第一話『侍少年:オリジン』
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手入れの行き届いた雄大な松の木が一本。
近くには、大きく平らな石で周りを縁どった池に、立派な錦鯉が数匹悠々と泳いでいる。
燦々と照りつける日差しも、この庭園では幾分か涼しく感じた。
蝉の声も、縁側に吊るした風に揺れる風鈴の音も、この空間を彩るものである。
広々とした日本庭園には緑が多く、桜・梅・椿等ここに務めて50年の、少しばかり頑固な庭師が丹精込めて手入れしたものばかり。
そんな庭園には、今年で4歳になる黒髪の幼子が一人。
幼子の前には藁で作られた太い案山子の様なものがそびえ立っていた。
どうやら稽古をしているらしく、幼子こと西椋 大和の手には竹刀が握られている。
まだ一般的には足取りが覚束無い年齢なのだが、大和はしっかりと地面を踏みしめ竹刀を握る小さな手は掌の豆を守るテーピングがいくつも巻かれていた。
見据える先は、目の前の案山子である。
「……!面ッ!!」
竹刀を振り上げ案山子に打ち込む、その強さは子供とは思えない威力の音がする。
何度か打ち込む大和の少し先にある縁側を、着物を着た風格のある男性が歩く。ふと、大和に注目し一文字だった口を開けて一声かけた。
「大和、少し集中力が切れているぞ。蝉の声にでも乱されたか。…暫くしたら休憩しなさい。」
「はい!父上!」
着物の男性は大和の父、武志でありこの庭園の先にある、数百年の歴史ある道場の師範代である。
肩書きからはとても堅苦しい雰囲気を感じるが、武志は思慮深く子供を大切にする父親だ。
第一子である3つ離れた姉の弥生は家事と読書に夢中なインドア派だが、大和は体を動かす事が何よりも好きな様で、そんな我が子が熱中症にならないよう、庭に出ている大和をこうやって時折見に来る。
汗が滲む大和を見ながら、母である巴に麦茶の用意を伝えておかねばと心に留めていた。
そんな父が誇らしいのか、大和の目は星空の様にキラキラとしていた。
武志はその返事に笑みを浮かべ、また縁側を歩いて離れていく。
尊敬する父に声をかけられた大和は、案山子に向き直り少し目を閉じる。
ぴんと張られた糸のように空気が洗練され、ゆっくりと瞼を持ち上げて、銀に煌めく瞳が案山子を捉えた。
一気に踏み込み、竹刀を振り上げる。
懇親の一撃を与えた大和は違和感を感じた。
案山子を打ち込んだ感覚ではなく、文字通り『斬った』と感じたからだ。
後ろを振り向くと、そこには見事に一刀両断された案山子がある。
思わず、年相応に叫んだ。
「ち、ち、父上ぇえ!!母上ぇえ!!」
これが、西椋 大和の個性『侍』が宿った瞬間である。
近くには、大きく平らな石で周りを縁どった池に、立派な錦鯉が数匹悠々と泳いでいる。
燦々と照りつける日差しも、この庭園では幾分か涼しく感じた。
蝉の声も、縁側に吊るした風に揺れる風鈴の音も、この空間を彩るものである。
広々とした日本庭園には緑が多く、桜・梅・椿等ここに務めて50年の、少しばかり頑固な庭師が丹精込めて手入れしたものばかり。
そんな庭園には、今年で4歳になる黒髪の幼子が一人。
幼子の前には藁で作られた太い案山子の様なものがそびえ立っていた。
どうやら稽古をしているらしく、幼子こと西椋 大和の手には竹刀が握られている。
まだ一般的には足取りが覚束無い年齢なのだが、大和はしっかりと地面を踏みしめ竹刀を握る小さな手は掌の豆を守るテーピングがいくつも巻かれていた。
見据える先は、目の前の案山子である。
「……!面ッ!!」
竹刀を振り上げ案山子に打ち込む、その強さは子供とは思えない威力の音がする。
何度か打ち込む大和の少し先にある縁側を、着物を着た風格のある男性が歩く。ふと、大和に注目し一文字だった口を開けて一声かけた。
「大和、少し集中力が切れているぞ。蝉の声にでも乱されたか。…暫くしたら休憩しなさい。」
「はい!父上!」
着物の男性は大和の父、武志でありこの庭園の先にある、数百年の歴史ある道場の師範代である。
肩書きからはとても堅苦しい雰囲気を感じるが、武志は思慮深く子供を大切にする父親だ。
第一子である3つ離れた姉の弥生は家事と読書に夢中なインドア派だが、大和は体を動かす事が何よりも好きな様で、そんな我が子が熱中症にならないよう、庭に出ている大和をこうやって時折見に来る。
汗が滲む大和を見ながら、母である巴に麦茶の用意を伝えておかねばと心に留めていた。
そんな父が誇らしいのか、大和の目は星空の様にキラキラとしていた。
武志はその返事に笑みを浮かべ、また縁側を歩いて離れていく。
尊敬する父に声をかけられた大和は、案山子に向き直り少し目を閉じる。
ぴんと張られた糸のように空気が洗練され、ゆっくりと瞼を持ち上げて、銀に煌めく瞳が案山子を捉えた。
一気に踏み込み、竹刀を振り上げる。
懇親の一撃を与えた大和は違和感を感じた。
案山子を打ち込んだ感覚ではなく、文字通り『斬った』と感じたからだ。
後ろを振り向くと、そこには見事に一刀両断された案山子がある。
思わず、年相応に叫んだ。
「ち、ち、父上ぇえ!!母上ぇえ!!」
これが、西椋 大和の個性『侍』が宿った瞬間である。