第七話『救助訓れ、』
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「すっげーーーー!!USJかよ!!?」
「……アメリカ合衆国?」
「それはUSAだよ西椋君…。」
バスから降りて辿り着いたそこは、まるで遊園地の様な所だった。
緑谷殿に横から言われたが、USJという遊園地が関西の方にあるらしい。
成程、一つ勉強になった。
「水難事故、土砂災害、火事……etc.
あらゆる事故や災害を想定し、僕がつくった演習場です。
その名も……
…むむ、頭文字はUSJではないか!
そう思いながらこの施設を自慢げに紹介するのは、スペースヒーロー13号先生だ。
ファンの麗日殿曰く、災害救助で目覚しい活躍をしている紳士的なヒーローだそうで、俺は好感が持てた。
しかし、最初の説明ではオールマイト先生もいたはずだが、何処かで手違いでもあったのだろうか。
「えー始める前に、お小言を一つ二つ…三つ…四つ…」
増えておる…増えておるぞ…。
「皆さんご存知だとは思いますが、僕の"個性"は"ブラックホール"。
どんなものでも吸い込んでチリにしてしまいます。」
「その"個性"で、どんな災害からも人を救い上げるんですよね。」
緑谷殿が補足し、麗日殿が残像が見える程に頷いている。
…成程、強力で素晴らしい個性だ。
否、13号先生がそれを『人を救う為』に使うと決めた事が、何よりも素晴らしい。
「ええ…。しかし、簡単に人を殺せる力です。
皆の中にもそういう"個性"がいるでしょう。」
俺は、その言葉にどきりとする。
無意識に、愛刀を握った。
「超人社会は"個性"の使用を資格制にし、厳しく規制することで一見成り立っているようには見えます。
しかし、一歩間違えれば容易に人を殺せる"いきすぎた個性"を個々が持っていることを忘れないで下さい。」
生徒の皆は、13号先生の真摯な言葉を真正面から受け止める。
相澤先生の体力テストで、自身の力が秘めている可能性を知り。
オールマイト先生の対人戦闘で、それを人に向ける危うさを体験した。
正にその通りだ。
「この授業では…心機一転!
人命の為に"個性"をどう活用するかを学んでいきましょう。
君たちの力は、人を傷つける為にあるのではない。
救ける為にあるのだと心得て帰って下さいな。
以上!ご静聴ありがとうございました。」
とても心根の真っ直ぐな御仁だ。
俺を含め、生徒達が拍手を送る。
一礼した13号先生を横目に相澤先生が施設を案内しようとした、その時。
黒い、靄が現れた。
闇をもっと濃くしたかの様な気配に、俺は警戒し刀に個性を宿す。
「一かたまりになって動くな!」
相澤先生の怒気が伝わる。
呆気に取られる生徒達に、俺は更に警戒心を強めた。
「13号!!生徒を守れ!」
黒い靄は大きくなり、そこから出てくる数々の気配。
見なくとも解る。
この喉が張り付くような邪悪な気配は…
切島殿が悠長に眺めているが、俺は先生の指示を待つ。
ゴーグルを付けた相澤先生は、戦闘態勢になった。
途端に靄が人型に近くなり、声を発する。
「13号に…イレイザーヘッドですか…。
先日頂いた教師側のカリキュラムでは、オールマイトがここにいるはずなのですが…。」
何故此方の手の内が分かる…。
もしかして、先日起きたマスコミの不法侵入も…彼奴等が仕向けたのか?
「どこだよ…せっかくこんなに大衆引きつれてきたのにさ…。
オールマイト…平和の象徴…いないなんて…。
子どもを殺せば、来るのかな?」
膨れ上がった殺気に、生徒達が怯え俺は抜刀の体勢に入る。
体の至る所に『手』を付けたその男は、只々虚空を眺め異様な雰囲気を醸し出していた。
「
ヒーローの学校に入り込んでくるなんてアホすぎるぞ!」
誰かが叫ぶが、ここ迄大胆に乗り込んで来たのだ。
侵入者用の探知機も作動していない。
ともすれば、此方は未熟な生徒達とそれを守らなければならない先生が二名。
校舎から隔離されたこの空間をも利用している。
焦凍言う様に、あの
相澤先生は素早く指示を出し、上鳴殿は自身の個性を使って学校への連絡を試みた。
その間に躙り寄ってくる大勢の
個性の関係上、多対一の正面戦闘は苦手なのかと思われたイレイザーヘッド先生だが、鮮やかな戦闘でそれも杞憂である事を知らしめる。
捕縛布と肉弾戦、そしてその個性を上手く利用した立ち回りに、一瞬でも気を緩めてしまった。
早く避難を!と呼び掛ける声を黒い靄が遮った。
「初めまして。我々は
せんえつながら…この度ヒーローの巣窟雄英高校に入らせて頂いたのは、平和の象徴オールマイトに…
息絶えて頂きたいと思ってのことでして。」
恭しい口調と裏腹に宣ったのは、平和の象徴の殺人宣告。
思わずその突飛な言葉に、俺達は固まった。
靄がゆらりと、人の形から変わる。
何かをしようとしている、その事だけは解った。
それに臆すること無く、切島殿と爆豪殿がその靄に攻撃を仕掛けた。
「その前に俺たちにやられることは考えてなかったか!?」
「危ない危ない………。
そう…生徒といえど優秀な金の卵。」
13号先生がその二人に避難を呼び掛けるが、時既に遅し。
『散らして、嬲り殺す。』
一瞬で広がった靄に、生徒全員が包まれてしまった。