第六話『いいぞガンバレ飯田くん!』
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そのままHRは終わり滞りなく授業を受け、昼の時間となる。
………、また英語で音読を指名されたのは試練だったのだろうか。
マイク先生は心做しか俺にスパルタである。
「今日も"あーる"の発音が出来なかった……。」
取り敢えずそのもやつきは置いておき、荷物を持ってから席を立ち焦凍に声を掛け、食堂へと向かった。
「何持ってんだ?」
「食後の楽しみに取っておけ。」
相変わらずざる蕎麦を食べる焦凍と、今日は鰆の照り焼き定食を食べる俺。
旬の鰆は脂が乗り、白米との組み合わせが正に鬼に金棒である。
その旨味に舌鼓を打っていると、俺の横に置かれた袋を焦凍が見つめてきた。
二人で緑茶をすすり、一息着いてから横の袋を開けると仲良く鎮座する苺大福がいる。
パックの蓋を開け焦凍に見せると、目を丸くした。
「それ、和婆さんのとこか?」
「あぁ。今朝会ってな。…新作だそうだ。焦凍に似ているだろう?」
そう言って自分の分を持ち上げて一口食べる俺を、いつの間にか構えていた携帯で焦凍は写真を撮った。
「……何故撮る。」
「いや、何つーか…衝動的に。」
「消せ。」
「断る。」
ぐ、意外と頑固だ…。
そして俺が弄れない様に画面にロックを掛けている。
諦めた俺に上機嫌な焦凍も、苺大福を手に取り食べている。
「…、何か懐かしいなこの味。」
「そうだろう。」
もぐもぐと咀嚼する俺達は、このまま午後の授業の話をしようかとしたその時。
『セキュリティ3が突破されました。
生徒の皆さんは、すみやかに屋外へ避難して下さい。』
不躾で大きな警報の音と共に、アナウンスが流れる。
思わず手を拭く俺達はぴたりと止まった。
「せきゅりてぃ、さん?」
「侵入者って事か?」
その瞬間どっと流れる人の波に、俺は予想だに出来ず盛大に流される。
焦凍が此方へ手を伸ばしていたが、それは掴む事が叶わかなった。
「くっ、…一体何だというのだ…!!」
人に流されつつも愛刀は教室に置いてきてしまったので、腕で衝撃を防ぐが次から次へと押し寄せる人混みに、俺は押し負けていた。
「西椋!!」
そんな時、不意に右腕を強く引っ張られる。
目の前には切島殿と上鳴殿が、慌てた様子で俺の盾となった。
「大丈夫だったか?」
「位置的にメッチャ悪いとこにいたな西椋!」
「か、忝ない…。正直生きた心地がしなかった。」
二人に礼を言うと、からりと笑い良いって事よーと切島殿が肩を叩いてきた。
上鳴殿はへらりとしつつも、俺を空いたスペースに誘導してくれる。
「しっかし、この人混みは何なんだ…。皆さんストップ!!ゆっくり!!ゆっくり!!」
切島殿がそう言いながら両手を挙げ、人混みに伝えようとするがそれも虚しく、上鳴殿も力が強くなってきた人の波に押され気味だった。
かつん、と俺の頭に落ちてきた物を受け止め、目の前に持ってくると見覚えのある眼鏡。
「これは…飯田殿の眼鏡か?」
そう思った時に、バゴン!と何が叩きつけられる様な音が響き思わずその方向を見てみると、飯田殿が非常口になっていた。
……否、語弊があった。
非常口の上に張り付く飯田殿が、正しく非常口の印みたく走っている様な体勢になりながら声を張り上げた。
「大丈ー夫!!
ただのマスコミです!なにもパニックになることはありません、大丈ー夫!!
ここは雄英!!
最高峰の人間に相応しい行動をとりましょう!!」
飯田殿の言動に皆が一度止まり、そして外を見る。
確かに外には、今朝見た人集りがいた。
その後警察が到着し、生徒達も落ち着いて元の位置に戻り事なきを得た。
切島殿達に礼を言い、髪が乱れてしまった焦凍と合流した後、何とか教室へ向かった。
さて、午後の授業だが相澤先生の言伝に沿って、他の委員決めをする事になる。
緊張し切っている緑谷殿だが、その緑谷殿直々に飯田殿を委員長にと指名された。
嬉しそうに立ち上がる飯田殿を横目に、各々が歓迎の声を上げる。
こうして、飯田殿は名実ともにこの1-Aクラスの委員長となった。
因みに俺は、応急手当をした際のテーピングを評価されて保健委員となった。
「腑抜けた理由で怪我した場合は、それ相応の説教をするからな。」
はーい!何故か元気良く返事をされた。
本当に、これからもこのクラスは騒がしくなりそうだ。
俺は、この時想像だにしていなかった。
雄英高校に、凶悪な存在が一歩ずつ迫っている事に。