空きになった脇腹を、深く抉るように指を食い込ませていたのだ。
そのまま靄に引きずり込もうとする黒霧を見て、緑谷殿が飛び出す。
その行動に俺は慌てて、梅雨殿に担いでいた相澤先生を任せた。
「オールマイトォ!!!!」
「緑谷殿…!!!」
衝動的に飛び出す緑谷殿の前に、黒霧の靄が現れる。
俺は急いで緑谷殿に手を伸ばそうとしたその時。
横から現れた、白金の色。
「どっけ、邪魔だ!!デク!!」
爆発を勢いよく黒霧にかまし、本体と思わしき部分を地面に押さえ付ける爆豪殿。
それと同時に、脳無の半面が凍り動きが止まった。
「てめェらが、オールマイト殺しを実行する役とだけ聞いた。」
「焦凍!」
焦凍の言葉を聞いた瞬間、死角から切島殿が現れ死柄木に攻撃をしようとするが、敢無く避けられる。
「くっそ!!!いいとこねー!」
「スカしてんじゃねえぞ、モヤモブが!!」
「平和の象徴は、てめェら如きに殺れねえよ。」
戦闘に有利な三人が合流し、緑谷殿に安堵の表情が浮かぶ。
俺は気を取り直し、三人が作ったその隙を充分に活用させて貰った。
とん、と脳無の拘束から逃れようとするオールマイト先生の前に行く。
先生に見えるように、己の人差し指を口の前に持っていった。
静かに、とオールマイト先生に伝える。
『動かないでくだされ』
そう、口を動かして伝えると先生は手を脳無から離してくれた。
ーッズパン!!
低い位置にある脳無の両手首を、まるで草刈りの様に切り落とし、先生を拘束から解く。
「助かった、西椋少年…!!」
「お気になさらず。」
素早く距離を取る俺と先生は、死柄木を睨む。
しかし、死柄木に焦った様子は見受けられず、寧ろ此方を嬉々として眺めていた。
その間、爆豪殿が黒霧の弱点を理論立てる。
…成程、初めて会った時の発言から読み取ったのか。
矢張りキレやすいが冷静だな爆豪殿…。
どうにか反撃しようとする黒霧だが、爆豪殿はそれを許さない。
「「怪しい動きをした」と俺が判断したらすぐ爆破する!!」
「ヒーローらしからぬ言動…。」
「顔がこの中で一番凶悪だな…。」
まるで爆弾魔の様な発言に、切島殿共々爆豪殿に突っ込んだ。
「攻略された上に全員ほぼ無傷…。
すごいなぁ、最近の子どもは…。
恥ずかしくなってくるぜ
軽口を叩きながらも飄々とした様子の死柄木は、半分凍った状態で手を斬られている脳無に、爆豪殿への攻撃を命じる。
その命令に脳無は嫌がる素振りを見せる事もなく、人形の様に凍った体を崩しながら立ち上がった。
余りの逸脱した行動に、俺達は慄く。
そして、俺が確かに斬った手は、焦凍が凍らせた半身は、瞬く間に『再生』されたのだった。
個性を、二つ以上持たせ改造させた超高性能サンドバッグ人間…。
どの様にして作られたか等は知りたくもない。
その悍ましい存在に目を奪われていた俺は、爆豪殿の危機に気付くのが遅れてしまった。
咄嗟にオールマイト先生が、爆豪殿を庇う。
同時にやって来たとてつもない爆風に俺達は吹き飛ばされぬよう耐える。
隣を見ると、庇われた爆豪殿がそこにいた。
良かった…と、思わず胸を撫で下ろす。
しかし、脳無の攻撃を防御した先生は立ってはいたが、吐血し遠くまで飛ばされていた。
「…………加減を知らんのか…。」
「仲間を救ける為さ。しかたないだろ?
さっきだって『西椋君』?が、脳無たたっ斬ってたし。
それにホラそこの…あーーー…地味なやつ。」
俺はいつの間に名前を知られていたんだ?
そういえば、水辺で三人を抱える際に緑谷殿が名を呼んでいたか。
敵に名を呼ばれても、嬉しくはないがな。
「あいつが俺に思いっ切り殴りかかろうとしたぜ?
他が為に振るう暴力は美談になるんだ。
そうだろ?ヒーロー?」
緑谷殿を指差し、己を正当化させようとする死柄木。
次から次へと出てくる暴論に、俺は頭が痛くなってきた。
「何が平和の象徴!!
所詮抑圧の為の暴力装置だおまえは!
暴力は暴力しか生まないのだと、お前を殺すことで世に知らしめるのさ!」
そんな死柄木に、オールマイト先生は冷静に反論する。
「めちゃくちゃだな。
そういう思想犯の眼は静かに燃ゆるもの。
自分が楽しみたいだけだろ。
嘘吐きめ。」
「バレるの早…。」
顔を見なくとも分かる。
論破されたのにも関わらず、今死柄木は愉しそうにニタリと嗤った。